
「ジャンボ」の愛称で知られ、プロ生活23年目の今季も神奈川1部FIFTY CLUBでプレーするFW大久保哲哉(45)が、教え子の成長を糧に2年連続得点王へ挑む。
昨年7月、サッカー塾「ジャンボ大久保ストライカースクール」を立ち上げ、1期生の小学6年生がこのほど、卒業を迎えた。
得点場面に特化した異色の塾で、シュートやキックのフォームだけでなく、空間認知能力を養い、ヘディングを鍛えるメニューを組み込んでいるのも特長だ。
ヘディングを重要視するのは、大久保が20年を超えるプロ生活の中で「得点を取るFWは、足だけでなくヘディングシュートもうまい」と確信しているから。自身は190センチの長身だが「塾長」には持論がある。
「ゴン中山さん、カズさん、大久保嘉人、佐藤寿人、岡崎慎司。背の高さに関係なく、得点を取っているストライカーはみんな、ヘディングでも点を取っているんですよ」
日本代表でも活躍するFW上田綺世、小川航基、前田大然もヘディングシュートを武器に持つ。理にかなっているのだ。
6年生最後の練習は、特別にゲーム形式で行われていた。FW希望の選手ばかりだが、実戦の形では子供たちが話し合ってGK、DF、ボランチなどMF、FWとポジションを回す。相手GKからのロングボールもDFが競り合って、はね返す。手応えを口にする。
「ヘディングの練習は、FWだけでなくDFのポジションでも生きるんです。最初はボールが来ると逃げてばかりでしたが、練習を続けて、ボールへの恐怖心がなくなって。わずか半年でしっかりはね返すことができるようになりました。ヘディングも1回成功すると、子供はどんどん、伸びていく。勇気を出してヘディングをやらせることは難しいですけど、毎週毎週、根気よく言い続けたら、ヘディングシュートが入るようになるんです」
中でも、サッカー歴わずか1年という生徒は、ゴール前で待つのではなく何度も動き直して、相手DFを外すポジションを取っていた。「毎週、動き直しは言い続けてましたからね」と大久保。シュートまでの動きも当然大切で、導き通りに吸収してくれる教え子たちに目を細めた。
大久保のスクールは、あくまで「塾」。各生徒は、それぞれ街クラブに属している。生徒が所属先で得点すると、大久保のところにもゴール場面の動画が送られてくる。それが何よりもうれしいという。
これらの指導は、自身の現役生活も活性化させている。
「週1回、子供たちを定期的に見るのは初めてで。ストライカーとしての技術面、メンタリティーを言葉にして伝えることで、自分で再確認することがあったり、実際のプレーに生きたりするんですよね」
生徒に対して、分かりやすく言語化することで、自らも新たな発見があるという。実際、昨季は18試合17得点で神奈川1部の得点王に返り咲いた。40代半ばになっても、まだまだ己に伸びしろを感じている。
45歳。同年代の同士たちは既に引退し、指導者に転じているが、大久保は今も現役にこだわる。
「試合に出たら点を取りたい、活躍したい、という気持ちが全く薄れない。単純に、好きだから。点を取った時の爽快感は何事にも変えられない」
今季は開幕2戦目で初得点を挙げ、続く3戦目も決めた。3戦2発と早くも結果を残している。
チームは3年連続で関東社会人2部への昇格戦に挑んだが、いずれも、あと1歩、及ばなかった。19年からFIFTY CLUBでプレーする大久保にとってチームの関東社会人2部昇格は、使命と感じている。
「今年こそ、関東2部に昇格して角野(隆)監督を胴上げしたい。そのためにも、リーグ戦で1試合1点平均で得点を重ねて、チームの勝利に貢献できたら」
45歳でもなお、ストライカーとしての輝きを放ち続けている。【岩田千代巳】
◆ジャンボ大久保サッカースクール 昨年7月に開塾。毎週木曜日開催。小学低学年は午後5時から、高学年は同6時から。会場は「アディダスフットサルパーク横浜金沢」。体験、入会等の問い合わせは、LINEアカウント「ジャンボ大久保ストライカースクール」(ID=hirano1071)へのメッセージ、もしくは事務局の080・9302・1071まで。