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縦型50ccエンジンはなぜパワーを出しやすい? ホンダ エイプを根掘り葉掘り。|シリーズ全モデル掲載


モンキー、ゴリラ、スーパーカブ、ダックス等の4MINIカスタムがブレイクしていた2001年(平成13年)に登場した「エイプ(Ape)」。“Ape”というネーミングは、英語で「類人猿」「猿人」「尾のないサル」を意味する。同じ50ccのモンキーやゴリラとはコンセプトの異なる、2008年発売モデルが最終型となった、懐かしのゼロハンモデル「エイプ」に注目してみた。


REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)


PHOTO●フォトスペースRS

2001年(平成13年) 新しい50ccモデル「エイプ」デビュー!

初期型のエイプ(ファイティングレッド)

初期型のエイプ(クラシカルホワイト)

初期型のエイプ(クラシカルホワイト)

初期型のエイプ(ブラック/ストライプタイプ)

初期型のエイプ(ブラック/ストライプタイプ)

エイプ(Ape)はカスタマイズしやすいよう、シンプルなパーツ群で構成

 エイプとは、英語で「類人猿、猿人、尾のないサル」という意味。人間に最も近い動物という意味であるこのネーミングは、あらゆる人にとって身近な存在であり、気軽に乗れる50ccのバイクであることを、親しみやすい語感で表現している。




 また、類人猿はサルからヒトへの進化過程でもあることから、自分らしいカスタマイズ(進化)が楽しめるバイクという意味合いも含まれているのが特徴。




 エイプはユーザーの個性を演出するための“カスタム素材”として、以下の点が配慮されている。




・各パーツを、取り外しが容易なボルトオンタイプに設計  


・シンプルな設計のバッテリーレス仕様  


・塗装の上から貼られた、タンクロゴマーク(ソリッドタイプに採用)




 エイプはユーザーが自由な想像を膨らませ、自分らしい仕様にカスタマイズできるよう、シンプルなパーツで構成されているのがポイント。




 ガソリンタンクはCD50用、ヘッドライトケースはモンキー用を流用するなど、随所に他車用パーツが用いられているのもエイプの特徴だ。

ガソリンタンクはCD50用と共通。
ヘッドライトケースはモンキー用と共通。


前後ホイールは12インチで、前後タイヤはブロックパターンを採用。サイズは120/80-12 54Jのワイドタイプ。シートはシングルタイプを装備。

 デザインは、シンプルで親しみやすいスタイリングを目指したもの。シリンダーを直立させた、バイクらしい縦型エンジン、バーハンドル、フューエルタンクからシートへと続くスマートなフォルムなど、バランス感を大切に構成した、ベーシックなスタイルが特徴だ。




 ブロックパターンのワイドタイヤと、小さく短い形状の前後フェンダー、足長に設定したサスペンション等が、エイプの存在を最も印象づけ、自由で力強いイメージを表現。




 エイプのスタイリングは、さまざまな乗り手のファッションにフィットし、時代にもマッチしたシンプルなものであるとともに、既成の枠にも捕われない、自由な存在であることを主張している。

写真はキャブレター仕様のエンジン。

 エイプに搭載のエンジンは、オフロードタイプの「XR80R」をベースに、新たに開発した縦型の空冷4ストロークOHC単気筒50cc。縦型50ccエンジンの搭載は、スポーツモデルの「CB50」や「XE50」以来となる。




 環境性も考慮し、国内排出ガス規制にも対応するよう、キャブレターを最適化(※注)。また、低回転領域での実用性を確保しつつ、高回転域までスムーズに使える、扱いやすいエンジン特性としている。




 CB系の縦型エンジンは、カブ系の横型エンジンを搭載した「SS50」の後継機種として、1971年(昭和46年)に登場。ライバルのヤマハ2スト50ccモデル「FS-1」に対抗できる4ストロークエンジンとして、カブ系の横型エンジンよりもパワフルかつ頑丈に作られているのが特徴だ。




