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マツダがビジョン・クーペに込めたデザインメッセージとは?


マツダは今回の東京モーターショーで2台のコンセプトカー、VISION COUPE(ビジョン・クーペ)と魁CONCEPT(魁コンセプト)を初公開した。どちらも妖艶にすら思える大胆な造形で見る者を虜にし、大きな話題となった。そのデザインの意図はなにか。マツダデザインはどこへ向かおうとしているのか? 常務執行役員デザイン・ブランドスタイル担当の前田育男氏に話を聞いた。


TEXT &PHOTO:古庄速人 PHOTO:MAZDA

魂動デザインの第2章

ーまず、魂動デザインの現状について教えてください。このテーマを掲げたラインアップがひと通り出揃い、二巡目に入ったというのが現在ですよね。




前田:2010年から始まって7年が経ちました。魂動デザインと名づけたのは、動きに魂を与える、命ある形を作る、そういったメッセージです。これがそろそろ哲学、フィロソフィと呼べるレベルにまで固まってきたというのが、いまの段階です。




ーいまもコンセプトは変わっていないのですね。




前田:フィロソフィというのは、時代とともに変わってゆくものではありません。生き物であるようなデザインをしてゆく、というのはこれからも変わりませんよ。すべての車種を、ある動物の動きをモチーフにする。そして骨格の動きみたいなものをクルマに投影してゆく、ということをやってきてラインアップを一巡したところです。




ーそしてすでに、初期のころとは異なった表現も見られ始めています。




前田:はい。新しいCX-5あたりから徐々に変化させてきていて、次の世代を牽引するのが2年前のRX-VISION、そして今回のVISION COUPEという2台になります。実はRX-VISIONとVISION COUPEのプロジェクトは並行して進めていました。先にRX-VISIONのイメージが固まったから、先に公開できた。そしてこの2台は、生命感を表現するというのはこれ以前の魂動デザインから変わっていません。その表現手法を進化させているということなんです。モノに命を与えるというのは、日本に古来伝わる「ものづくり」の美意識ですよね。




ー「神は万物に宿る」、八百万の神という概念ですか。




前田:そう。だから表現のしかたというのは、いっぱいあるんですよ。もともと骨格やフォルム、リズムでやっていた表現を、今回は光でやろうと考えた。繊細な立体のリフレクション(映り込み)の動きや移ろいというもので表現しよう、と。クルマが走ると、まるで動物が動いているような、そういう表現を作りたいと思い至ったわけです。魂動デザインの本質は変わっていません。ただ生命感の表現というのはいろいろなものがあって、そのひとつが光である、と。これがいまの段階ということですね。

ークルマでの「光の表現」といえば、無機質なオブジェクトが移動してゆくことによるハイライトやリフレクションの動きと、その美しさを見せるというイメージが強い。ここに生物のフィジカルさというのはどう表現されるのでしょうか。




前田:いくら生き物のようにしたくても、クルマは基本的には鉄の塊です。停まっているときも走っているときも形は変わりません。それがあたかも動いて見えるようにするには、映り込んだ周囲の風景の動きを見せればいいのではないか。クルマが走り去ったときに「いまのはなんだ!?なにか動いていたぞ!」と、そういう見せ方ができるんじゃないか、ということです。オブジェクトをゆっくり眺めて愛でるというよりも、ある環境の中で通り過ぎた、その一瞬の残像が生き物のように感じられる。そういう表現ですね。

Vision Coupeのデザインスケッチ

キャラクターラインを持たないボディサイドの美しさが際立つ

ーそこにいる人に残像を見せるデザイン、ですか。




前田:人の脇をすーっと通り過ぎるとき、光やリフレクションが動きながら去ってゆく。そうすれば形の固定された物体が通ったのではなく、肉体が動きながら移動しているように見えてくるはず。実はRX-VISIONをスタジオの中で作っていて、はじめて屋外に出したときに「あっ、これだ!」と思ったんです。ものすごく「生きている」ように見えた。1点の光が映り込み、綺麗なハイライトを描くというだけではありません。周囲の雑多な環境が映り込むと、表情がほんとうにドラスティックに移り変わるんです。




ー鉄の塊に魂が宿ったように感じられた、と。




前田:この表現に辿り着いた背景には、日本の美意識というものがあります。走る環境によって表情を大きく変えるというのは、従来のカーデザインのリフレクションの概念とはまったく異なって、クルマが周囲の環境の中に溶け込んでゆくということが起こりはじめるんです。いまの大半のクルマは周囲の環境を壊すような、主張しすぎた形をしているように感じます。しかしクルマは環境を壊すようなオブジェクトでいてほしくない。




ーブランディングの基本に忠実に従うならば、はっきり自己主張をする必要もありますが……




前田:マツダは日本のブランドなので、日本らしくブランディングしたいという思いがあるのです。繊細でありたいし、控えめでありつつ同時に豊かでありたい。




ー力任せに周囲を押しのけてまで存在感を主張するのではない。周囲の環境を取り込み、その場ならではの表情を見せることで存在感を示し、同時にブランド固有の表現ともなる、と。なるほど、それは車体に宿った生命の発現であると同時に、そこの地主神の姿を映し出したものと捉えることもできそうですね。そう考えればたしかに、非常に日本的だと言えそうです。



インタビュー後半、魁(Kai)コンセプトいついて、に続きます
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