プジョーのエンブレムには横向きのライオンのイメージが使われています。でもなぜ、ライオンなのでしょうか? 世界最古の自動車メーカー、プジョーとそのエンブレムのストーリーを紐解いてみましょう。
フランスを代表するブランドであるプジョー。このプジョーのエンブレムにライオンが使われているのはご存知ですね。ではなぜ、プジョーはエンブレムにライオンを使っているのでしょうか。
プジョーの歴史は非常に古く、1810年ごろから製鉄工場を営み始め、工具やスプリング、コーヒーミルなどの製造を始めました。この頃からすでにプジョーの製品にはライオンマークが刻印されるようになり、1858年には商標登録を行なっています。
どうしてライオンだったのかというと、当時の主力製品であったノコギリの刃とライオンが連想づけられたからのようです。また、最高の品質を表す象徴としても、百獣の王であるライオンがふさわしいと判断したのでしょう。当時のノコギリの広告では
「ノコギリの刃の堅牢さは、ライオンの歯のごとく」
「ノコギリの刃のしなやかさは、ライオンの強靭な肉体のごとく」
「ノコギリの刃の切れ味の良さは、獲物の飛びかかるライオンのごとく」
と謳っています。プジョーのライオンマークは、そもそもノコギリの品質の高さをイメージしたものだったのですね。
その後プジョーは1885年に自転車の製造を始め(つまりプジョーの自転車の歴史はクルマよりも古い)、次は自動車製造に進出、1889年には第一号車を完成させますが、これはまだ蒸気機関を使用したものでした。しかし1890年にはドイツ・ダイムラーのガソリンエンジン(パナール・ルバッソール社がダイムラーのパテントにより製造したもの)を搭載したガソリンエンジン車を製造し、自動車メーカーとしてのプジョーが始まったのです。そしてライオンのエンブレムはプジョー社の自転車にもクルマにも当初から装着されていたのでした。
今のエンブレムは後足で立ち上がった横向きのライオンが使われていますが、この絵柄が初めて用いられたのは1948年です。1960年代にはライオンの頭部のみがモチーフとなったこともありましたが、1975年に再び後足で立ち上がった姿がエンブレムに採用され、以後デザインは変わりながらも現在まで続いています。
ちなみに現在のエンブレムは2010年から用いられています。従来よりも直線的でシャープなデザインとなり、それまであったライオンの舌がなくなっているのが特徴です。
プジョーのライオンマークは、その歴史の中で何度もデザインを変えています。約170年の歴史を持つ世界最古の自動車エンブレムは、世界で最もデザインが変わったエンブレムかもしれません。