東京〜軽井沢間に匹敵する長距離を走る路線バスがあります。
走行距離は166.9キロ、停留所の数は165。高速道路を使わない路線バスとして日本一長い「八木新宮特急バス」は、奈良県の近鉄大和八木駅から和歌山県のJR新宮駅までを結んでいます。
年明け早々、この路線バスに乗車してきました!
2日間有効、途中下車可能、運賃もお得な「168バスハイク乗車券」
まずは近鉄大和八木駅から出発するバスの停留所を確認し、停留所近くの奈良交通社のチケット売り場へ向かいます。
車内でも運賃を支払うことはできますが、通常の運賃(大和八木駅から新宮駅まで6,190円)よりお得になる「168バスハイク乗車券」(国道168号線を走るからこの名前がついているようです)がおすすめです。料金は5,250円。
しかもこの乗車券は2日間有効で途中下車可能。よって1日目は温泉地で宿泊し、2日目本宮大社に参拝するなど、楽しみ方に幅が出るのです。
ただ、注意点もあります。このチケットは奈良交通社の窓口だけで販売しており、バス車内では購入できません。そして、逆方向に戻ることもできません。
八木新宮特急バスは、大和八木駅発が9時15分、11時45分、13時45分と1日に3本運行されています。
ちなみに乗車時間は、3回の休憩時間を含めて約6時間半。
今回は1日で始点から終点まで行く予定を組みました。そこで、午前9時、奈良交通社のチケット売り場が開くと同時に168バスハイク乗車券を購入し、1本目の大和八木駅9時15分発に乗ります。
あくまで路線バスなので、高速バスのようにリクライニングができる椅子ではありません。
しかし、病院に向かう高齢者、近鉄の駅に向かう主婦など、その土地に住む人々の生活を垣間見ることができ、それが路線バスの旅の楽しさでもあります。
休憩時間に観光も楽しめる。上野池では日本最長の生活用鉄線吊り橋へ
路線バスですが、長距離のため途中でトイレ休憩が3回あります。
1回目は乗車から約1時間、165の停留所で数えると41番目にあたる五条バスセンターで10分休憩。
運転手が出発時間とトイレの場所のアナウンスをしてくれます。
隣接のイオンへ飲み物を買いに行く旅慣れた方もいらっしゃいました。
その後、五条駅を過ぎたあたりから、車窓は街から奈良の名産でもある柿畑など自然の風景へと変わっていきます。そして神野のバス停を超え、トンネルをくぐると山道へ。十津川村へ入っていきます。
世界遺産の熊野古道も通る十津川村は、奈良県で一番大きい村どころか日本一(北方領土の村を除く)大きい村です。その広さはなんと琵琶湖や東京23区以上というから驚き。
出発から約3時間。89番目の停留所「上野池(うえのじ)」で2度目の休憩です。こちらは約20分と長め。
トイレを済ませた後、徒歩1分程度の場所にある日本有数の長さを誇る「谷瀬の吊り橋」へ向かってみました。
ここは1954年から40年間は日本最長の吊り橋でしたが、1994年に茨城県の竜神大吊橋に日本一の座を明け渡しました。しかし現在も、生活用鉄線吊り橋としては日本最長。
スケールの大きさ、吊り橋ならではのスリルに圧倒され、3時間の乗車でボーっとしていた頭がすっきりリフレッシュしました…!
温泉地で降りるか、本宮大社で降りるか、降車地選択に迷います
1日で始点から終点まで行くとするなら、どこで途中下車するかを取捨選択しなくてはなりません。1日3本走っているので、1本目に乗れば物理的には2回降りることはできます。
ただ、3本目のバスに乗ると、終点到着は18時を過ぎ冬の時期は既に真っ暗。車窓旅を楽しむのなら、降りる場所は1か所にしぼった方がよさそうです。
今回は、十津川温泉で時間を過ごすことにしました。ここは公衆浴場もあり、次のバスまでゆっくり温泉に浸かることができます。
今回の旅の反省点は昼食でした。
9時発のバスに乗る場合、十津川温泉到着は13時39分。当初は「十津川温泉」から3つ先の「ホテル昴」で入浴と食事を考えていたのですが、既にラストオーダーが過ぎている時間でした。
十津川温泉とホテル昴の間の蕨尾口近くにある釜めしが有名な店も、その時間は準備中。
結局、十津川温泉の公衆浴場にゆっくり浸かり、着替えた後、もう一度無料の足湯に漬かり、バス停に隣接する土産物屋で買った菓子パンを食べ、冷たい缶コーヒーを飲みながら、山と川を眺めて過ごすことになりました。
夕暮れの太陽が照らす山々 一期一会の景色を最後まで満喫
約2時間半後、16時過ぎに十津川温泉に到着したバスに乗り込み、新宮駅まで残り約2時間、引き続き車窓を楽しみます。
十津川が流れ、夕暮れの太陽が山を照らし、のどかな風景に思わず笑みがこぼれます。刻々と変わるバスからの景色は一期一会で、その時にしか出会えないもの。
自然はいつも、別の顔を見せてくれるのです。
奈良や和歌山のような歴史ある地域の路線バスは、停留所の名前も魅力的です。
忌部(いんべ)、御所元町(ごせもとまち)、小殿(おどの)、将監(しょうげ)の峰、祓所(はらいどころ)団地前、神丸(かんまる)など、地名や読み方からその町の成り立ちを想像する楽しさも。
残念ながら湯の峰温泉を超えるあたりで日が沈み、暗くなってしまいました。
こうして18時24分。時刻表通り新宮駅に到着しました。
次回は夏に、新宮駅5時53分発で大和八木駅に向かう逆方向のバスに乗り、早朝の車窓を楽しみたいと思います。