
ドジャース大谷翔平投手の得点が話題になっています。5月終了時点(チーム58試合)では史上最多となる、メジャー断トツの63得点をマーク。1901年以降の近代野球史上、あのベーブ・ルース(ヤンキース)が持つ、年間最多記録の177得点に迫るペースです。
米国では昔から得点が評価されています。「野球の父」と呼ばれ、1859年に試合のボックススコアを考案したヘンリー・チャドウィックのスコアカードを見ても、各打者の成績で打数の次に得点があります。それだけにバッターも得点へのこだわりがあります。
殿堂入りのリッキー・ヘンダーソン(アスレチックスなど)は実働25年間で通算3055安打、歴代最多の1406盗塁をマーク。本人いわく「それは全て得点するため」であり、彼にとって最終目標だった“球聖”タイ・カッブ(タイガース)を超える歴代1位の通算2295得点をマーク。「史上最高の1番打者」と言われるゆえんでもあります。
それに対し、昨年6月から1番打者を務める大谷は、抜群のパワーとスピード、それに打席での忍耐強さを兼ね備えています。とりわけ、平凡な内野ゴロでもヒットにし、シングルヒットを二塁打、二塁打を三塁打、さらに一塁から三塁、ときには長駆ホームインできる俊足が多くの得点をもたらします。さしずめ「史上最強のリードオフマン」と言ったところでしょうか。
もちろん、大谷と「MVPトリオ」を組む2番ムーキー・ベッツ、3番フレディ・フリーマン、さらに後続打者たちの存在も欠かせません。いずれも高い出塁率と長打率、さらに驚異的な得点圏打率を誇り、大谷をホームに生還させる強力なバッターがそろっています。
それと見逃してはならないのがディノ・イーベル三塁コーチの存在です。米球界関係者によると「正しい判断力を持つ、積極的な三塁コーチは1シーズンに最低でもプラス30得点以上をチームにもたらす」と言います。従って、優秀な三塁コーチの存在によって、チームの得点力は大きく変わります。
そのため、米球界でイーベル氏の手腕は高く評価され、2006年以降エンゼルス、19年からはドジャースと長年に渡り三塁コーチを歴任。また、昨年プレミア12米国代表の三塁コーチを務め、来年のWBCでは2大会連続で三塁コーチに任命されるなど、引く手あまたです。
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ところで、メジャーの年間最多得点ランキングを見ると、1921年ルースの177得点を筆頭に、36年ルー・ゲーリッグ(ヤンキース)の167得点、27年ルース、31年ゲーリッグの163得点、20、27年ルース、30年チャック・クライン(フィリーズ)の158得点と、上位は主に1920~30年代の本塁打時代に占められています。
そんな中、2000年にジェフ・バグウェル(アストロズ)が152得点をマーク。36年ゲーリッグ以来の最多記録として、大きな話題を集めました。当時、本人が「我々の打線はいつ、どこからでも得点できた」と言うように、現在のドジャースと相通じるものがあります。
その年、彼はナ・リーグ史上初、また両リーグを通じてルース、ゲーリッグ、ジミー・フォックス(アスレチックス)、ジョー・ディマジオ(ヤンキース)に次いで史上5人目の「45本塁打、100打点、150得点」を達成。その中で50本塁打以上はルースとフォックスだけ。60本以上になるとルースしかいません。
今シーズンの大谷にはルースの年間最多得点記録更新とともに、1927年に前人未到の60本塁打を放った時のルースしかいない「60-100-150」という金字塔も注目したいと思います。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)