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新型ルノー・トゥインゴ試乗記「ハッチバックの姿をしたアルピーヌA110?」そして200km走ってわかった実燃費!


マイナーチェンジを受けた新型ルノー・トゥインゴが、ついに日本の道を走り始めた。2016年に日本に導入された三代目トゥインゴは、革新的なリヤエンジン+リヤホイールドライブがもたらす圧倒的な小回り性能と、その愛らしいルックスが人気を呼び、ルノー・ジャポンの屋台骨を支えるベストセラーとなった。このほどお化粧直しを受けた新型は、いったいどんな進化を遂げているのだろう。




REPORT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

ユーザーの視点に立った良心的な改良の数々

 2016年に日本に導入されたルノー・トゥインゴは、FFが常識のA〜Cセグメントのハッチバックのなかにあって、RR(リヤエンジン・リヤホイールドライブ)という革新的なレイアウトを採用してきたことで注目を集めた。




 その尋常ならざる前輪の切れ角がもたらず4.3mという最小回転半径は、軽自動車と比較しても優秀な数値であり、その愛らしいルックスも手伝って、ヨーロッパはもちろん日本でもベストセラーとまった。




 それまで日本市場におけるルノーと言えば、カングーとルノー・スポール系の二本柱に頼っていた状態だった。どちらも本来はニッチな商品のはずで、盤石の体制とは言い難かった。




 しかし2016年以降、そこに「売れて然るべき」三代目トゥインゴが大きな柱として加わり、ルノー・ジャポンの販売戦略は大幅に安定感を増してきたのである。




 それほど、日本市場にとってトゥインゴは重要なモデルなのだ。

ヘッドランプの回りにはコの字のようなLEDデイタイムランプが加わった。
左のリヤフェンダー上には、エアインテークが加わった。


 そんな人気モデルゆえに、マイナーチェンジを受けたと言っても変更点はそれほど多くない。まずは、エクステリアの変更箇所を説明していこう。




 最大の変更点はフロントマスクだろう。ヘッドランプの回りにはコの字のようなLEDデイタイムランニングランプ兼ウインカーが加わった。通常時は白色のデイタイムランニングランプだが、ウインカー作動時にはオレンジ色に変化して点滅する。




 そしてヘッドランプの下、中央寄りにあった補助ランプは姿を消し、ツルンとした顔つきになった。




 こうしたフロントマスクのデザイン変更に合わせてリヤバンパー等も小変更を受けているが、フロントほどの変化はない。

トランクオープナースイッチは、リヤバンパーからリヤワイパーの根元に移された。
ホイールのデザインが変更されている。サイズは変わらず15インチだ。


 もうひとつ目をひくのが、左リヤフェンダーに設けられたエアインテークだ。これはスタンダードの従来型トゥインゴに遅れて2018年に登場した(2017年に先行して限定モデルが発売されている)トゥインゴGTに採用されていたものと同様だ。




 トゥインゴGTはスタンダードの90psに対して109psと強力なエンジンを積んでおり、相応の冷却効果を得るためにエアインテークを追加したとのことだったが、思いのほか効果が高かったのだろう。新型ではスタンダード仕様にもエアインテークが加わり、それもあってか最高出力は従来比で2ps向上して92psとなっている。




 また、従来ではリヤバンパーのナンバープレート設置スペースの凹みの上、ナンバープレートを照らすランプと並んで設置されたリヤゲートのオープナースイッチが、リヤガラス上にあるリヤワイパーの根元に移された。




 手を伸ばしやすくなったのはもちろんだが、バンパーまわりは汚れやすかったという理由もあったのだろう。ユーザーの視点に立った好ましい変更だ。

 インテリアに目を向けると、ダッシュボードに大きなタッチスクリーンが鎮座しているのが目に飛び込んで来る。従来型ではここにオーディオユニットが埋め込まれていて、スマートフォンを取り付けるためのクレードルと呼ばれるパーツが純正オプションで用意されていた。それはそれでユニークなインテリアを演出していたが、やはり最初からモニターがあるに越したことはない。




 AppleCarPlayのようなミラーリング機能を使えばナビゲーションシステムとして使えるし、もちろんオーディオにもなる。そのほか、各種設定なども行える。



 そしてシフトレバーの前方には、大きな収納スペースが設けられた。




 従来型はここが大きな空間になっていて、下の方に2本分のドリンクホルダーがあった。そして、そのドリンクホルダーにはめるような形の大きなボックスが用意されていたのだ。フタはトレー状になっており、なかなかポップなデザインのアイデアグッズだったが、難点もあった。運転していると左足のスネの外側がこのボックスに当たり、グニャッと妙な感触があり、右に左にとワインディングロードでコーナリングを楽しんでいたりすると、ついには助手席側に外れてしまうことがあったのだ。




