人の手で掘り進めたものなのに、どこか自然の力で生み出されたようにも見える。
露わな岩肌には地層が見え隠れし、ところどころ光が差していたり、苔生していたり。
人工と言っても、天然と言っても、おそらくどちらでも間違いではない。
素堀りトンネルを探し求め、スズキ・ハスラーで房総半島を駆け巡る。
TEXT:小泉建治(KOIZUMI Kenji) PHOTO:平野 陽(HIRANO Akio)
なぜこれほど昔ながらの姿で残っているのか?
雰囲気満点の月崎トンネル
将棋の駒トンネルは突然に
月崎駅方面にいったん戻り、県道172号線を東に左折し、小湊鐵道の踏切を越えてすぐに左折すると、すぐに、本当にすぐに将棋の駒のような形をしたトンネルが現れる。県道172号線からも見えるはずだが、パッと見た限りではクルマで通っていい道とは思えないだろう。それくらい異物感がある。
では、とにかく進んでみよう。幅は軽自動車一台でピッタリちょうどいいという感じで、Bセグメントあたりが限界かもしれない。いずれにせよクルマ同士のすれ違いはまず不可能だ。天井も低いから、軽自動車でもハイト系ワゴンだとけっこうな圧迫感を覚えるだろう。酷道険道で無敵を誇るジムニーでも車高を上げた本気仕様だったりすると天井につっかえてしまうかも知れない。
それにしても、なぜにこの形なのか? 横長よりも縦長のほうが強度面で有利なのはわかるが、楕円ではなく将棋の駒のような五角形にしたのはどうして? しかもこのトンネル、南側は五角形なのだけれど、3/5くらい進むとフツーに楕円になるのだ。
途中で面倒くさくなって楕円に変更したのか。それともどこかのタイミングで北側が崩れ、修復された際に楕円にされたのか。軽く調べてみたけれど、結局わからずじまい。思うに、将棋の駒の形というのはなんとなく美しいし、この五角形の最大の理由は、意外にもデザイン性だったりするのかもしれない。
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圧巻! 微妙に歪んだドームトンネル
世にも奇妙な二階建てトンネル
ドームトンネルを抜けたところでUターンし、もう一度ドームトンネルと将棋トンネルを通って県道172号線に戻る。県道32号線を小湊鐵道に沿って南下し、養老渓谷を目指す。今回のトンネル巡りのフィナーレを飾るのは、世にも奇妙な二階建てトンネルである。
県道81号線との交差点を右折し、養老渓谷駅を過ぎ、奥養老バンガロー入り口という小さな木製の看板を右に曲がれば、二階建てトンネルである。
何が二階建てって、とりあえず上の写真を見ていただきたい。妙に縦に長く、途中から上の方だけ外に通じてしまっていて、なおかつそこから先は下に常識的な高さの素堀りではないトンネルが改めて設けられているのだ。何がどうしてこうなったのか?
角度のズレに途中で気づいた?
素堀りトンネルはまるで洞窟───天然と人工の中間的存在だ
【スズキ・ハスラー Xターボ 4WD】
▶全長×全幅×全高:3395×1475×1665mm
▶ホイールベース:2425mm 車両重量:870kg
▶エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ ▶総排気量:658cc
▶ボア×ストローク:64.0×68.2mm ▶最高出力:47kW(64ps)/6000rpm
▶最大トルク:95Nm/3000rpm ▶トランスミッション:CVT
▶サスペンション形式:ⒻマクファーソンストラットⓇアイソレーテッド・トレーリング・リンク
▶ブレーキ:ⒻベンチレーテッドディスクⓇディスク
▶タイヤサイズ:165/60R15 ▶車両価格:171万7200円
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