
<センバツ高校野球:浦和実12-4聖光学院>◇26日◇準々決勝
その一打に一筋の光が差した。3点を追う6回2死一、二塁のチャンスの場面。「つなぐ」気持ちを胸に、聖光学院の細谷丈内野手(3年)は打席に立った。カウント0-1からの2球目。変化球を力いっぱいのスイングで捉えた打球は、左翼スタンドに吸い込まれた。一塁を回った瞬間に確信。聖地での公式戦初本塁打に「自分の打席で同点に追いつけて本当にうれしかった」。タイブレークの末、敗れはしたが、拳を掲げてダイヤモンドを一周する姿に、ベンチもスタンドも歓喜に包まれた。
好きな言葉は「執念」だ。「元々は自分に似合わない言葉でした」と言う。入学してから指揮官とのミーティングを通して「技術どうこうじゃない。相手に執念で負けていたら負ける」と考え方を変えた。秋までは勝負どころで結果を残せず、甘い意識でバッティング練習をしていた。勝負どころで結果を残す竹内啓汰主将(3年)の、さまざまな状況を意識して取り組むバッティング練習の姿勢に感化されて、吸収。日々の努力が執念の一打につながった。
チームは延長10回に、大量8点を失い力尽きた。福島県勢初のセンバツ4強は、かなわなかった。「相手の方が執念が上だった」と敗戦を受け止めて、前に進む。「今日負けたということは、何かのメッセージだと思う。熱い練習でチームを鍛え上げていきたい」。一打の感覚も、喜びも、悔しさも全て胸に夏に返り咲くことを誓った。