6月18日、新型ジムニーのティザーページがスズキサイト内で始まったと同時に、ディーラーでの予約受付も始まった。
「つまらないクルマ」が全盛の昨今、発表前からこれほど話題になるクルマは稀だ。
本ページはといえば、もはや旧型になったシエラが主題なのに、まだしばらく続く気配。
仮ながら登場した真打ち! そのせいでこちらのアクセス数も頭打ち?
・・・などということを恐れもせず、ひきつづき、何のためらいもなくJB43W型シエラの話は続く。
TEXT●山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)
PHOTO●中野幸次(NAKANO Koji):ジムニーJ23W ランドベンチャー(2015年撮影)
山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi):ジムニーシエラJB43W
「試乗記を書け」という依頼だったのに、そこに行きつく前に新型ジムニーの姿が露わになってしまった。
新型ジムニーについては、本モーターファンJPの中で遠藤正賢さんが書いている。
「7月発表! 新型四代目スズキ・ジムニーは伝統のメカニズムを継承しながら内外装は二代目に先祖返り」
遠藤さんの記事タイトルどおり、新型は2代目に回帰したデザインだが、部分的には初代のモチーフもちらほら散見されるようにも見える。
詳細はあらためてそちらをご覧いただくことにして・・・
私たちモーターファン・アーカイブ編集部が、3年前の2015年7月に「歴代ジムニーすべて」を刊行したのは「第1回」で述べたとおり。
ここから先は、「歴代ジムニー」の取材中に乗った軽ジムニーに触れながら、納車シエラ乗り始め段階に気づいた点だけ、項目のつまみ上げで感想を述べていきたい。
・・・当初の依頼を仮の形ながら、ようやく第4回で実現。
でもいいのか? 末期型の走りの記事なんて。
新型登場10日前だぞ・・・
■侮れない、ボディ下樹脂パーツの効果
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だが、真横から眺めるとしょせんは軽ボディだ。
最近、白ナンバープレートを選ぶ軽自動車ユーザーがとみに増えたからなおのこと、高速ETCゲートが何らかの不具合で軽ジムニーと見間違えたら、通行料が軽自動車料金になるのではという期待が湧いてくる(おい)。
基本が3480mm長のボディのうち、エンジンを縦に収めるフードを長めにとったから、前席をタイトではない程度に確保すれば、どうしたって後席と荷室にしわ寄せが行く・・・やはり前席2名乗りが主体のクルマだ。
■低床設計では得がたい、ラダーフレームの日常メリット
オフロード4駆だもの、床が高い=シート座面が高いのは当然だが、結果的に得られる見晴らしの良さが心地いい。
耐久性を任されたラダーフレーム付きならではの副次的作用だ。
セレナやノアのようなクルマに座ったとき、着座位置は一般のクルマより高いのに、私にはどうしても高い位置にいる感覚が希薄に思えて仕方がなかった。
フルキャブのラルゴやタウンエースのほうが、座面高さの差以上に高さを実感したもの。
その感覚は、先日「歴代ハイエース」用の撮影時に乗った全世代のハイエースに乗ったときでも変わりはなかった。
小さい頃、大人の人に肩ぐるまをされたときの、あの新鮮さが蘇る。
同じコンセプトをモノコックボディで表現したパジェロミニも、ジムニーよりフロアが低かった。
床が高いことの実用性は他にもあって、ここ数年、自然災害が頻発しているが、がれきや大雪に覆われた道での走破性を左右するのは、最低地上高も去ることながら、地面からフロア裏面全体までの間隔であることも覚えておきたい。
乗降性とのトレードオフにはなるが、それに目をつぶることができるなら、フロアごと高いことは充分価値があるのだ。
■ちょい慣れがいる、ブレーキ操作
3年前の軽ジムニーでいちばん気になったのは、ブレーキペダルの感触だった。
自動車を運転される方は、ブレーキを初めはペダルの踏み込み量(ペダルストローク)で、あるところで感触が硬くなってから先は、踏力の強弱で効かせていることは、無意識のうちに把握していることと思う。
ただ、軽ジムニーにしても今回のシエラにしても、その「あるところ」のポイントが、一般のクルマよりも奥にあるのだ。
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古い時代の、メーカー違いのクルマを引き合いに出して恐縮だが、この特性はレックスとよく似ている。
シエラは当初「ジムニーワイド」の名で1998年1月発売。
軽ジムニーは1998年10月発売で、いまに続く軽自動車規格車が一斉発売されたのはこのときだ。
シリーズそもそもの車両企画が、1300ccエンジン搭載、トレッド拡幅も視野に入れた「軽自動車ありき」であったろうことは想像に難くない。
