
大いに盛り上がったドジャースとカブスの東京シリーズが、嵐のように過ぎていった。思い返すと感動の数々。現場で取材した者として、印象に残ったシーンをいくつか紹介したい。
まず心に残ったのは、何といってもカブスのピート・クローアームストロング外野手(22)だ。ガッツあふれる守備や走塁であっという間に日本のファンを魅了。東京ドームのスタンドから「PCA!」の大コールが沸き上がるほどの人気者となった。
そんなPCAは、そのプレースタイルが示すように、超ナイスガイだった。プレシーズンゲームがあった日の試合後、人気者のインタビューをしたいということで、日本メディアがクラブハウスの外にあるミックスゾーンに集まったことがあった。もう夜遅い時間で、チームバスが出発する時刻も迫っていたが、PCAはインタビューを快諾。インタビューが行われた。
ところが、筆者はどうしても聞かなければならない質問があったのだが、テレビ局が主導で質問するので、ますます時間がなくなっていた。しかも広報担当者がそばで「もう時間です」と3回くらい警告してくるという苦しい状況の中「もう1問だけ」とお願いすると、PCAは時間を一切気にすることなく丁寧に質問に答えてくれ、最後は「サンキュー」とまで言ってくれたのだ。このナイスガイぶりは、感動ものだった。
球場内で選手たちの入りの様子を見るのも興味深かった。カブスのチームバスが到着するとまず真っ先に降りてクラブハウスに入るのがクレイグ・カウンセル監督なのだが、まるで試合に負けて帰るときのような気難しい顔をしているのが面白かった。カブスの選手たちには個性的なファッションの人が多く、ダンスビー・スワンソン内野手(31)はまるでここはファッションショーのランウエーかと錯覚してしまうような、普通の人では着こなせないであろうスタイルで球場入りしていた。
取材には多くの規制があり、途中からはミックスゾーンもなくなったので苦労した。選手に話を聞くとしたらグラウンドでの練習前後。報道陣の取材エリアの脇を選手が通るのだが、声をかけたら必ず立ち止まってくれるとも限らない。練習の日にドジャースのフレディ・フリーマン内野手(35)に話を聞きたくて多くのメディアが待ち構えている中、誰かが声をかけると「ウエートルームに行くから」と言って足早に去って行く。これはダメかと思ったら、エリアの端の方で待ち構えていたロサンゼルスのあるベテラン記者に声をかけられると、フリーマンは何と立ち止まった。なるほど、このクラスの顔見知り大ベテラン記者は、フリーマンであっても振り切れないのだ。そんな学びを得た、東京シリーズだった。