“暴落に備えて、余裕をもった資産管理をしましょう”
投資を続けるときの心構えとして、このようなフレーズを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
自分なりにしっかり戦略を立てていたとしても、いざ実際に相場の調整が始まると動揺してしまうという方が少なくありませんね。
米国株投資では、相場の暴落や大きな調整はつきものです。暴落を乗り越えるためには、正しい理解と心の準備が必要です。そこで、暴落を乗り越えるための大事なポイントをまとめました。
暴落の現実を理解する
米国株市場は過去100年以上にわたって長期的に上昇を続けてきました。その傾向はいまも揺らいではいませんね。しかし、短期的には大きな下落も経験してきました。
ITバブル崩壊時、S&P500は、2000年3月24日の最高値から2002年10月9日の安値まで、約2年7ヶ月かけて約49%下落しました。その後、最高値を更新したのは2007年5月30日で、回復までに約7年2ヶ月を要しました。
リーマンショック時(世界金融危機)には、S&P500は、2007年10月9日の最高値から2009年3月9日の安値まで、約1年5ヶ月にわたり最大で約57%下落しました。最高値を更新したのは2013年3月28日で、回復までに約5年半かかりました。
コロナショック時には、S&P500は、2020年2月19日の最高値から2020年3月23日の安値まで、わずか約1ヶ月の短期間で約34%下落しましたが、その後急速に回復し、2020年8月18日には最高値を更新しました。回復までの期間は約半年でした。
このように、暴落の規模や回復期間は予測することができません。重要なのは暴落が市場の健全なプロセスの一部であることを受け入れ、備えることですね。
暴落に対する心理的準備
具体的な心理的準備の方法をいくつかご紹介します。
1.情報のセーブ
日々値動きがあるリスク資産を持っていると、値動きが気になりがちです。特に暴落の時には、日々資産が目減りしているように見えてしまい、動揺しがちです。持ち株の値動きを頻繁に確認することで一喜一憂し、冷静な判断ができなくなるリスクがありますね。
特に仕事中や日常生活の中で株価の変動に気を取られると、本来の活動に集中できなくなります。そのような状態は避けたいですね。
また、昨今はSNSやメディアなどで株価や経済のニュースが頻繁に流れてきます。相場の雰囲気を感じ取るのには良いかもしれません。ただし、これらの媒体は過度な表現を好みます。その方が閲覧数が増え、収入に直結するからですね。
暴落の時には、このような媒体からは距離を置く方が良い場合もあります。
暴落時に他の人の相場観や感情的な揺さぶりに振り回されないように、このような情報源から距離を置くのも一案でしょう。
2.自分の投資ルールを守る
暴落局面では感情的になりやすく、それまでの投資戦略から外れた判断をしがちです。自身の投資信念を再確認しましょう。なぜ米国株に投資しているのかを思い出せば、事前に決めた投資スタイルを維持し、感情に左右されない冷静な投資判断が継続できますね。
3.買いたい銘柄リストを事前に準備
今、私は指数しか買っていませんが、個別株の時代は、平常時から買う順番と売る順番の銘柄リストを作成していました。常に自分の目線を数字でとらえていましたね。そうすることで、相場急変時に慌てず、むしろチャンスととらえて理想のポートフォリオに近づけるような売買ができます。
あらかじめ、自分なりの目線で買いたい銘柄や目安の株価を設定しておくと良いでしょう。
もっとも、個別株はその企業が倒産すれば価値がゼロになってしまうリスクがあるということも理解しておきましょう。
暴落時の投資戦略
暴落はいずれ来るものとネガティブに受け止めがちです。むしろ、暴落はいつ来ても大丈夫という心持ちで、積極的に受け入れられる準備をしておく方が良いですね。その方法をご紹介します。
1.適切なキャッシュポジションの維持
市場環境が良好な時は大きく投資したくなりがちです。しかしこれは、暴落した時に身動きが取れなくなるリスクがあります。一定のキャッシュポジションを保つことで、暴落時の買い増しができる余力を確保するのが良いですね。
2.暴落は買いのチャンスと捉える
暴落は積極的な買い増しのチャンスと捉えるのが良いでしょう。とはいっても、いつ買い向かえ(※)ばよいかはなかなか難しいですね。底値をずばり当てるのは至難の業です。お椀の底をすくうように、底値付近で買えれば良しと割り切るのが良いですね。
また、相場の雰囲気だけで買い向かうのはおすすめできません。客観的な数字を目安とすると、感情に左右されずに機械的な取引がしやすくなります。参考までに、現時点のおおよその買いシグナルをピックアップします。
・最高値から10%以上急落したとき
・S&P500の予想PERが20倍を下回ったとき
・VIX指数が30を超えたとき
・Fear and Greedが25以下のExtreme Fearになったとき
当然、これが正解というわけではなく、あくまでもひとつの見方です。しかし、指標を参考に定量と定性評価を組み合わせ、暴落時に機会を逃さず投資をすることで、長期的には大きなリターンを得ることが期待できますね。
(※)買い向かう:売り注文に対して積極的に買い注文を入れることを指す
3. 分散投資とタイミング投資の併用
タイミングを見計らう投資は、それはそれで忍耐を必要とします。折衷案として、積立投資をしながら安値で買い増しするスタイルも有効ですね。リスク資産を一定のペースで積み立てることで、無理なく機械的に投資を継続することが可能です。
また、この戦略であれば、ある程度のリスク資産のポジションを維持しつつ、ある程度のキャッシュポジションを確保することになります。安値のタイミングを掴めずに投資機会を逃す、というリスクを減らすことができます。
特にS&P500やナスダック100などのETFは、コスト面と流動性の高さからも、暴落時のタイミングの投資先として最適ですね。うねりが大きいということは、それだけ投資のチャンスがあるということです。
過去の暴落を経て
私自身は、暴落時に大きく仕込むことで、資産を増やすことに成功しています。これは、暴落は一時的で長期的には米国株は上がるという信念があるからですね。その信念があるからこそ、暴落時に積極的に買い向かえました。
過去の暴落を振り返ると、どんなに大きな下落でも、米国株市場は必ず回復してきた歴史があります。一時的な損失を恐れず、長期的な視点を持つことが重要ですね。
まとめ
米国株暴落への心構えとして最も重要なのは、以下の3点です。
・暴落は市場の健全なプロセスとして受け入れ、長期的視点を持つ
・感情に左右されない投資ルールを事前に確立する
・適切なキャッシュポジションを維持し、暴落時には逆に買いのチャンスと捉える
リスクを取らないリスクという考え方もあります。リスク資産を持たないまま、インフレによる現金の価値減少や長期的な資産形成機会の損失となるのは避けたいですね。
そのためには、暴落に動じない心構えを持ち、むしろ暴落を成長の機会として活用することが大事ですね。長期的な資産形成成功への足がかりとして、暴落を迎え入れるぐらいの心持ちでどっしりと構えていきましょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。

著者:たぱぞう(資産管理会社経営/投資顧問会社アドバイザー)
2000年より投資を始める。2010年以降、米国株投資を中心に行う。2016年自らの投資観をブログにて書き始める。投資に特化したブログとしては出色のPVを誇る。2017年から2025年春まで、某投資顧問業にてアドバイザーを務める。この間、日経マネー、日経ヴェリタス、ダイヤモンドZAI、ITmediaなどのメディアに複数回取り上げられる。「誰でもできる投資術」「誰でもわかる海外投資」をモットーに執筆中。「米国株を語る会」を開き、投資について語り合う場づくりをしている。
The post 暴落する“かもしれない”という心理との賢い付き合い方 first appeared on Wealth Road.