 シリンダー&シリンダーヘッドを上方にレイアウトした縦型エンジンは、ピストンやコンロッドの重さを利用することで、クランクシャフトの回転がスムーズになる。加えてオイルの循環性も良く、基本的にパワーを出しやすい=レーシングエンジンとしての資質が高い。




 また、エンジン全体を車体の前方に搭載できるため、フロント荷重を増やせて操作性も向上しやすいのがポイントだ。




※注:排ガス規制をクリアするため、2007年(平成19年)にキャブレターからフューエルインジェクション(電子制御燃料噴射システム/PGM-FI)に変更された。詳しくは下記参照。

写真はフューエルインジェクション(FI)仕様のエンジン(社外マフラー装着車)。

 本格派50ccモデルを目指し、また、ギアチェンジ操作を楽しめるよう、リターン式の5速ミッションを採用。これによってバイク本来の「操る」楽しさを体感でき、出力特性にあわせた各ギアポジションの、伸びのある加速を実現。

※注:5速駆動力と走行抵抗のバランスした点が、時速60km/hであることを示している。

 エイプのエンジン・フレーム・足周りは、CB系の縦型エンジンを搭載したオフロードレース専用の300台限定モデル「XR80R」がベース。




 最高出力は8.8ps。 軽量かつ剛性の高いダイヤモンドフレーム、角型断面のスイングアーム、プロリンク式リアサスペンション、140mmロングストローク型の正立フロントフォーク、6.5L大容量タンクを装備している。




 エイプのエンジンは、XR80R用の「ボア47.5mm×ストローク45.0mm=79.7cc」から、「ボア42mm×ストローク35.6mm=49cc」に変更。ミッション、クラッチ、オイルポンプ、またリンク式リアサスペンションはXR80R用としている。

 エイプは足周りも充実。フロントは正立型テレスコピック式フロントフォーク。リアにはXR80R用のプロリンク式を採用。市街地走行での乗り心地の良さと、路面追従性に優れた柔軟なフットワークを実現している。




 前後ホイールは12インチとし、前後タイヤはモンキーと同じく、ブロックパターンを採用。120/80-12 54Jのワイドサイズタイヤを採用し、安定感のあるハンドリングを獲得。




 12インチの最大のメリットは、ミニバイクレース(SP12クラス)などで使用されるハイグリップタイヤが選べるところ。




 エイプは「Gクラフト」などから発売の社外ステムキットを使えば、ボルトオンで簡単にNSR50/80用のフロント周り一式が移植可能。このカスタム術は、エイプ登場時からの定番となっている。




 なお、2008年(平成20年)に発売されたエイプの最終モデルには、前後にディスクブレーキを採用した「エイプ・50 Type D」も追加された。詳しくは下記参照。

 フレームは、軽量で高剛性を発揮するダイヤモンドタイプを採用。すっきりした車体を表現するとともに、カスタマイズにも最適なシンプルな構造としている。

ヨシムラジャバン製の機械曲げチタンサイクロンマフラーを装着したエイプ(4MINIチャンプ18より)。

 ライディングポジションは、扱いやすいワイドなハンドルと自由度の高いシート形状が、アップライトでリラックスできる乗車姿勢を実現。また、715mmの低シート高が、女性やビギナーにもゆとりと安心感の持てる足着き性を獲得。

写真はベリアルサービス製アルティメットマフラー装着車(4MINIチャンプ18より)。

 シンプルなスタイリングの追求と軽量&コンパクト化のため、エイプはバッテリーレスとし、メンテナンスの手間を省いているのがポイント。

発売時の注目度はピカイチ!

