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マツダが開発する直列6気筒SKYACTIV-Xエンジンが狙いは逆転の発想。ライバルはBMW、メルセデスの2.0ℓ直4ターボだ


マツダが中期経営方針のなかで計画を表明している直列6気筒エンジンと後輪駆動(FR)。マツダがプレミアムなブランドになるための重要なステップとなる直6+FRについて、どんな直6になるのか。Motor-Fanではさまざまな推測をしてきたが、エンジンの専門家から示唆に富む新しい視点での推理をしていただいた。発想の転換とも言える「新しいマツダ直6像」について、考えてみる。

マツダの直6SKYACTIV-Xエンジンの想像図。(単に直4SKYACTIV-Xを延長しただけなので、ピストン位置は違っている)

 マツダのSKYACTIV-Xは、エンジン技術者の夢のひとつであるHCCI(予混合圧縮着火)をSPCCIという新しい燃焼技術でブレークスルーしたエンジンだ。SPCCIとはSPark Controlled Compression Ignitionの略で、火花点火制御圧縮着火である。

 革新的エンジンゆえの産みの苦しみをマツダ開発陣はいま味わっているのだろう。当初2019年10月発売だったSKYACTIV-Xエンジン搭載車の発売は2ヶ月先延ばしになっている。




 さて、話題は2.0ℓ直4SKYACTIV-Xではなく、その先に登場が予告されている直6SKYACTIV-Xだ。Motor-Fanでは直6SKYACTIV-Xについてさまざまな可能性を考えてみた。

 このなかでも


 超リーンバーン、超高圧縮比エンジンであるSKYACTV-Xエンジンの直6版と考えると、直4SKYACTIV-Xの出力90ps/ℓ、トルク112Nm/ℓで直6SKYACTIV-Xは270ps/336Nmというスペックになってしまう。これでは、直6の老舗であるBMWやメルセデス・ベンツの3.0ℓ直6ターボと比べて、だいぶ見劣りがしてしまうのではないか、と懸念した。




 2.0ℓ直4SKYACTIV-Xのスペックはこうだ。




SKYACTIV-X(欧州仕様)


シリンダー配列:直列4気筒 排気量:1998cc


ボア×ストローク:83.5 mm×91.2mm


圧縮比:16.3


最高出力:180ps(132kW)/6000rpm


最大トルク:224Nm/3000rpm


給気方式:スーパーチャージャー


燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI、トップマウント)


カム配置:DOHC 使用燃料:RON95




 この4気筒を単純に6気筒にすると前述したように




排気量:2997cc


最高出力:270ps


最大トルク:336Nm




 となるわけだ。




 ライバルのBMW B58型3.0ℓ直6DOHCターボエンジンはいくつかバリエーションがある。


B58B30M0 326ps/450Nm


B58B30O1 387ps/500Nm


S58B30T0 510ps/600Nm


 326ps/450Nmからもっとも高スペックなS58型では510ps/600Nmになる。




 現在もっとも設計が新しいメルセデス・ベンツのM256型3.0ℓ直6DOHCターボは


M256E30 DEH LA GR 367ps/500Nm


M256E30DEH LAG 435ps/520Nm


 というスペックがある。




 400ps/500Nmという先達に直6SKYACTIV-Xはどう立ち向かうのか? 商品力でまったく太刀打ちできないのではないか? と考えたのだ。




 そこでまったく新しい視点から、「そうじゃない。マツダの狙いはそこじゃないんじゃ」と話してくれたのが、畑村耕一博士である。


 ご存知のとおり、畑村博士は1993年発売されたユーノス800に搭載された、量産車世界初のミラーサイクルエンジン、KJ-ZEM型V6エンジンの開発者だ。




 畑村博士はこう述べた。


「直6SKYACTIV-Xの競合車は、メルセデス、BMWの直6ではない」




 という。では、なにか?