それゆえにブレーキ特性も「軽自動車ありき」となり、先行発売を予定していたシエラ(ワイド)にまで波及してしまったというのが本当のところではないだろうか。
時系列的にはシエラのほうが先発なのに、後発する軽ジムニー用ブレーキの設計が、逆に侵食してきた形だ。
その特性をつかみさえすれば、いままでのクルマ同様に運転することができるが、慣れとは恐ろしいもので、その後久しぶりにティーダに乗り、シエラに慣れた足でブレーキ操作をしたら、つんのめるような挙動を示した。
「よくいままで10年20万kmのあいだ、あたり前のブレーキ操作ができていたものだ」
と自分で感心したほどで、これがついこの間まで乗っていた自分のクルマとは信じられなかった。
20年の間に、軽自動車のブレーキフィーリングも普通車並みになっているはずで、ぜひとも新型ジムニーのブレーキは、20年の後れ(おくれ)を一挙挽回してほしいところだ。
■街乗り・砂利道での乗り味は
軽ジムニーとシエラの違いで、心配と興味が混在していたのは乗り味だ。
軽ジムニーではヒビが入った路面の坂を下る際、硬めのサスペンションにも起因する、横に跳ねるような挙動が認められた。
それを念頭に、シエラを似たシチュエーションに持っていくと、トレッドが90mm広いだけの安定感を示してくれた。
「シエラは普通車。安定性にものをいう、プラス90mmトレッドの余裕」である。
シエラも跳ねるような感覚がないといえば嘘になるが、低燃費を意識しすぎるあまり、タイヤ圧を過剰なまでに高めた最新コンパクト勢の乗り味を思うと、むしろシエラは乗り味が優れているといってよい。
70%プロフィールタイヤに負うところもあるのだろうが、リジッドアクスルのサスペンションでここまでできるである。
一体、コンパクト級のクルマたちは何をやっとるか?
といいたくなってくる。
ティーダは納車時から乗り味が硬かった。
検討時には日産レンタカーから24時間借り、ずいぶん走り込んで検証したつもりなのだが、レンタカーは前期型だったから、後期型は手を入れ過ぎたのかもしれない。
私のティーダはタイヤが指定圧なのに、荒れたアスファルト路面を通過するたび、その振動がほんと大げさでなく、
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ・・・・・」
と室内全体に響き渡ったし、カタログでは「微小突起による微振動を吸収するリップルコントロール付き・・・」などと謳っていたが、そんなものがなかった、その前のブルーバードのほうがよほど乗り心地は良かった。
乗り味を炊いたご飯で例えると、登場初期から「乗り味が硬い」が定評だった初代フィットは、水を少なめに炊いたこわい(ごはんでは「硬い」の意味。おこわの「こわ」ね。「恐ろしい」ほうのこわいではありません。)ご飯だ。
パルサーもこれに近い。
いっぽう、ブルーバードはやや水を多めにした、ちょっとやわらかめのごはん。
ティーダはやわらかい、硬いという以前に、ふだん料理をしない人が初めて炊いた、芯が残ったご飯という印象だった。
話を戻してわれらがシエラ。
通常の幹線路を流れに乗って走る限りは、音も乗り味も普通のクルマと変わりはない。
いわゆるHT(ハイウェイテレイン)タイヤのおかげか、よく見れば普通タイヤに近いパターンのせいでロードノイズは標準的。
それでいて、雨天下でタイヤが水を叩く音は普通車並みなのが不思議だ。
たまに乗せてもらう妹の現行キューブなんて、雨の日はリヤタイヤ付近から、水漏れを疑うほどのバシャバシャ音がダイレクトに入ってくる。
少し場所を変え、こんどは砂地に、あえて2WDでゆっくり入ってみたら、割と簡単にスタックした。
ここでも人が歩く程度の速度だが、はずみがあるうちはジリジリとがんばって進むが、アクセルをわざと放し気味にすると砂の抵抗ですぐに失速し、グリップ不足になって止まってしまう。
アクセルを踏んだところで後輪は砂を掻いて空回り、ここでもさきのカツカツ音が顔を出した。
■M13Aエンジン
歴代ハイエースのすべて(2018年3月26日発売)
全5世代ハイエースが集結!
掲載した5代目改良版最新ハイエースは、トヨタにも、トヨタレンタカーにも、ニッポンレンタカーにも、オリックスレンタカーにも、そして最後の頼み、トヨタディーラーにも借りる手配がつかず、締め切り直前にあきらめて「カメラなしの旧型でもいいヤ」とトヨタレンタカーを手配したら、店舗に表れたハイエースはカメラ付きだった! 問い合わせたとき、「まだない」の、最初のトヨタレンタカーの回答は何だったんだ? という、PC画面ならここまで4行半費やすほどのオチがつまった1冊!
初代~4代目「使い勝手」撮影時、4台すべてエンジン可動車だったのに、そのうち初代だけプラグかぶりで始動不可になり、撮影中のクルマ移動は手押しになったというのも思い出だ。
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