普段乗ることがない(大型免許がないし)が、興味津々の大型トラック。UDトラックスの新型クオンの試乗会がスポーツランドSUGOで開催されると聞いて、参加させてもらった。そこには最新大型トラックの興味深い世界があった。
UDトラックスの新型クオン(Quon)のセミトラクターの試乗会が11月下旬に宮城県のスポーツランドSUGOで開催された。これは、我々メディア向けではなくUDトラックスにとって重要な顧客に向けた試乗会で、MFi取材チームはそこに特別に加えていただいたというわけだ。
ご存じの通り、UDトラックスは、以前は日産ディーゼルという社名だったが、2007年以降、ボルボ・グループの一員となっている。ちなみに、パッセンジャーカーのボルボ・カーズとトラックのボルボ・トラックは現在では資本関係はない。
トラック業界、運輸業界では増大する物流量に比して人手が足りないという状況に陥っている。したがって、最新大型トラックには燃費性能だけでなく、女性や初心者ドライバーも安心して運転できる運転のしやすさ、そして「このトラックに乗ってみたい」とドライバーに思ってもらえる訴求力が求められている。今回初めて大型トラックの試乗会に参加させてもらったが、会場がサーキットであることに驚いた。が、実際に試乗をして、性能を確かめるにはサーキットほど適した場所がないというのも事実だ。
さて、試乗会参加者が集合する前の早朝にサーキットの到着した我々の前には、新型クオンのセミトラクターとクオン・カーゴが待ち受けていた。朝陽を浴びて並び立つクオンのカッコ良さに痺れたが、運転させてもらって、さらに感動した。大型トラックを運転するのは初めてだが、その運転しやすさに驚いた。コックピットの快適さ、ステアリングの操作しやすさ、最大トルク2200Nm(!)の直6ディーゼルの力強さ、そしてMTベースの12速AMTのESCOTⅥのシフトのスムーズさ、ドライバーサポートシステム……目から鱗が落ちる体験だった。プロが操る道具としての強さや機能性と運転しやすさや、先進性を兼ね備えなければライバルとの競争に勝てない大型トラックの世界。その一端を見せてもらった。
まず最初に試乗させてもらったのは、クオン・カーゴ。
「どうぞ、運転してみてください」と言われてクオンに向かうが、運転席は、頭上のまだ上にある。よじ登って運転席に座ると、もちろん助手席にはインストラクターの方がいらっしゃる。
運転席からの景色は気持ちいいものだ。ステアリングも軽い。シフトを「N」から「D」に切り替えて、アクセルペダルに置く足に力をちょっと入れると、クオンはすーっと進み出す。この時のギヤ段は4速だった。
日本の大型トラックは、もちろんまだまだMTが多いが、2ペダルトランスミッションもずいぶん増えている。前述したように、女性や初心者ドライバーにも安心して運転してもらえるように2ペダルATは重要なのだ。UDトラックスの2ペダルトランスミッションは、ESCOTⅥというMTベースの12速AMTである。
スタートは、荷物の重量、勾配、アクセル開度などなどをコンピューターがセンシングして最適なギヤ段を選ぶ。4→6→8速のようにギヤ段を飛ばしながらするすると加速する。
最初おっかなびっくりで運転していたが、とても運転しやすいし、なんといってもサーキットだし(道幅は広いし対向車も来ない)、ちょっと調子に乗って走ってみる。長い下り坂にさしかかると「4段階の補助ブレーキを4にしてみてください」と言われる。ステアリングホイール左側のレバーを上に押し上げると、補助ブレーキが絶妙に効くのだ。大型車の場合、一般的なブレーキは「サービスブレーキ」と呼び、この排気ブレーキなどを呼ばれる第2のブレーキを補助ブレーキと呼ぶのだ。新型クオンはサービスブレーキの操作だけで必要に応じて補助ブレーキも自動的に連動させる「ブレーキブレンディング」という技術も搭載している。
慣れてくると運転はとっても楽しい。楽しんで走っていると、「ちょっと停まってください」と制された。「???」
「じゃあバックしてみましょう」
おおおっ、今度はバックか。ギヤを「R」にしてアクセルを踏む。
「スムーズでしょ? 大型車でバックする際に微妙なコントロールをするのは難しいんです。クオンはそこが優れています」なーるほど。
SUGOの最終コーナーからの立ち上がりはかなりの急な上り坂だ。ここでも、「ちょっと停まってみましょう。ここでは坂道発進をしてみましょう」という。これも、スムーズができるかどうか、大型車ではとても重要なことなんだそうだ。
次には、新型クオンのセミトラクターを運転。もちろん、トレーラーを引っ張る形でだ。トレーラーには10tの重りが積んであった。11ℓ直6ディーゼルターボは、最大トルク2200Nm(!)だから余裕綽々だ。と言っても、運転操作そのものはクオンカーゴと変わらない。が、神経を使うのはやはりセミトラクターの方だ。トレーラーとの連結がちゃんとできているかどうか、内輪差も大きい。生まれて初めての試乗がサーキットで本当によかった、と実感したのは、このセミトラクターの方だった。
UDトラックスの皆さんには、本当に親切にしていただいた。
キャビンを倒して(開けてっていうのかな)、エンジンを撮影したい!とお願いすれば快く引き受けてくださる。エンジンの詳しい技術を教えてください!といえば、丁寧にレクチャーしてくださった。
本当に感謝である。