輸出仕様パーツ四方山バナシ
輸出仕様といっても、実は以前とは求められるものが変わってきている。その理由は、ユーザーのライフスタイルの変化もあるが、実はメーカー側の思惑が大きかったりする。ここでは、そんな裏話をちらっとお届けするぞ。
“カスタム”が主体の輸出仕様が盛り上がる
「輸出仕様」について改めて説明すると、基本的には国の都合に寄るところが大きい。北米の前後サイドマーカーにしても、ヨーロッパのバックフォグにしても、それぞれの国の法律に合わせるために用意しているもので、自動車メーカーとしては、そんなものない方がいいに決まっている。
そうはいっても、こればかりは世界でひとつの規準にすることは不可能で、なんとか手間のかからないようにしたいと思うのは必然だ。そこで注目したいのが、ヘッドライト。写真のアコードワゴンを含め、以前はウインカーと別体になっていることが多かったはずだ。つまり、その当時は国に合わせてウインカー部を作り分けていたわけで、手間も価格もいまよりもグッと手を付けやすかった。
また、自動車メーカー自らがバンパーにマーカーを埋め込んでいて、それを変えるだけで、見た目にも明らかな違いを表現できたのはカスタム的にもオイシかった。
また、国によって名前が変わるクルマが多かったことも、輸出仕様の盛り上がりに大きく貢献している。例えば、エスティマ(プレビア)、ヴィッツ(ヤリス)、フィット(ジャズ)、マーチ(マイクラ)、デミオ(マツダ2)など、まだまだ挙げようと思えばいくらでも出てくる。
それらはエンブレムを付け替えれば簡単に海外と同じにすることもできたし、何よりもまわりにいる同じクルマと、実はちょっと違うという優越感はカスタムの神髄ともいえる。つまり、輸出仕様とカスタムの相性がよかったというわけだ。
もはやベースの違いを見つけるのが困難に
では、最近はどうかというと、カスタムと輸出仕様は、以前ほど親密な関係にはないように思う。先ほどのヘッドライトを例にすれば、現在は一体化された筐体が主流だ。
自動車メーカーは、より簡単に各国の法律に適合させるために、筐体ではなく点灯させるか否かで合わせる方向にシフトしている。部品を共通化するメリットを考えれば当然の選択で、今後、その流れはもっと顕著に表れるはずだ。
クルマの名前についても同じだ。昨今のグローバル戦略にともない、日本固有の車名は減ってきている。マツダに至っては、全車グローバルネームに変わるほどだ。以前のようにヴィッツにヤリス、デミオにマツダ2など海外の車名エンブレムを装着して、輸出仕様カスタムを楽しむことは叶わなくなったというわけだ。
奇しくも、SPIでの輸出仕様パーツの販売傾向が、カスタムを重視するものよりも、より実用的に使えるものにシフトしていることからも明らかだ。
輸出仕様の楽しみは実用面へとシフト
実際、アウトドアブームによって、海外仕様のオプションパーツが注目を集めている。ボンネット先端に取り付けるプロテクターも然り、北米仕様にあるクロスバーや立体成型フロアマットなども好評だ。
いずれも、クルマを汚れから守ったり、荷物を積載するのに役立つ。ヤキマが北米トヨタの純正オプションになったのもその一環といえる。
一方で、霧の中で後続車に自車をアピールするバックフォグのあるコンビネーションランプも、寒冷地を中心に支持を得ているという。
その流れもあって、これからの輸出仕様はカスタムというよりも、海外の〝使える〟オプションを取り入れるというのがスタンダードになるのかもしれない。
一斉を風靡したCB9アコードワゴン!
車名一本化で楽しみが激減!
初代ヴィッツを皮切りに、ヤリス仕様はユーザーの間でも大人気に。しかし、ヴィッツはヤリスにバトンを渡し、その車名を終わらせた。グローバル化の波は、輸出仕様をどのように変えていくのだろうか。
部品の共通化によって輸出仕様は取り組みにくくなる
ヘッドライトもテールレンズも外見は全世界共通。サイドマーカーなどは、必要な仕様のみ点灯できるようになっている。カスタムするには灯体の交換となり高価。しかも、右通行仕様ならレンズカットも変えないといけない……。
実用的な純正オプションが人気に
RAV4をはじめとしたSUVの輸出仕様には、アウトドアで役立つ純正オプションが揃っている。見せる要素もあるが、使えるパーツであることが最優先されるのが、これからの輸出仕様だ。