 モンキー、ゴリラ、スーパーカブ、ダックス等の4MINIカスタムがブレイクしていた2000年(平成12年)頃。「ホンダから、新しい縦型エンジン搭載モデルが出るらしい……」と、発売前からエイプの注目度はズバ抜けていた。




 エイプの発売時、ホンダの年間販売計画台数は5000台。しかし発売から約2ヶ月で、エイプは5000台の受注を上回るという、当時のバイク業界ではケタ違いの大反響を巻き起こした。




 エイプ発売後は、ストリートはもちろん、カスタムの素材として。また、レースマシンとして大活躍。モンキーやゴリラと同様、4MINI専門誌を賑わせた。写真はエイプが発売された時の月刊モトチャンプ誌(2001年3月号)。

●エイプ 主要スペック(2001年の初期型) 


型式:BA-AC16/全長:1710mm/全高:970mm/全幅:770mm/乾燥重量:75kg/燃料タンク容量:5.5L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:42mm×35.6mm/圧縮比:9.2/最大出力:3.7ps/7500rpm/最大トルク:0.37kgm/6500rpm/点火方式:CDI/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前後120/80-12/当時価格:20万9000円

◆エイプの歴史をチェック

2002年(平成14年) 合計42タイプのカラーオーダープランを採用

 カラーオーダープランは、下記のパーツを組み合わせる事で、全42タイプ(標準色1タイプ含む)の豊富なカラーバリエーションからの選択が可能。




・燃料タンクを7色設定


・フレームを3色設定


・フェンダー・サイドカバー・ヘッドライト周りのセットを2色設定




 これらのカラーオーダープランは、Hondaのホームページ上でシミュレーションができ、容易にカラーの組み合わせを確認することができた。

燃料タンクをシルバー、フレームをレッド、フェンダー・サイドカバー・ヘッドライト周りをブラックに設定したバージョン。

2003年(平成15年) デラックスタイプを追加

 車体色をブラックとし、ガソリンタンクロゴにはウイングマークを採用。ヘッドライト、ハンドル、トップブリッジにメッキパーツを採用するとともに、クランクケース、シリンダーヘッドカバー、フロントフォークボトムケースにバフがけを実施。ホイールはシャンパンゴールドとし、高級感溢れるデラックスタイプとしている。

エイプ・デラックス(ブラック)

エイプ・デラックス(ブラック)

2004年(平成16年) リバーサイドブルー(新色)を追加

 継続色のクラシカルホワイトに加え、新たにリバーサイドブルーを採用。

エイプ(リバーサイドブルー)

エイプ(リバーサイドブルー)

2005年(平成17年) プラズマイエロー(新色)を追加。デラックスはカラーリングを変更

 鮮やかなプラズマイエローのカラーリングを追加。これまでのクラシカルホワイト、リバーサイドブルーと合わせて3色の設定とした。




「エイプ・デラックス」では、フレームにはファイティングレッド、ホイールにはマグテックゴールドメタリックのカラーリングを採用。また、前後のフェンダーや燃料タンク、サイドカバーにシャスタホワイトとブラックの2色を設定。さらに、燃料タンク側面のロゴを「Hondaウイングマーク」から「HONDA」に変更するとともに、サイドカバーにもストライプを施すことで、スポーティなイメージとしている。

エイプ(プラズマイエロー)

エイプ・デラックス(シャスタホワイト)

エイプ・デラックス(シャスタホワイト)

エイプ・デラックス(ブラック)

2006年(平成18年) カラーリングを変更

 鮮やかなファイティングレッドと精悍なグラファイトブラックのカラーリングを新たに採用し、清涼感漂うクラシカルホワイトと合わせて3色を設定。




 エイプ・デラックスでは、燃料タンクとサイドカバーにツートーンのカラーリングを採用した、シャスタホワイトとプラズマイエローの2色を設定。シャスタホワイトはフレームをファイティングレッド、プラズマイエローではブラックとすることで、よりスポーティなイメージにアレンジ。




 さらに、両カラーともにシートをブラックとグレーのツートーンとし、前・後ホイールをブラックのカラーリングとすることで、足周りをより引き締めたフォルムとしている。

エイプ(ファイティングレッド)

エイプ(グラファイトブラック)

エイプ(グラファイトブラック)

エイプ・デラックス(シャスタホワイト)

エイプ・デラックス(シャスタホワイト)

エイプ・デラックス(プラズマイエロー)

