
<日本生命セ・パ交流戦:日本ハム8-7広島>◇15日◇エスコンフィールド
日本ハムが「日本生命セ・パ交流戦」の広島戦(エスコンフィールド)で“中島の9球”から奇跡的な大逆転サヨナラ勝利を挙げた。2点を追う9回2死の場面で途中出場の中島卓也内野手(34)の四球から同点に追い付き、延長10回に田宮がサヨナラ本塁打。土壇場で生え抜き最年長野手が粘り腰を発揮し、最大7点差をひっくり返してミラクル勝利を収めたチームは、今季最多の貯金11とした。
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中島は、とにかく食らい付いた。2点ビハインドの9回2死無走者。左腕ハーンとの対戦だった。「いやぁ、球が速かったのと2ストライク目の空振りも合ってなかったので、ちょっとやばいなと思った」。
初球は153キロ直球を見逃し、2球目は同じく153キロ直球に空振り。あっという間に追い込まれたが、ここからが中島の真骨頂。まずは3球目のボール球、155キロ直球を冷静に見逃した。「なんとか1回ボールを挟んで、簡単に終わりたくないなと。なんとか粘ろうというか、食らいついていこうと思った」。
4球目のボール球、155キロのツーシームも冷静に見逃した。5球目の153キロのツーシームはファウルで、6球目の155キロ直球は再びボール球を見極めた。「カウント3-2になってから、フォアボールで出られたらと意識した」。
フルカウントから、7球目の151キロのツーシーム、8球目の152キロのツーシームもファウル。1球ごとに場内のボルテージも上がっていった驚異の粘り腰。「ボールも意外と見えてた。集中してたのと、アドレナリンも出てたので」。
そして、9球目。外角低めへ外れた138キロのスライダーをしっかりと見送った。四球。思わず天を見上げたハーンは気持ちを立て直せなかった。「追い込まれてから、ああいう打席ができたのは良かった」。
7回の守備から途中出場して中堅、二塁、三塁とポジションを変えながら、8回にも左前打で大逆転の機運を高めていた中島。新庄監督も「中島くんのフォアボール。あれは大きかったね」と絶賛した。
13日に今季初昇格したばかりだが、しっかりと仕事を果たせるのは生え抜き野手最年長ならでは。
中島 今日の勝ち方なんて結構ミラクルだと思うけど、昔からファイターズは“最後まで諦めない”っていうチーム方針がある。やっぱこういう試合をできるだけ多くした方がチームのためになる。本当に、すごい勝ち方だと思う。
「野球は9回2死から」を体現した“中島の9球”。背番号9の存在感の大きさが際立つ、ミラクル大逆転劇だった。【木下大輔】