12月後半に入り、今年もあと2週間となりました。2020年は「新しい生活様式」により、価値観の転換が生まれた一年ともいえます。
今回は、国の発展を図る指針として世界ではじめて「国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)」ではなく「国民総幸福量(GNH:Gross National Happiness)」を取り入れた国、ブータンについてご紹介します。


仏教の教えに基づく「幸せの国」にして立憲君主国

1907年12月17日、現王朝のウゲン・ワンチュクが初代国王に即位、ブータン王国が誕生しました。ブータンはヒマラヤ山系に位置する、面積が九州ほどの小さな国。北は中国、東西南はインドと国境を接しています。
チベット文化の影響が強く、国民の多くが仏教徒です。自国の文化を守るために1971年まで鎖国を続け、仏教の教えにならうことで幸せを追求する国家を築いていました。国連加盟後は、2008年に立憲君主国に移行、新憲法を交付し、国家の近代化をはかります。一方で、1972年より政策の中心としていた「国民総幸福量の増加」は継続。さらにシステム化して、現在まで国の発展をはかる指針としているのです。


国民総幸福量を定義する「4つの柱」と「9つの分野」

第4代国王ジグメ・シンゲ・ワンチュクが提唱した「国民総幸福量」は、「経済的な豊かさ」でなく、「心の豊かさ」を国の成長指標に用いようという考え方です。国民一人ひとりの幸福量を最大にすることが、国としての幸福度の最大化につながるという思いを政策の中心に据えているのですね。
国民総幸福量は、伝統的な社会・文化や民意、環境にも配慮した「国民の幸福」の実現を目指しています。その背景には仏教的価値観があり、「公正で公平な社会経済の発達」「文化的、精神的な遺産の保存、促進」「環境保護」「しっかりとした統治」 といった4つの柱のもと、9つの分野が示され、さらにより具体的な33の指標が策定されています。
達成度の調査方法は、2年ごとに実施される聞き取り調査です。国民の1%にあたる約8000人が選定され、国民総幸福量を定義する「4つの柱」「9つの分野」にしたがって調査が行われ、数値化されます。一人当たりにかかる面接などの時間は合計すると5時間にも及ぶそうです。
【4つの柱】
「公正で公平な社会経済の発達」「文化的、精神的な遺産の保存、促進」「環境保護」「しっかりとした統治」
【9つの分野】
「精神的な幸せ」「健康」「時間の使い方」「教育」「文化の多様性」「統治の質」「地域コミュニティの活力」「環境の多様性」「生活水準」


私たちの暮らしにも応用できる!?

ブータンでは開国から50年を経て、近年は失業率の増加といった社会問題やテクノロジーの流入が人々の生活に影響を与えています。2000年頃からパソコンや携帯電話の保有が一気に進み、スマートフォンも都市では生活に欠かせないものになっています。ブータンにもグローバル化の波が押し寄せているのです。そのなかで「国民総幸福量」の数値は、どのように変化していくのでしょうか。
一方で、グローバル化のなかにあってこそ「国民総幸福量」の考え方が、ブータンの人々の暮らしを支えることになるのかもしれません。4つの柱と9つの分野を共通の認識として持つことは、過度なグローバル化に歯止めをかけ、自国の文化の価値を再発見する役割を担うように思えるのです。主観的な人々の幸せを起点としている国民総幸福量の考え方は、企業や自治体、個人といったさまざまな局面でも応用できそうです。

参考サイト
ブータン政府観光局
外務省
毎日新聞
時事通信社
日経リサーチ