「クチナシ」がどんな花かご存知ですか?
初夏に 甘い香りを運んでくれる「クチナシ」。
香りが楽しめる花は意外とたくさんあり、春はバラやじんちょうげ、夏はハゴロモジャスミン、秋はキンモクセイ等の花があります。
この6月はクチナシが白くて可愛い花を咲かせる季節。低木ですが近くを通りすぎるだけで、この強くて甘い香りに気が付くのではないでしょうか。実は熟すと黄赤色になり、ご存知の通り着色料や染料として使われるほか、漢方では山梔子(さんしし)と呼ばれ消炎・利尿のほか様々な効用で重宝されています。口内炎やのどの腫れによく利くといわれます。今回は、このクチナシのよもやま話に注目していきます。
花言葉は「幸福者」「とも幸せ」「喜びを運ぶ」「清潔」「洗練」「優雅」「胸に秘めた愛」
初夏から夏にかけて香り高く白い花を咲かせるくちなしはアカネ科常緑低木です。主に暖地に自生しており静岡県以西の本州と四国、九州、沖縄に見られます。
クチナシの名前は 、クチナシの実が熟しても、実の口が自然に割れないことから「口無し」となったと言われています。日本では「嫁の口がない(嫁の貰い手がない)」という意味につながってしまうため、女の子のいる家には植えないほうがいいと言う方もいますが、これは日本だけで、アメリカでは男性が女性をダンスパーティーに誘う時に送る花とされていたようです。
花言葉は、香りからくる幸福感や、純白の白い花からイメージする清らかさにぴったりのものとなっています。
今はギフト用の鉢植えや、園芸用の苗もありますから、楽しみ方もいろいろですね!
黄色いものに欠かせない?「クチナシ」
花が咲いた後、10~11月頃に実を付け、生薬や着色料などに使われます。
多くの方がご存知なのは、 たくあん(大根のお漬物)。また、栗きんとんやお芋の甘煮などではクチナシの実は欠かせず、一緒に煮込むことで、あの美味しそうで鮮やかな黄色が生まれます。
この黄色の着色料となるクロシンという成分がクチナシの実に含まれ、同じ成分がサフランにも含まれています。
クチナシの実やショウガ、あさりなどをご飯と一緒に炊き込む郷土料理(黄飯)もあるようですが、パエリアやサフランライスを料理するときの代用にもなりそうですね!
そんなクチナシは古くから使われていたということが下記の一句からも伺えます。
「みみなしの 山にくちなし えてしかな おもいの色の した染めにせん」(古今集)
耳なし山のクチナシの実が欲しいものだ、それで誰にも知られぬ思いを染めるための下染めにしてみたい、という歌。 クチナシの実から染められる色は黄色。 "思ひの色"は 「火の色」あるいは 「緋の色」に掛けられていて、その色に染めるために、クチナシの実の色で 「下染め」をしたい。 「耳なし」にある 「口なし」ということで、誰にも知られないだろう、ということもかけた句になっています。
この歌にあるように奈良盆地南部の飛鳥周辺にある大和三山の「耳成山」は梔子山(クチナシヤマ)と呼ばれるほど、クチナシがビッシリ生えていたそうです。昔から温暖な地に自生又は栽培され、この歌のように染料として使われていました。
作ってみよう!「クチナシ」のお酒
クチナシの実は乾燥させたものが年中手にはいりますが、今ならではの楽しみ方「クチナシ酒」をご紹介します。
漬け込み時期は花が開く6~7月で、多少見た目が悪くても農薬を使用していないものを選んで下さい。
効能は疲労回復、強壮、健胃などのほか、精神安静、安眠、美容などにも効果があるといわれています。
<材料>
・クチナシの花 600グラム
・35度焼酎甲類(ホワイトリカー) 1.8リットル
<作り方>
・花は花弁が重なり合っている部分はめくるようにしてよく水洗いします。
・そのまま容器に入れてホワイトリカーを注ぎ入れます。
<おいしい飲み方・使い方>
香り豊かな琥珀色のお酒は、ストレートでもオンザロックでも良く、カクテルのベースにも最適です。
お好みでシロップや砂糖などを加えていただいてもOKです。
クチナシ酒は入浴剤としてもどうぞ。
参照:日本蒸留酒造組合WEBサイト
実も花も楽しめるこんな豊かなクチナシ、ベランダやお庭に欲しくなってしまいましたが、八重の種類のクチナシは、可憐で美しい上に、香りを楽しむために改良されたもので、実をつけないものもあるそうです。クチナシといっても種類がたくさんあるようで、世界も奥深いですね。
梅雨入りの季節、季節のものを賢くとりいれて、元気にのりきりましょう!