
<明治安田J1:東京V1-0C大阪>◇25日◇第12節◇味スタ
東京ヴェルディ城福浩監督(64)の采配が決まった。前半に挙げた1点のリードを後半、次々と選手を入れ替えながらチーム全体でバトンをつなぎ、C大阪の反撃をしのぎきった。
中でも前節20日の川崎フロンターレ戦で後半開始から投入されながら、途中交代となったFW山見大登(25)をこの日は先発で起用した。熟練の人心掌握術もあって、山見は持ち前の攻撃だけでなく、守備に奔走するなど気持ちの入ったプレーで72分間プレー。チームの勝利に貢献した。
この起用策を問われた城福監督はこう説明した。
「彼にとってインアウト(途中出場途中交代)っていうのは本当に屈辱的なことです。彼だけじゃなくて選手にとっては、それは公衆の面前で本当に屈辱を味わうようなことだと思います。しかも彼はインアウトは初めてじゃないので。
ただ、なぜ彼にそれをやるかというと、期待しているからです。いろんなやり方があるかと思いますけども、期待を寄せる選手にはやはり方法論も色々あれど、言うべき時、やるべき時にはしっかりとそれを伝えることが、それを本人が受け取って、リバウンドメンタリティーをどういうふうに示すか? そこがまた伸びしろに積み重なり土台となっていくと思っているので。
次の日の練習がすごく大事だと彼に伝えていましたし、彼はすごい悔しい思いをしながらそれを実行してくれた。この前のインアウトだから彼が出たのでなく、試合が終わった後のオフ明けのトレーニングを見たら、誰しも彼が先発で行ってもおかしくないと思ったと思います。それこそが大事だと思います。
人間の成長なんていうのは三歩進んで二歩下がるものなんです。願わくば下がってほしくないですけれど。彼がこれでまた一つベースが上がってくれたら、このチームにとっては非常に大きな戦力になる」
山見が成長するために、指揮官は一つ試練を与えた。そして山見はそれに負けずトレーニングに励み先発の座を手にしたのだった。
一方の山見は試合後、こう明かした。
「川崎戦が終わった後に、ここで腐るんじゃなくて、もう一度一からやり直して絶対にチャンスは来るから、そこで今週の練習からやって行けと言われた。今週の練習でやれたからこそ、こういうスタメンというのがあったと思うので、もう一度引き締め直して、日頃からやっていくことが大事かなと思います」
城福監督も口にしたリバウンドメンタリティー。なにくそという反骨心だろう。腐ることなく、自身と向き合ったからこそのスタメンであり、気持ちのこもったプレーだった。