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誰もが魅了されるジャガーXFスポーツブレイク


ジャガーのミドルレンジを担うXFに実用性に優れる「スポーツブレイク」が追加された。最大1700ℓの容量を誇るラゲッジルームと、XFならではのスポーティな走りを実現したスタイリッシュなワゴンである。




REPORT◎佐野弘宗(SANO Hiromune)


PHOTO◎神村 聖(KAMIMURA Satoshi)

 ジャガーのワゴンというと、2000年代前半のXタイプ・エステートを思い出す向きも多いだろう。新しいXFスポーツブレイクは、たしかに日本で販売されるジャガーとしてはXタイプ以来にして、史上2例目のワゴンとなる。ただ、事情通のエンスージアストなら、欧州では先代XFにもスポーツブレイクが存在したことをご存じだろう。つまり、新型スポーツブレイクは厳密には3例目のジャガーワゴンなのである。


 


 それにしても、ジャガーのような英国の高級スポーツワゴンなら、日本人としては「シューティングブレイク」と名乗ってほしい気もする。ただ、知ってのとおり、その名称はメルセデスが先に使っている。先代XFスポーツブレイクの正式発表が2012年春のジュネーブ・ショーだったのに対して、メルセデスがCLSシューティングブレークの予告コンセプトカーを公開したのは2010年の北京モーターショーだった。まさにタッチの差!?

ジャガーが自社開発した2.0L直4気ターボ/2.0ℓ直4気ディーゼルターボの2種類のINGINIUMエンジンを搭載。まずはガソリンモデルからの日本導入となる。

 閑話休題。というわけで、2018年モデルから正式追加となったXFスポーツブレイクだが、今回はXF全体でも大きなニュースがある。それは4気筒ガソリンが新世代のインジニウムに切り替えられたことだ。インジニウムはジャガー・ランドローバーの今後10年を支える自社開発エンジンファミリーで、総アルミ2.0ℓ直4という基本設計を、ガソリンとディーゼルで共用する点がいかにも最新鋭だ。


 


 ガソリンより先行したインジニウムディーゼルは既にお馴染み。ジャガーとランドローバーが積む4気筒ディーゼルは日本では最初からインジニウムだった。一方のインジニウムガソリンが英本国で生産開始されたのは、昨年4月からである。日本ではこの2018年モデルから、ジャガーとランドローバーの各車に一気に搭載されることになった。ちなみに、従来の4気筒ガソリンはフォード由来のあれである。

 XFスポーツブレイクは個人的に素晴らしくカッコいいと思う。リヤオーバーハングはセダンと同寸で、後方に向けてルーフラインを下降させていくプロポーションは、今っぽいスポーツワゴン流儀。その一方で、リヤウインドウを寝かせすぎず、リヤピラーも細くして、リヤクウォーターウインドウが長い。だからこそ、XFスポーツブレイクは伸びやかでワゴンらしく見える。ワゴンにとってリヤクォーターウインドウの長さこそがデザインのキモであり、XFスポーツブレイクはそのデザイン意図が明確である。


 


 日本仕様でのスポーツブレイクはひとまず2機種で、ディーゼルとガソリンを1機種ずつ用意する。ディーゼルが180ps、ガソリンが250psで、ともに2WDである。


 ただ、現時点ではディーゼルが上陸待ち状態で、今回の試乗車もガソリンだった。日本仕様のスポーツブレイクは豪華指向の「プレステージ」だが、試乗個体はそこに20インチタイヤや可変ダンパー、ドライブモード切り替えなどのスポーツ指向のオプションがテンコ盛りされていたことまずはご報告しておく。

スマートフォンのような直感的な操作が可能な10.2インチ静電式タッチスクリーンのインフォテインメントシステム「Touch Pro」を採用。
「プレステージ」は肌触りの良いラグレインレザーシートを標準装備する。


 今どきワゴンだからといってセダンよりあからさまに乗り味が落ちるケースはほとんどない。だが、それを差し引いても、XFのスポーツブレイクはデキがいい。あえていえば後方から聞こえてくる騒音がセダンより少し目立つ気はするものの、単独で乗っているかぎり、XFスポーツブレイクは走りにまつわるワゴン特有のネガが非常に指摘しづらい。


 


 それはジャガーのボディ剛性確保が巧妙であるのと同時に、XFではワゴン化にともなう重量増がとても少ないことからでもあろう。日本仕様の諸元表によると、スポーツブレイクとセダンと重量差はわずか30kg。同クラス他車では平均して60〜90kgほどの差があることを考えると、これは異例といっていい。

積載物の重量に合わせてリヤの車高を調整するセルフレベリング機能付リヤエアサスペンションを備える。

 というわけで、このスポーツブレイクでも、もともとステアリングが俊敏なXFの美点が軽量な4気筒エンジンと可変ダンパーでさらに拍車がかかっている。特にドライブモードを「ダイナミック」にセットして、さらに横滑り防止装置のDSCを介入制制する「トラック」に合わせると、XFスポーツブレイクはまさにFRスポーツカーばりの回頭性と一体感を味わわせてくれる。


 


 新しいインジニウムガソリンはレスポンスも軽快で、ダイナミックモードではさらに鋭く、変速スピードも高まる。こうなると、わずかなスロットル操作でも荷重移動にカツが入って、ハンドリングも飛躍的に活発になって……と、そういうXF本来の味わいを、スポーツブレイクはなんらスポイルしていないのだ。そう考えると、その「スポーツ(カー)なブレイク」というネーミングはなんとも絶妙でもある。




※本記事は『GENROQ』2018年7月号より転載したものです。

SPECIFICATIONS


ジャガーXFスポーツブレイク・プレステージ


■ボディサイズ:全長4965×全幅1880×全高1495㎜ ホイールベース:2960㎜ トレッド:F1605 R1607mm ■車両重量:1810㎏ ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ ボア×ストローク:83×92.2mm 総排気量:1995cc 最高出力:184kW(250ps)/5500rpm 最大トルク:365Nm(37.2㎏m)/1300〜1500rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:FダブルウイッシュボーンRインテグラルリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F&R245/45R18(8J) ■環境性能(JC08モード) 燃料消費率:12.7km/L 車両本体価格:756万円 

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