 新型はシフトレバーのベース部を含むセンターコンソールと一体化されたものとなり、内側にはUSB端子、外部入力端子、そしてECOモードとアイドリングストップのオンオフスイッチが配置されている。グレード感が大幅に向上した印象だ。




 また安全装備として、車線逸脱警報とタイヤ空気圧警報が新たに装備されている。

すべての動きに重量感がない……アルピーヌ製ハッチバック?

 最高出力が2ps向上したほかは、走行性能に関してはとくに変更点のアナウンスはないため、あらためてトゥインゴそのものの走りを再確認する意味で試乗する。




 トゥインゴの美点と言えば、なんと言ってもRRがもたらす快活な走りだ。前輪が駆動を担っていないことによるナチュラルなハンドリングは、まさにスポーツカーのそれである。タイトターンでアクセルを無遠慮に踏みつければ、FFのライバル勢はどうしたってフロントがダダダッと暴れてだらしなく膨らんでいくだけだが、トゥインゴはリヤをグッと沈めてしなやかに向きを変えていく。




 さらにフロントにエンジンがないおかげで鼻先が軽い。もちろんRRゆえ、当然ながらスタビリティ重視……つまり徹底してアンダーステアに躾けられている。だが、フロントが物理的に軽いという事実は、やはり圧倒的なアドバンテージになるということだろう。ステアリングを切ってからノーズが向きを変えるまでのタメのなさは、まるでアルピーヌA110のようだ。

ダッシュボードには7インチのタッチスクリーンが追加された。
センターコンソールには大きな収納スペースが加わっている。


フロントドアポケットの前方はドリンクホルダー形状になっている。
リヤのドアポケットは意外な幅があり、かなりの収納力がありそうだ。


リヤパッセンジャー用の収納スペースも充実している。
トランクのトノカバーには、トレー状の凹みが設けられている。


 乗り心地に関しては、2490mmというクラス随一のロングホイールベースが効いている。前後に短いAセグメントのコンパクトカーはどうしてもピッチング方向の動きが出やすく、ドライバーはともかくパッセンジャーにとって快適さを削ぐ要因になり得るが、前後のオーバーハングが限りなく短く、タイヤが四隅で踏ん張っているようなディメンションを持つトゥインゴは、そんなコンパクトカーならではのネガを最小限に抑えている。




 シートのデキの良さは相変わらずで、メガーヌやルーテシアといった兄貴分たちと比べれれば座面も短く、クッションのボリュームもそれなりだが、同クラスのライバルと比べれば十分に満足できる。



 最後に燃費について報告しよう。今回は高速道路、そして郊外の穏やかな山坂道を主体に試乗を行った。




 まず、都内から中央道を山梨方面に走った高速セクションでは、55kmを走って平均速度は78km/h、燃費は22.7km/Lだった。




 次に山岳セクションを85kmほど走り、ここでは17.6km/Lの燃費をマークした。




 そして帰路の高速セクションでは途中で渋滞にも巻き込まれ、55kmを走って平均速度は62km/h、燃費は19.8km/Lとなった。




 WLTCモード燃費は16.8km/Lだから、カタログ値を大きく上回る優秀な結果である。とくに撮影しながらの走行となった山岳セクションでの落ち込みが少なかったのが印象的だ。




 快活な走りとユニークなデザイン……元来持つ美点はそのままに、かゆいところに手が届く改良を受けた新型トゥインゴは、さらなる商品力を手にしていた。小回りが利いて、ユーティリティも高い。そのうえ、まるでアルピーヌが手がけたかのようなライトウェイトスポーツカー然とした身のこなし……。これが195万円で手に入るのは、月並みな表現ながらお買い得としか言いようがないのである。

●ルノー・トゥインゴEDC


全長×全幅×全高:3645×1650×1545mm ホイールベース:2490mm 車両重量:1020kg エンジン:直列3気筒DOHCターボチャージャー 排気量:897cc 最高出力:92ps/5500rpm 最大トルク:135Nm/2500rpm トランスミッション:6速DCT フロントサスペンション:マクファーソンストラット リヤサスペンション:トレーリングアーム フロントタイヤ:165/65R15 リヤタイヤ:185/60R15 駆動方式:RR 価格:195万円
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