
<明治安田J1:G大阪0-3岡山>◇10日◇第25節◇パナスタ
ファジアーノ岡山の木山隆之監督(53)が、特別な思いを抱いて臨んだガンバ大阪戦で、チームを完勝に導いた。
立ち上がりから持ち前のアグレッシブなサッカーを展開し、前半にFW岩渕弘人が2点を決めて優勢に進めると、後半終了間際にはCKからMF木村太哉が頭で決めて3-0。指揮官がかつて選手、コーチとして所属した相手を攻略した。
試合後の会見に出席した木山監督は、冒頭にこの日亡くなった釜本邦茂さんへの言葉を口にした。「試合の総括の前にまず、釜本元ガンバ大阪監督のご冥福を謹んでお祈りしたいと思います」と切り出し、「自分自身もそうだし、当時のチームメートも全員、釜本さんの人柄にひかれて、支えていただいた。本当に悲しいけど、今日僕がここで試合をするというのは、おそらく当時釜本監督と一緒に戦った選手を代表して感謝を申し上げろということだと思うので、まずそれを最初に伝えたいと思います。本当にありがとうございました」と話した。
釜本さんは、自身がG大阪でプロ生活をスタートさせた時の監督だった。ルーキーイヤーの94年サントリーシリーズ第7節でベンチ入りすると、第8節鹿島アントラーズ戦で初出場。続くヴェルディ川崎戦で初先発し、初年度からリーグ27試合で出番を与えられた。抜てきしてくれた恩師の印象を「本当に人間が大きかった。退場したり、自分のミスで負けたり、相手のエースをマークする仕事を託されたけど、それができなくて負けたこともある。そういうこともあったけど、1度も僕のせいにされたことはなかった。『結果に関しては監督の責任、選手はしっかりプレーして』というスタンスだった」と当時を振り返った。
その教えを胸に選手、指導者として努力を重ねてきた力を、この日しっかりと見せつけた。「J1でもそうだし、J2でもそうかもしれないけど、決してリーグの中で技術力が突出したチームではないので、全員でハードワークして、少しでも勝つ確率を上げていくサッカーをしている。今日に関しては走ることだったり、切り替えの早さだったり、思い切って(前に)出て行くことだったり。そういうところはガンバ相手にも引けを取らなかったと思うし、十分に出せた」。選手を信じ、伸ばす指導で積み上げたチーム力を証明。「人間の大きさとか、器の大きさはなかなかまねできない。当時本当に感服した。自分もいつか、そういうことができる人間になりたいなと思って当時からやってきたつもりではある」と、リスペクトし続けてた恩師への思いを、見事な勝利で届けた。【永田淳】