
<明治安田J1:神戸2-1川崎F>◇16日◇第12節◇ノエスタ
ヴィッセル神戸DF酒井高徳(34)が、躍動感ある動きを取り戻して、チームを今季ホーム初勝利をもたらした。
試合を通して全体の守備が機能したこともあり、余裕すら感じさせる場面が多かった。対人での粘りはもちろん、1対1になる前にカットする判断とキレのある動きで相手を封じ、攻撃にも素早く転じた。前への意識を強く持ち、狙いすましたワンタッチパスで攻撃を加速。縦ラインでコンビを組んだMFエリキ(30)もコントロールした。「基本的には自由にさせて、彼の動きを見てどこのポジションを取ろうかとやっているけど、(エリキが)気持ち良くなって反対側まで行っちゃったりするんで『半分よりあっち行くな』って口酸っぱく言いました(笑い)」。常にチーム全体を俯瞰(ふかん)し、バランスを保つために最善の考え続けた。
今季は浦和レッズとの開幕戦で負傷。右縫工筋肉離れと診断され、リーグでは4試合を欠場したが、2日の横浜FC戦で先発復帰してからは3勝1敗とチームを上向きにさせてきた。
この試合では、ドイツのハンブルガーSV時代に約2年半ともにプレーした川崎FのFW伊藤達哉(27)との対戦もあった。「あいつがプロになる前から、だいぶ一緒にいた」という弟分とのプレーに「感慨深いっすね。プロスタートも一緒にピッチに立っていたし。本当に対戦するのを楽しみにしていた。逆サイドだったのが残念だったんですけど」と話した。数は多くなかったが、対峙(たいじ)する場面もあった。前半19分には川崎Fのカウンターの場面で伊藤とマッチアップ。伊藤はドリブルからラストパスを狙ったが「あれは誘ってカットした。ちょっと体の向きを変えたら(パスを)出してくるだろうなと思ったら出してきたんで、足を出した。(試合後に)そのことを話して『さすが』と言ってました(笑い)」。貫禄漂う動きで、後輩を見事に封じて見せた。
試合を通して鋭さが戻ってきたことを感じさせた元日本代表は「そこは試合をやれば戻ってくるのはわかっていた。ただ、個人的には1失点がいらなかった。自分はあそこで守れるからこのチームにいると思っている。1失点で試合が難しくなることを考えたら、要所でいらないシーンが多かった。(失点場面は)反省しなきゃいけない」。勝利にも、FWマルシーニョ(29)に振り切られた場面を猛省し、引き締めた。
今季初の連勝とした神戸は次節、勝ち点2差で上を行くFC町田ゼルビアとの対戦(20日、ノエスタ)を控える。町田から期限付き移籍中のエリキは出場できない契約となっており不在となるが、右サイドの番人が状態を上げている今、不安はない。「この3連戦はすごく大事になる。最初の数試合に失った部分を取り返さないと、優勝争いに入っていけない」。神戸を攻守で支えるサイドバックが、3連勝で3連覇につなげることを誓った。【永田淳】