 畑村博士は、こう続けた。




「メルセデス、BMWは、もともと3.0ℓ直6自然給気に代えて、2.0ℓ直4ターボのダウンサイジングを導入したわけです。ダウンサイジングしたことで、NEDC燃費が良くなることと低速からのトルク増大で圧倒的によく走るというのが狙いでした。直6NAから直4ターボでコストは若干高くなっていたはずです」

かつての自然給気のBMW 3.0ℓ直列6気筒エンジン。パワースペックはN52型3.0ℓ直6DOHC 最高出力218〜272ps/最大トルク270〜315Nm

 たしかに、BMWでいえばかつての3.0ℓ直6NAエンジンN52型は


N52型3.0ℓ直6DOHC 最高出力218〜272ps/最大トルク270〜315Nm


 だった。


 その代替だった2.0ℓ直4ターボエンジンのN20型、B48 型は


N20型2.0ℓ直4ターボ 最高出力184~245ps/最大トルク270~350Nm


B48型2.0ℓ直4ターボ 最高出力184~258ps/最大トルク290~400Nm




 となっている。つまり、現行のメルセデスやBMWの3.0ℓ直6ターボは、4.0ℓV8自然給気の代替エンジンなわけだ。




 畑村博士は続ける。




「マツダの場合はその逆で、4気筒ダウンサイジングターボの市場に殴り込む6気筒です。スーパーチャージャーが付くので走りに関しては対抗できる。好みによって昔ながらのトルク特性が好きな人も大勢いる。ターボラグのない走りは強い商品力になる」




 つまり、直6SKYACTIV-Xのライバルは、BMW、メルセデス・ベンツの2.0ℓ直4ターボなのだと博士は言う。




マツダSKYACTIV-X 3.0ℓ直6 270ps/336Nm


BMW B48 2.0ℓ直4ターボ 258ps/400Nm(BMW330i)


メルセデス・ベンツ2.0ℓ直4ターボ 258ps/370Nm(E300)




 とほぼ拮抗する。しかも、直6SKYACTIV-Xは、振動特性が直4より優れる。機械式スーパーチャージャーでターボラグはない。フィーリングではライバルに勝る。




 畑村博士は


「SPCCIの高コストはいずれ許容レベル(通常DI+α)に低下する。その分はCAFE対応コストとして処理する。競合他社は電動化とディーゼルでCAFE対応するので、コスト的にも勝目はある。マツダは、世界シェア2%の企業なので、走りの向上に対してスーパーチャージャー分の価格上昇を認める人も充分な数存在する」




と言う。




 同じ直6同士で比較して、ターボ過給のメルセデス、BMWに勝てないと考えるのではなく、マツダの直6は2.0ℓ直4ターボの対抗なのだ。博士が言う




「4気筒ダウンサイジングターボの市場に殴り込む6気筒」




 逆の発想なのだ。そう考えれば合点が行く。

現行マツダ6。フロントアクスルからフロントドアのオープニングラインまでの長さを「プレミアムレングス」というが、FFの現行マツダ6の場合はこのように短い。

BMW 3シリーズの場合はこうだ。

現行マツダ6の元ネタとも言える、コンセプトカー「SHINARI」(2011)だとこう。やはりバランス的にきれいだ。

 さて、畑村博士の結論だ。




「SKYACTIV-Xは当面は目玉エンジンであると考えると、SKYACTIV-Gの縦置き6気筒化で、クルマのプロポーションと重量配分は画期的に良くなる、FR化による操舵感はFFに圧倒的に勝る。3.0ℓ直6SKYACTIV-XをNA6気筒と考えると、ライバルの2.0ℓ直4ターボにトルクでは勝てないが、マツダのユーザー層ならNAでも満足してもらえる。WLTP燃費になれば直6SKYACTIV-Xは2.0ℓ過給ダウンサイジングターボに勝てる。そして、競合車の4気筒ターボより直6SKYACTIV-Xは、コストが安い」




 畑村博士の結論はこうだ!




⇒マツダ車のCX-5以上はすべて6気筒を標準エンジンにしてしまおう、というのが結論!




 CX-5、CX-8、CX-9のSUV、マツダ6、そして今後登場する上級クーペ、スポーツカーなど、マツダのLarge アーキテクチャーを使う後輪駆動車のスタンダードなエンジンが3.0ℓ直6SKYACTIV-Xになるという見立てだ。いかがだろうか?

現行CX-5のプレミアムレングスはやはり短い。

FRレイアウトのX3だとこうなる。次期CX-5はFR化でバランスがこの方向に変わるのだろうか。

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