
第97回選抜高校野球大会で7年ぶりに初戦を突破した花巻東(岩手)が大阪市内で20日、23日の第2試合の2回戦・二松学舎大付(東京)に向けて守備練習やシート打撃などで調整した。右上腕二頭筋の肉離れで初戦を欠場した巨人古城内野守備コーチの長男、古城大翔内野手(2年)も練習に参加し、初の一塁守備に挑戦。2回戦での復帰を目指し、調整を進める。
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一度は諦めかけた今春の甲子園出場に、兆しが見えてきた。右の上腕二頭筋の肉離れで別調整中だった古城が、本格的に練習に復帰した。「投げる時にまだ少し痛みと怖さがある」と話すように、完全復活とはいえない。佐々木監督からは普段守っている三塁手に比べ、投げる動作が少ない一塁手を提案された。「チームに少しでも貢献できるなら、どんな形でもやりたいと思いました」。経験のない守備位置への挑戦に迷いはなかった。
3月上旬。守備練習中に無理な体勢から投げたことにより負傷。「一発で(軽症ではないと)分かる痛みでした」と全治3週間を言い渡された。「センバツに向けて良い状態の中でのけがだったので、試合に出るのは諦めたというか、無理かなと思いました」。1年春から4番に座る主砲の負傷に、チームの士気も一度は落ちかけた。だが、仲間は2回戦以降の復帰を信じた。「古城のために、初戦を命がけで戦おう」と団結した。
思いは形となった。初戦の18日の米子松蔭(鳥取)戦では古城に代わり、4番に入った同級生の赤間が初甲子園ながら先制打を含む2安打2打点。チームとしても14安打の猛攻をみせ、10-2で7年ぶりのセンバツ白星を挙げた。
ベンチから見ていた古城には、こみ上げるものがあった。
「1人1人が全力プレーで本当に感動しましたし、この仲間に出会えて良かったと、あらためて思いました」
チームメートの気持ちに報いるためにも、必死に調整を進める。一塁手として参加した守備練習後、苦戦していたショートバウンドの捕球練習に1人で汗を流した。打撃面でも「まだ打席の中での迷いやスイングの鈍さを感じています」と苦戦しているが、時間はまだある。「本格的に投げるのは難しいかもしれませんが、持ち味の打撃という部分では120%の状態で挑みたいです」と気合は十分だ。復帰を信じて、必死でつないだ仲間の思いに応えるため、今この瞬間に全力を注ぐ。【木村有優】