
<MLB担当記者・斎藤庸裕の目>
<カブス1-4ドジャース>◇18日◇東京ドーム
歴史的開幕戦の主役は、やはりドジャース大谷翔平投手(30)だった。18日のカブスとの開幕戦(東京ドーム)に、「1番DH」でスタメン出場し、5打数2安打。MVPトリオを形成するベッツとフリーマンが欠場した中、1点を追う5回に右翼へ強烈な今季初安打で3得点を呼び込み、9回には二塁打でダメ押し点を演出した。ドジャース山本、カブス今永と両チームの開幕投手を史上初めて日本人が務め、日本選手が4人先発出場した、6度目の日本開催の開幕戦。2年連続世界一へ、大谷が2度の快音で幕開けを告げた。
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和を重んじる姿が印象的だった。ドジャース大谷翔平投手(30)は試合前、直立不動で前を向き、YOSHIKIが奏でる日本の「君が代」のピアノ演奏を聞いていた。その直前、アメリカ国歌の演奏では帽子を右手で持ち、胸付近に当てていた。巨人、阪神とのエキシビションマッチの際も、同様の違いがあった。胸に手を当てるスタイルは、米国では主流。一方、日本では直立不動で両手を体の横に添えるのが伝統的。郷に入れば郷に従う-。逆に言えば、日本のしきたりを忘れず、リスペクトを示しているとも言える。
母国を想う気持ちがかいま見えることは、過去にもよくあった。19年にメジャー開幕戦が行われた際には「日本の野球にとって素晴らしい」と言った。21年、日本人で初めて球宴前夜のホームランダービーに出場し、23年には日本人初の本塁打王を獲得。大谷は別格で、体も大きいとはいえ、パワーやスピードでアジア出身の選手が欧米、中南米出身の選手に比べて劣るとの偏見を覆した。「日本の野球界にとって大事なこと」。そこには、日本人の可能性、野球の発展を願うメッセージがあった。
今回の遠征では、16日に同僚選手へのおもてなしで専門シェフを呼び、マグロ解体ショーと本場のすし、焼き鳥などを提供した。「日本の文化も楽しんでもらいたい」。コンディショニング担当のスミス・コーチとは、日本の漫画を模したパフォーマンスを披露する。クラブハウスでは、アニメ好きの左腕バンダに株式会社ポケモン本社を訪れたことに触れ、満面の笑みで話しかける場面もあった。
ロバーツ監督は試合後、打席で緊張したと明かした大谷について、ほおを緩めながら言った。「なかなか緊張するショウヘイを見ることはないけど、唯一気付いたのは、日本の国歌が流れている時に、少し感情的になっているなと」。今や日本から世界の野球界を背負う存在となったが、いつまでも和を重んじる気持ちが、随所でにじみ出ている。【斎藤庸裕】