税金の世界で障がい者といえば、優遇税制が思い浮かぶことでしょう。
当事者か家族などの扶養親族が障がいを抱えていれば、次の金額が所得控除できます。
いかにも障がい者は優遇税制の恩恵を受けられるように見えます。
しかし、税制上の欠陥により敢えて障害者控除の適用を断念せざるをない障がいを抱えるサラリーマンが存在します。
障害者控除の適用を受ければ、必ず障がい者である情報は必ず会社へ伝わる
障がい者のサラリーマンが障害者控除の適用を断念する理由は、会社に隠したいからです。
実際に取材でお会いしたことがありますが、あるサラリーマンは、鬱になり医師の診断により精神障害者手帳を取得していました。といっても、障がいであること隠して入社します。
年末調整シーズンでも障害者控除の適用を受けません。本人にとってネガティブな情報が伝われば、社内で不利な取り扱いを受けることを恐れていたからです。
その話を聞いていた別の人が、年末調整では障害者控除を受けずに確定申告で所得控除すればよいと提案しました。
でも、会社が住民税を特別徴収していれば、税務署に申告した障害者控除の情報は市区町村を経由して、確実に会社へ伝わります。
つまり税制上の欠陥により、障がい者のサラリーマンは優遇税制と引き換えに、会社で不利益な扱いを受けるリスクを抱えています。だから、障害者控除の適用を断念するのです。
唯一の救済制度は退職後の還付申告、過去5年間の税金を取り戻そう
それでは、障がいであることを隠すサラリーマンが会社に情報が漏れずに障害者控除は適用できないでしょうか。
実はひとつだけ方法があります。退社後に還付申告を適用することです。
還付申告とはサラリーマンが年末調整で所得控除できない医療費控除などを過去5年間まで遡って確定申告で税金を取り戻す方法です。
それを障害者控除に当てはめると、用意するものは毎年の年末調整後に会社から受け取る源泉徴収票だけです。
税務署で懇切丁寧に教えてくれます。そのときに障害者手帳コピーなど障害者控除が適用できることを証明できる書類を持参しましょう。
書類から適用する所得控除が障害者控除か特別障害者控除を税務署の職員が判断できるようにするためです。
まとめ
このように在職中に障害者控除の適用を受けると障がい者である情報は会社に伝わります。
障害者控除を受けることにより会社で不利益な扱いを受けるのは本末転倒です。
障がい者のサラリーマンが安心して障害者控除を受けられる仕組み作りが今後の税制の課題ではないでしょうか。(執筆者:阿部 正仁)