
サッカー日本代表で、ブンデスリーガのボルシアMGを主戦場とするDF板倉滉(28)が不定期連載第2回で、日独のサッカー文化の違いやピッチ外での過ごし方について語った。グローバル化が進み、サッカー選手に限らず世界に飛び出す日本人は増えている。自身は21歳で海外挑戦。異国で結果を出すためのヒントも明かした。【取材・構成=佐藤成】
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板倉の海外生活は7年目に突入した。気がつけばプロでのキャリアは日本より海外の方が長くなった。そのうちドイツは4季目。W杯4度の優勝を誇る大国で、サッカー選手として充実の日々を送る。
「日本とドイツのサッカー文化は全然違いますね。こっちは生活の一部にサッカーがある感覚があって、スタジアム行けば満員は当たり前。サッカーに対する熱もプレーしているだけで全然違います。ドイツではやはりサッカーが一番のスポーツだし、みんな自分の住んでいる街の好きなクラブを応援している印象があります」
ドイツでは週末に多くの家族がスタジアムに出かける。地元クラブを応援し、結果に一喜一憂する。勝ち負けで街の雰囲気まで変わるほどの影響力だという。
「勝敗で街の感じは全然違いますよね。勝った後はみんなそのままお酒を飲んで。負けたらやはり帰るのも早いし、その辺ははっきりしていますね」
板倉自身はホームタウンのメンヘングラッドバッハの隣町デュッセルドルフに住んでいるが、気さくに声をかけられることも多い。国全体からサッカー選手へのリスペクトを感じる。
「ドイツのスタジアムやファンは世界一と言っても過言ではないと思います。それくらい熱いし、ドイツでプレーすることの意味は大きいですね」
日本とは異なり、クラブハウス、スタジアム、練習場が同じ敷地に収まっているクラブが多く、1つのアミューズメント施設のようになっている。1900年創設のボルシアMGは食堂を一般開放したり、ホテルを併設したりと地域に根ざした取り組みを続けている。
オフの使い方も日本時代とは変わった。川崎F、仙台時代はチームメートと買い物に行ったり、食事に出かけたりしていた。ドイツではもっぱら自宅で過ごす。
「小さい日本人のコミュニティーがあるので、その人たちと僕の家に集合でご飯を食べますね。チームメートの福田師王や(ボーフムの)三好康児が近くにいるので、しょっちゅうウチに来て一緒にご飯食べます。バーベキューをしたり。ホームパーティーみたいな感じです」
渡欧当初はチームメートから認めてもらうまで苦労もしたが、すぐに適応した。その極意を「気持ちッス」と笑顔で明かす。
「気合と気持ちさえあればなんとかなります。慣れですね。デュッセルドルフなんかは日本語だけでも生活できちゃうので、飛び込むというほどの場所ではないかもしれないです。本当にすごく住みやすいし、何一つ不便はありませんね。言語も気持ちです」
ゲルマン魂を吸収し、ピッチ内外で自身を高めていく。
○…板倉はチームメートの福田と毎日のように同じ時間を過ごしている。練習はもちろん、夕食を毎回板倉の自宅で一緒に食べるという。弟のようにかわいがっており「メンタリティーが海外向き。ずぶといし、すごいなと思います」と感心する。福田も「ピッチ内ではとても良い選手だし、ピッチ外では優しい。滉くんには感謝しかないです」と話している。
◆板倉滉(いたくら・こう)1997年(平9)1月27日、横浜市生まれ。川崎Fの下部組織で育って15年にトップ昇格。18年に仙台へ期限付き移籍し、主力となる。19年1月にマンチェスターCへ完全移籍。即座にフローニンゲンへ期限付き移籍した。シャルケでもプレーした後の22年7月にボルシアMG加入。CBとボランチをこなす。日本代表では国際Aマッチ37試合2得点。21年東京五輪代表。利き足は右。家族は両親と妹。188センチ、80キロ。