ポルシェには、「クラブスポーツ(CS)」という名のモデルがある。装備の簡略化に伴う軽量化とチューンを施して、サンデーレーサーに最適なモデルという位置づけだ。1988年、911カレラ(930型)に最初のクラブスポーツが登場した。1995年に登場した911カレラRS(993型)にもクラブスポーツが追加された。その後、911GT2やGT3、ケイマンGT4ににもクラブスポーツ仕様が設定されている。
今回、縁あって筆者が預かったのは、1993年式ポルシェ968CSという名の「クラブスポーツ」だ。細かい仕様の差はあるが、このモデルにおおむね共通しているのは、フルバケットシートが装着され、リアシートが撤去されて軽量化がなされ、LSDも標準で装備されている。日本仕様では残されたエアコンとパワーウインドウは、本国仕様ではそれすらも撤去されているらしい。
便利機能や快適機能を撤去して走りに徹したこのモデルだが、運転はとてもたのしい。比較的大きな車体に感じるものの、ダイレクト感があり、ワクワクするクルマだ。過去に「ナロー」と呼ばれる旧い911に乗っていた身からすれば、快適機能はなくても全然我慢できるし、そのクルマの本来の機能や能力をダイレクトに感じられて大変興味深かった。そこで、備忘録を兼ねて、このクルマの印象をまとめてみることにした。
人間がクルマにあわせる
軽量化されたレカロ製のフルバケットシートは座面の高さを調整できない。前後にはスライドするが、高さは変えられらない。しかも、クラブスポーツでないモデルに比べてシートの位置が低い。そのため、身長がそれほど高くない人はフロントの見切りが悪いかもしれない。サーキットを速く走ることが目的なので、狭い場所で切り替えすことなど想定していないのだ。シートの座面の高さを変更しようとするなら、クッションやスポンジで調整するしかないわけだ。
また、シフトレバーのストロークが意外と大きいので、2速や4速に入れるときに油断すると肘がシートに当たってしまう。そのため、なんとか意識してこれを回避しないといけないが、慣れれば気にならなくなる。