
横浜(神奈川)の黄金時代、再来だ! 投打につなぎの野球で沖縄尚学に8-7で競り勝ち、新チーム発足から公式戦負け無し17連勝で13年ぶりの8強進出を決めた。初回、主将の阿部葉太外野手(3年)の3ランで先制。一時は5点のリードも、沖縄尚学に追い上げられると、投手を延べ6人つぎ込む総力戦で逃げ切った。レジェンドOB松坂大輔投手を擁し、明治神宮大会、春夏の甲子園、国体(現国民スポーツ大会)を合わせた97、98年の「4冠」を再び。まずは明治神宮大会に続く2冠目へ、あと3勝だ。
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春の横浜は、負けない。初回、無死一、三塁。阿部が1ボールからの内角低め132キロ真っすぐを捉えた。ドジャース大谷を参考にしたノーステップ打法で高校通算6本目となる右中間への先制3ラン。3回にも1死二塁から左前適時打を放つなど、5点のリードで横浜ペースを感じさせた。
不運が流れを変えた。初戦の市和歌山戦で最速152キロを記録した先発の織田が指のアクシデントで3回途中で緊急降板。すると、沖縄尚学に一気に攻め立てられ、この回だけで4失点。昨秋から練習試合も含め初めて1イニング4失点を喫した。
ここからが春の横浜の真の強さだ。村田浩明監督(38)は「相性を見て」と、小刻みな継投で相手打者の目線を変えた。速球に振りまけずにミートする打線に対し、緩急を得意とする前田を2番手に起用。疲れが見え始めるや、すぐに山脇にスイッチ。6回2死からはエース奥村頼へ。8回に1点差に迫られ一死二、三塁となると、奥村頼が左翼にまわり片山が登板。三振と四球で満塁となると、再び奥村頼を送った。エースは「最後しっかりと自分にバトンが渡った時は、みんなの思いを背負って投げました」。力のこもった真っすぐで遊ゴロに打ち取り、同点を許さなかった。
試合前、村田監督は「今日はつないでいくぞ。バトンを落とすな。駅伝と同じだ。タスキを必ず次の走者に渡すんだ」と、選手たちを戦いの場に送り出した。打線はもちろん、投手陣もつなぎの野球。阿部葉は「今日は総力戦でした。全員野球で戦った。流れを渡しそうで渡さない。最後までやり切ることができた」と新たなチームの力に、自信をのぞかせた。
新チーム発足時、村田監督は選手たちに「もう、負けたくない」と話し、一からチーム作りをした。奥村頼は「負けない力がついている。球速が注目される世の中ですが、自分が一番目指しているのは負けない投手。今日その成果が出ました」と胸を張った。全員が紫紺の大旗だけを見つめる。今年の横浜は負けない。【保坂淑子】