2007年(平成19年) キャブレターからインジェクション(電子制御燃料噴射システム/PGM-FI)に変更

 キャブレターからフューエルインジェクションに変更。環境性能のさらなる向上と、優れた始動性やスムーズな走りに寄与する、電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)が新採用された。




 また、排気ガスを浄化する触媒装置(キャタライザー)をエキゾーストパイプ内(マフラー途中にある膨らみの部分)に採用することで、平成18年国内二輪車排出ガス規制に適合させている。




 燃費は93.0km/L(30km/h定地走行テスト値)を達成し、従来モデルに比べ3.0km/Lの向上を図りながら、力強くスムーズな走りを両立。




 エイプの車体色は3色を設定。燃料タンクにはウイングマークを、サイドカバーには「Ape」のロゴを配している。エイプ・デラックスの車体色は2色を設定。下記の専用仕様を採用し、高級感と個性を一層際立たせている。




・パイピングを施したツートーンシート


・クロムメッキ仕上げのハンドルバーとトップブリッジ


・バフ仕上げの左右クランクケースカバー、エンジンヘッドカバー、フロントフォークのアウターチューブ


・ゴールド塗装の前後ホイール

エイプ(シャイニーオレンジ)

エイプ(シャイニーオレンジ)

エイプ(クラシカルホワイト)

エイプ(グラファイトブラック)

エイプ・デラックス(クラシカルホワイト)

エイプ・デラックス(クラシカルホワイト)

エイプ・デラックス(グラファイトブラック)

2008年(平成20年) 「ドリームCB750FOUR」をイメージした“スペシャルモデル”を限定発売

 専用の車体色を採用した「エイプ・50 スペシャル」を受注期間限定で発売。往年の名車「ドリームCB750FOUR」をイメージさせる、キャンディーブレイズオレンジを採用。クロームメッキヘッドライトカバーやクロームメッキハンドル、専用サイドカバーマークなど装備を充実させた。




 このモデルより、車名が「エイプ」から「エイプ・50」に変更されている。

エイプ・50 スペシャル

エイプ・50 スペシャル

2008年(平成20年) エイプの最終モデル。前後にディスクブレーキを採用した「エイプ・50 Type D」も追加

ディスクキャリパーはNSR50/80と同じく、片押し2ポット型を採用。
前後の12インチホイールは、後期型のNSR50/80やNSF100と共通の6本スポークタイプを装備。


「エイプ・50」に新色を追加するとともに、前後輪にディスクブレーキとアルミ製キャストホイールを採用した「エイプ・50 Type D」をラインナップ。




「エイプ・50」は、鮮やかなリバーサイドブルーを追加し、従来のクラシカルホワイト、グラファイトブラックと合わせ計3色のカラーバリエーション。




 新たに追加された「エイプ・50 Type D」は、「エイプ・50」をベースに、前後輪に制動性・コントロール性に優れた油圧式ディスクブレーキ。また、後期型のNSR50/80やNSF100と共通のアルミ製キャストホイール(6本スポークタイプ)を採用し、スポーティな仕様に仕上げている。




 車体色は、デジタルシルバーメタリックとバイブラントオレンジ、グラファイトブラックとキャンディーフェニックスブルーの2タイプのツートーンを設定。それぞれ斬新なストライプを燃料タンクとサイドカバーに採用し、シートはブラックとグレーのツートーンタイプとしている。また、エンジンには精悍なマットグレー塗装を施した、クランクケースカバーとシリンダーヘッドカバーを採用することで、カスタム度を向上させた。

エイプ・50(リバーサイドブルー)

エイプ・50(リバーサイドブルー)

エイプ・50(グラファイトブラック)

エイプ・50(クラシカルホワイト)

エイプ・50 Type D(デジタルシルバーメタリック/バイブラントオレンジ)

エイプ・50 Type D(デジタルシルバーメタリック/バイブラントオレンジ)

エイプ・50 Type D(グラファイトブラック/キャンディーフェニックスブルー)

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