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【第12話】事例から見るシリーズ|物件の接道義務に関する注意点


12話

金融機関にとって、建築確認が下りているか、完了検査が済んでいるかなどは、物件を担保に融資をする際の適正性をチェックするうえで、とても重要です。

しかしながら、これらが重要だというのは当然としても、それを絶対視してしまうと判断を誤る可能性があります。

過去のコラムにおいても触れましたが、建築確認や検査は建築基準法上の意味において問題がなかったとしても、必ずしも金融機関の立場にとって正当とは限りません。

権利関係として欠陥がある場合もあり、その背景にあるさまざまな個別事情を読み解くことが肝要です。今回はその中でも物件の接道に関するテーマについて事例を交えて紹介していこうと思います。

接道とは

接道とは建物を建てる敷地に面する道路のことを指します。建築基準法では建物を建てる敷地が幅員4m以上の道路(建築基準法上で規定される道路)に2m以上接していなければ、建物を建築することができません。

このことを踏まえて事例を見ていきましょう。

① 部分的に借地をして接道要件を満たすような事例

下のような旗竿地(路地状敷地を含む)があるとします。

建築基準法上の要件として、2m以上接道していないとなりませんから、下図の路地状敷地部分が幅員1.9mであれば、基本的には再建築不可の土地です。

再建築不可の土地は、たとえ現時点で建物が建っていたとしても、金融機関の中には取り扱わない場合が多い(当社も、特殊事情のある例外的な場合を除き、原則として取り扱いません。)ので、結果的に流通性は劣り、担保評価も低くなることが多いです。

a

しかし、上図のように、隣接する地権者から幅10cm(以上)の土地を借りるなどして、建築確認を取ること自体は、可能なので、そのような手段をが使って建築確認を取っている物件もまれに存在します。

この方法は建築基準法上問題ありませんし、この土地を昔から持つ一般個人が自宅などを建築可能にさせるための救済措置の意味合いもあるので、不適切な事例とは限りません。

しかし、この手法が、投資物件として適切かと言えば、そうではないでしょう。こうした物件を担保として認める金融機関は少数派となるはずです。

なぜなら、金融機関は万一の場合の物件の処分性も見ているからです。

金融機関は融資した資金が債務者から回収が不可能だと判断した場合、競売などによって資金を回収します。特殊な事情がない限り、借地である赤色部分の土地に担保権(抵当権など)は設定できません。

つまり競売できる土地は「2m幅のない再建築不可の土地」でしかありません。このため原則、取り扱わないことになります。(金融機関次第では、考え方により取り扱うこともある)

あくまで理屈上の話で言えば、この赤色部分について分筆して、隣接地権者が担保提供してくれもらえれば、取り扱う可能性があります。

しかしその可能性は極めて低いでしょう。隣接地権者から見れば、担保提供するぐらいなら、売ってしまった方がスッキリするでしょうから、現実的な方法ではありません。

② 敷地延長の通路部分が、他人と共有している場合

敷地延長の通路部分が、共有だった場合はどうでしょう。

b

例えば上の図において、赤色部分がAとBの共有の敷地だとします。共有持ち分を持っていますし、正当に建築確認は取れます。

しかし、①の例と同様に考えてみてください。金融機関としては、共有持ち分にしか担保権を設定できません。

理屈上はBの共有持ち分も含めて担保提供してくれれば取り扱う可能性がありますが、通常ありえないことです。

仮にAが債務を返済できなくなった場合、Bの共有持ち分まで担保権を行使されてしまい、Bは通路の土地の権利を失う恐れがあるからです。

そういったこともあり、不完全な形でしか権利の確保ができないのであれば、たとえ現時点で建築確認が取れていたとしても、将来、再建築不可能になるリスクは捨てきれませんので金融機関からは敬遠されやすいと言えます。

③ 通路部分は共有だが、仮に共有物分割したとしたら2m確保できる持ち分がある場合

例えば、下図のように4mの通路で、共有持ち分1/2である場合には、事情が異なってきます。

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共有物分割(共有持ち分にしたがって敷地を分割して分け合う)したとした場合に、通路幅員を2m確保できる共有持ち分を持っているのであれば、その分割作業を実際にやるかやらないかは別として、取り扱いできる可能性は高まります。

④ 通路部分のように見える部分が、建築基準法上の道路に指定されている場合

なお、もし、今までの話で出た①~③のケースにおいて、すべて、それらの敷地延長の通路部分が、建築基準法上の道路に指定されている(位置指定道路)ならば、まったく話は変わってきます。その場合は再建築可能であり、担保として取り扱えます。

ただし、接道が公道である場合と異なり通行権や掘削権などの別の観点で考慮が必要になってくる場合はあります。

不動産のセミプロのような方を別にすれば、土地が完全な100%所有権なのか共有になっているのかをどのように調べるのか、「敷地延長の通路」なのか「建築基準法上の道路」なのかどうかをどのように調べるのか?といった疑問もあると思いますが、この話は次回しようと思います。

今回の事例のとおり、不動産は個別事情により、取り扱いが大きく異なる場合があります。

単純に取り扱い可なのか不可なのか断定できないケースもあります。当社へ融資の申し込みをする際に、もし物件の権利関係に疑問があった場合は、ぜひご相談ください。

シニアコンサルタント 真保雅人
(大学卒業後、鉄道会社約4年を経て1989年5月オリックス株式会社に入社し、投資用不動産ローン業務を約10年担当。その後、オリックス不動産株式会社にて約10年間の賃貸マンション用地仕入開発業務経験を経て、2010年11月オリックス銀行株式会社に出向。オリックス銀行では投資用不動産ローン業務に責任者として約10年従事し、現在に至る。)
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- コラムの注意事項 -

本ページの内容については、掲載当時のものであり、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。

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