
<全国高校野球選手権:東洋大姫路8-4花巻東>◇15日◇2回戦◇甲子園
元エースが甲子園で復活だ。東洋大姫路の最速147キロ右腕、阪下漣投手(3年)が花巻東(岩手)との2回戦で、4点リードの9回無死二塁から救援。2者連続三振と直球で押し込んで遊ゴロに仕留め、無失点で締めた。今春センバツ中に右肘靱帯(じんたい)を損傷。1回2失点で降板した初戦・壱岐(長崎)戦以来の公式戦マウンドで躍動した。3回戦は、日本ハム新庄剛志監督母校の西日本短大付(福岡)と「死のブロック」突破をかけて戦う。
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悪夢払拭へ、背番号10が懸命に右腕を振った。木下が招いたピンチを無失点で締め、3回戦進出を決めると阪下に笑顔が戻った。「木下が甲子園に連れて行ってくれた分、絶対に恩返ししたい気持ちがあった。チームの勝利のために腕を振るだけ。楽しみながら緊張感を持ってやりました」と柔和な笑みを浮かべた。
8-4の9回。背番号1の木下が先頭に二塁打を許したところでマウンドに上がった。「お前だったら抑えられる」。木下から言葉を受け、2者連続三振。最後の打者は143キロで遊ゴロに仕留めて締めた。センバツ初戦の壱岐戦では先頭から連続四球から2失点。わずか1回23球で降板して以来の公式戦登板で1回11球無失点に「足が震えてました。苦い思い出の球場でもあった。ホッとした」と胸をなで下ろした。
背番号1を背負ったセンバツ中に右肘靱帯(じんたい)を損傷した。手術か保存療法の2択。「もう1回夏に甲子園出よう」と仲間からの声で保存療法を即決した。リハビリ中も切れれば手術と隣り合わせの状況に怖さがあった。「イチかバチか賭けないと悔いが残るだけ」。仲間への思いで前に進んだ。大会期間に入ったことで球数や力量の制限を解除。前日14日に肩肘が張った中で初めて全力で投げて不安を払拭した。
父方の祖母との約束も果たした。中学3年の1月。幼少期から同居していた祖母・美枝子さんが肺がんで亡くなった。病室で「甲子園で活躍する」と約束を交わした。センバツでは果たせなかったが、最後の夏に有言実行した。
岡田龍生監督(64)も「経験値とマウンド度胸も含めて阪下でいこうとなりました」と元背番号1にたくし、同校14年ぶりの夏2勝をつかんだ。阪下の復活はチームにとって朗報だ。本人も「自分が日本一の1ピースになれればいい」ときっぱり。48年ぶりの頂点へ、さらに勢いを加速させる。【林亮佑】