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【絶賛発売中!】2018年版『間違いだらけのクルマ選び』


新型リーフ、テスラ・モデル3、VW e-ゴルフなどEVが続々登場、欧州ではエンジン車規制まで話が進み、国産メーカーは遅れが指摘されるが……、それは本当なのか? 一方で、長足の進歩を遂げた自動運転技術を搭載の、レクサスLSやそのライバルが一斉登場。EVも自動運転も未来の話ではなく、いよいよ私たちの今日のクルマ選びに関わる問題となり始めた――。特集記事や100車種近くの車種別批評で、どんどん難しくなるクルマ選びと、クルマ界の将来展望がまるわかり。今年もマストな一冊が刊行!

島下泰久(しました・やすひさ) 1972年神奈川県生まれ。立教大学法学部卒。国際派モータージャーナリストとして自動車雑誌への寄稿、ファッション誌での連載、webやラジオ、テレビ番組への出演など様々な舞台で活動。2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。一時休刊していた年度版『間違いだらけのクルマ選び』を、2011年の復活から徳大寺有恒氏とともに、『2016年版』からは単独で執筆する。自動運転技術、電動モビリティを専門的に扱うサイト「サステナ」を主宰。

2018年版『間違いだらけのクルマ選び』より




はじめに




11月に入ると、いよいよ締め切りに追い立てられて、執筆は連日深夜まで、いや早朝まで及ぶようになってきていた。ひたすら集中して言葉を紡いでいく中で、実は何度かだけ、もう付き合いが10年になろうとしている空冷ポルシェで深夜の東京に漕ぎ出したことがあった。気分転換して頭を整理し、アイディアをまとめるためだ。




けれど、いざステアリングを握って走り出した後には、実はいつも、ほとんど何も考えていなかった。ただ無心で、フラット6のサウンドとヴァイブレーションに身を委ねているだけ。1周回ってきてクルマを降りてから、そう言えば考え事があったんだと思い出す。大抵、そんな感じだった。




考えようとしていたのは、たとえば“EVシフト”のことだ。自動車にまつわる今もっともホットなトピックであり、第1特集は迷いなく、このEVを巡る話にした。トレンドに便乗しようというわけではなく、世間で当たり前のように言われていることを、本当にそうか? と、疑ってみようぜと考えたのだ。年中、世界の自動車メーカーの面々と議論を重ね、実際にクルマに乗ってきた人間が書いたものは、経済やITのメディアの視点とは違ったものになったはずだと自負している。皆さんの多面的な理解の役に立てるなら、やった甲斐もあったというところだが、さてどうだろうか。




もう少し、その話を続けるならば、欧州各メーカーが言うように2025年に世界販売の3割か何割かをEVに置き換えるのは、相当難しいだろうというのが今の私の考えだ。けれども、もし本当にそうなったなら、それはそれで面白いとも思っている。今後10年もしないうちに、皆がこぞって買いたくなるようなリーズナブルで魅力的なEVが多数登場し、インフラが整備され、エネルギー問題が進捗しているのならば、自分の予想が外れようがどうだろうが、その方が余程良い。




ところが世間では、どうもこの話題、極論ばかりが目につく。内燃エンジンの可能性を説けば守旧派のレッテルを貼られ、いわゆる“意識高い系”は兎にも角にもEV推し。建設的な議論にはならず、妙な対立の構図が生まれている感じ、しないだろうか?




どんな意見を持ってもいいのだが、いずれにしてもそこには肝心な視点が欠けている。それはクルマに乗るのは、買うのは、我々ユーザーだということだ。2025年に販売の3割をEVにするという話は、少なくとも今のところはメーカーの勝手な論理でしか、あるいは煽あおるメディアの机上の計算の話でしかない。そうではなく、2025年には3割以上の人が欲しくなるようなEVを出すんだ、3割の人が困らない、むしろ便利になる周辺環境を構築していくんだという志が、メーカーからも、あるいはメディアからも、ほとんど語られないのが私には引っかかる。残り7割、つまり依然大多数の内燃エンジン車ユーザーのことについても、言わずもがなである。




自動車メーカーは、数を売ることだけが正義なのか。自動車を語る視点は、経済の論理以外に無いのか。いや、そんなことはない。自動車には、ほかにもやらなければいけないことがあるはずだ。




「日本のメーカーは、もっともっと大きな視野に立って、新しいクルマを作っていく意思はないのか。本気で、安全、社会性、環境に取り組むつもりはないのか。……ぼくは自動車という乗り物は、まだまだ、こんなことでは終わらないと思っている。もっと、もっと夢を見させてほしい。メーカーは、先人の情熱と理想主義を思い起こしてほしい。いかに遠かろうが、困難であろうが、高い理想を目指す情熱のないところに、価値は生まれてこないのである。」




長く引用したが、これは徳大寺有恒さんが『ぼくの日本自動車史』(1993年刊)に綴っていた一節だ。この言葉は、今の時代にこそ尚、強い力を持っているように思う。




せっかく自動車を論じるなら、情熱が突き動かす何かについて、ロマンをもって語りたい。人間は、論理だったり、そういうものだけで動くわけではないからだ。夜中に空冷ポルシェに乗る時間には生産的な意味など無いかもしれないが、けれど少なくとも私にとってはそれは大事な、無くてはならない、無駄であるが故に甘美な時間である。クルマとは、そういう豊かさを提供できるものだと信じているし、それを手放した時には、クルマはきっとクルマでは無くなるに違いない。




それはEVでも自動運転でも一緒である。そんなユーザーの視点に立ち、理想に向かって情熱を注いだものでなければ、本当の意味で価値を持つ自動車には決してならないだろう。




経済誌を賑わすような話も、メーカーの論理も結構だが、私は皆さんとこの本を通じて、ユーザー目線、人間本位のクルマの話をしたい。未来のクルマの姿を、夢を通じ合わせたい。そんな思いに背中を押されて、どうにか最後まで書き通すことができた。この本を手にとってくださった皆さんがクルマを語る際の、話の取っ掛かりにでもしていただければ、とてもとても幸せである。


 


2017年11月

【2018年版の指摘】


・EVで「日本は遅れている」というのは事実誤認!


・EVで世界を変えるという夢を、語るべきだ


・自動運転もそれが社会を変えることを意識せよ


・トヨタGR、本気の作り込みに感心した。注目!


・VWのディーゼル日本導入。しっかり説明すべき


・実は日本はランボ天国! 成功と反骨のアイコンか




【クルマの今がわかる3大特集】


・第1特集 EVで世界を変えろ!


・第2特集 大進化 国産コンパクトvs.ライバル


・第3特集 新型レクサスLSは世界と戦えるのか?


★今期も選出、ベスト3台! 


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