ホンダNSXや日産スカイラインGT-R(R32)など、名車かつ高級スポーツカーでは、自動車メーカーによるレストアがスタートしています。海外のプレミアムブランドでは珍しくないプロジェクトですが、日本では根付いていないのが実状です。しかし、ここにきてマツダも初代ロードスターの、レストア事業を始めました。
REPORT●中村ブンコ(NAKAMURA Bunko)
廃番になった純正パーツが続々再販に!
初代ロードスターは高い人気に支えられ、現存率も高い(12万台中2万台ほど登録あり)車種です。そのためマツダでは、これまで純正パーツの販売を途切れることなく、継続してユーザーをフォローしています。とはいえ、廃番になってしまう部品も増えていきました。その廃番パーツの一部(150部品)が、レストア事業の開始に伴い再販されることになったのです。
一口にレストア事業といっても、その道のりは容易ではありませんでした。構想5年、ロードスターを手がけるショップがどのような作業を行っているか、一般ユーザーが何を望んでいるかといった、市場調査からスタート。さまざまな意見をもらい、コミュニケーションを深めていきました。事業が決定したその後には、多くのユーザーに対する説明会も開催しました。
レストア事業の対象車両が、初代1600ccの型式NA6CEのみといった概要に、落胆の声も聞かれましたが、純正部品の再販を知ると歓喜の声に!
このレストア事業のためにマツダでは、クラシックカーガレージの認証「ドイツのTUV=テュフ」を受けました。これこそ自動車メーカーが手がける、本格クオリティ。
第三者機関に認めてもらうことが、マツダの信頼性を確固たるものにするのです。またサプライヤー各社への働きかけも、重要な要素でした。
発売当時と同じアイテムを、数十年経過した今になって、製造を再開するのは困難なこと。それでも名車を残す意義に賛同してくれたメーカーが、全面的に協力してくれたのです。
ブリヂストンに至っては、当時のパターンを復刻し、乗り味を再現する新たなコンパウンドを用いて、ロードスター専用のタイヤ「SF-325」の販売に乗り出しました。ナルディパーツの再販や、現在の環境基準に沿ったビニール製幌の用意など、非常に中身の濃い事業となっています。
次回では、実際のレストア現場を覗いてみることにしましょう。