厚生年金保険を掛けている方などが、障害を負ってしまい一定の障害等級に該当しない場合でも、「障害手当金」という一時金が受け取ることができる場合があります。
そこで、今回は「障害手当金」についてピックアップしたいと思います。
障害手当金の支給要件
障害手当金の支給要件をまとめると次の通りとなります。
(2) 初診日から5年を経過する日までの間に、その病気やケガが治った(その症状が固定し、それ以上治療の効果が期待できない状態も含みます。)こと
(3) 病気やケガが治った日において、障害等級(※)3級よりも軽い一定の障害の状態にあること
(4) 初診日の前日において、保険料納付要件を満たしていること
※この「障害等級」ですが、よく「障害者手帳と障害年金の等級は同じ」と誤解されている方が多くいます。
申請する窓口や審査機関が異なるため、厚生年金保険等の障害年金等の障害等級と障害者手帳の障害者等級は異なるので注意が必要です。
保険料納付要件とは
「保険料納付要件」とは、以下のいずれかの要件を満たすことが必要となります。
・ 初診日のある月の前々月までの公的年金(厚生年金保険・国民年金等)の加入期間の3分の2以上の保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)があること
・ 平成38年3月までは、初診日において65歳未満であり、初診日の属する月の前々月までの1年間の保険料について未納がないこと
このように、保険料の未納が多いと、障害手当金は受給できないことになります。
障害等級3級に満たない障害とは
障害等級3級に満たない障害とは、以下のものとされています。
・ 矯正視力によって測定した両眼の視力が0.6以下に減じたもの
・ 1眼の視力が0.1以下に減じたもの
・ 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
・ 両眼による視野が2分の1以上欠損したもの又は両眼の視野が10度以内のもの
・ 両眼の調節機能及び輻輳(ふくそう)機能に著しい障害を残すもの
・ 1耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
・ そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの
・ 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
・ 脊柱の機能に障害を残すもの
・ 1上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
・ 1下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
・ 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
・ 長管状骨に著しい転移変形を残すもの
・ 1上肢の2指以上を失ったもの
・ 1上肢のひとさし指を失ったもの
・ 1上肢の3指以上の用を廃したもの
・ ひとさし指を併せ1上肢の2指の用を廃したもの
・ 1上肢のおや指の用を廃したもの
・ 1下肢の第1趾(足の指)又は他の4趾(足の指)以上を失ったもの
・ 1下肢の5趾(足の指)の用を廃したもの
・ 上記以外に、身体の機能に、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
・ 精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
とされています。
障害手当金の額
障害手当金は、障害年金と違い「一時金」で支給されます。
「一時金」は、障害厚生年金額の2年分となります。ただし、その金額が117万200円(平成28年度)に満たないときはその額(最低保証額)となります。
障害手当金が受給できない場合があります
障害手当金は、支給要件を満たしていても、「老齢厚生年金」を受給している場合は、受給できません。
また、障害認定日(初診日から原則1年6か月経過した日)に、公的年金(国民年金、厚生年金又は共済年金)を受給されている方や、労災保険などの障害補償を受けている方などについても、障害手当金を受け取ることができません。
もし、「障害年金に該当しないけど障害手当金に該当しそうだな」と思われる方は、社会保険労務士や最寄りの年金事務所へ相談されるとよいでしょう。(執筆者:高橋 豊)