ジャガーのミドルレンジを担うXFに実用性に優れる「スポーツブレイク」が追加された。最大1700ℓの容量を誇るラゲッジルームと、XFならではのスポーティな走りを実現したスタイリッシュなワゴンである。
REPORT◎佐野弘宗(SANO Hiromune)
PHOTO◎神村 聖(KAMIMURA Satoshi)
ジャガーのワゴンというと、2000年代前半のXタイプ・エステートを思い出す向きも多いだろう。新しいXFスポーツブレイクは、たしかに日本で販売されるジャガーとしてはXタイプ以来にして、史上2例目のワゴンとなる。ただ、事情通のエンスージアストなら、欧州では先代XFにもスポーツブレイクが存在したことをご存じだろう。つまり、新型スポーツブレイクは厳密には3例目のジャガーワゴンなのである。
それにしても、ジャガーのような英国の高級スポーツワゴンなら、日本人としては「シューティングブレイク」と名乗ってほしい気もする。ただ、知ってのとおり、その名称はメルセデスが先に使っている。先代XFスポーツブレイクの正式発表が2012年春のジュネーブ・ショーだったのに対して、メルセデスがCLSシューティングブレークの予告コンセプトカーを公開したのは2010年の北京モーターショーだった。まさにタッチの差!?
XFスポーツブレイクは個人的に素晴らしくカッコいいと思う。リヤオーバーハングはセダンと同寸で、後方に向けてルーフラインを下降させていくプロポーションは、今っぽいスポーツワゴン流儀。その一方で、リヤウインドウを寝かせすぎず、リヤピラーも細くして、リヤクウォーターウインドウが長い。だからこそ、XFスポーツブレイクは伸びやかでワゴンらしく見える。ワゴンにとってリヤクォーターウインドウの長さこそがデザインのキモであり、XFスポーツブレイクはそのデザイン意図が明確である。
日本仕様でのスポーツブレイクはひとまず2機種で、ディーゼルとガソリンを1機種ずつ用意する。ディーゼルが180ps、ガソリンが250psで、ともに2WDである。
ただ、現時点ではディーゼルが上陸待ち状態で、今回の試乗車もガソリンだった。日本仕様のスポーツブレイクは豪華指向の「プレステージ」だが、試乗個体はそこに20インチタイヤや可変ダンパー、ドライブモード切り替えなどのスポーツ指向のオプションがテンコ盛りされていたことまずはご報告しておく。
今どきワゴンだからといってセダンよりあからさまに乗り味が落ちるケースはほとんどない。だが、それを差し引いても、XFのスポーツブレイクはデキがいい。あえていえば後方から聞こえてくる騒音がセダンより少し目立つ気はするものの、単独で乗っているかぎり、XFスポーツブレイクは走りにまつわるワゴン特有のネガが非常に指摘しづらい。
それはジャガーのボディ剛性確保が巧妙であるのと同時に、XFではワゴン化にともなう重量増がとても少ないことからでもあろう。日本仕様の諸元表によると、スポーツブレイクとセダンと重量差はわずか30kg。同クラス他車では平均して60〜90kgほどの差があることを考えると、これは異例といっていい。
SPECIFICATIONS
ジャガーXFスポーツブレイク・プレステージ
■ボディサイズ:全長4965×全幅1880×全高1495㎜ ホイールベース:2960㎜ トレッド:F1605 R1607mm ■車両重量:1810㎏ ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ ボア×ストローク:83×92.2mm 総排気量:1995cc 最高出力:184kW(250ps)/5500rpm 最大トルク:365Nm(37.2㎏m)/1300〜1500rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:FダブルウイッシュボーンRインテグラルリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F&R245/45R18(8J) ■環境性能(JC08モード) 燃料消費率:12.7km/L 車両本体価格:756万円