ミクニ Research Memo(5):2027年3月期は2期連続の増収増益の見通し(2)
■ミクニ<7247>の今後の見通し
4. カーボンニュートラル宣言
重要課題のうち、環境対応の推進については、日本政府が2020年10月に発表した「カーボンニュートラル宣言」に基づき、同社では2016年を基準年として2030年度までに温室効果ガスを50%削減し、2050年度までにカーボンニュートラルを達成することを目標としている。目標達成に向けた具体的な取り組みとして、2022年度から一部の事業所でCO2フリー電力を導入し、本社ビルでは非化石証書を購入して再生可能エネルギーとして使用している。また、生産現場だけでなく、間接業務においても「無駄やロスの削減」を目指し、各部署がそれぞれの役割に応じて効率的にプロセスを改善する目標を設定し、活動を行っている。今後は太陽光発電施設の設置など、さらに積極的な削減活動を行うことを予定している。
カーボンニュートラルに関連する事業分野としては、同社が成長事業と位置付け、自動車の電動化において重要な技術となるサーマルマネジメント(熱管理・熱制御)が挙げられる。この事業では既に成果が出始めており、スズキから電気自動車におけるサーマルマネジメントを中心とした先行開発業務の一部を受託した。具体的には、同社の小田原事業所にスズキのサーマルマネジメント評価設備を導入し、同社の専門的な知見と技術力を生かすことで、スズキの電気自動車(BEV)の開発期間及び開発工数の削減に貢献するとともに、両社一体による開発を加速させることを目指している。2025年9月には小田原事業所で同設備の稼働式が行われた。また、スズキが行う実証実験に使用するBEV軽トラックの車両開発・製作に参画して、同社がMBD(Model Based Developmentの略。開発対象をコンピュータ上でモデル化し、そのモデルを使ってシミュレーションを行うことにより、設計と検証を同時並行で進める開発手法)解析に基づいた駆動用バッテリーの最適温度管理や、バッテリーマネジメントシステムの構築を中心に協力を実施した実績もある。
重要課題に取り組むうえで必要となる人的資本の充実については、健康経営を基盤とした人的資本経営を引き続き推進するとともに、中期経営計画においては、処遇改善を柱とする人的投資の拡充及び人事基盤の整備に取り組む方針である。より具体的には、生産年齢人口の減少が続くことを念頭に置き、「労働力」とその「生産性」が「付加価値」の創出を決定付けるという考え方に基づいて取り組んでいる。「付加価値の拡大」を図るうえでは「労働力」と「生産性」をそれぞれ強化する必要があるが、現在最も注力しているのは「エンゲージメント向上」「公正な人事制度」「健康経営の推進」の3つの施策である。
このうち「エンゲージメント向上」は、従業員のエンゲージメントを高めることで、社員が会社と責任を共有し、個々の能力を最大限引き出して生産性向上を図るものである。2022年2月からエンゲージメント向上プログラムを開始し、全社員を対象とするエンゲージメントサーベイを実施後、サーベイ結果を分析し、各組織の課題を明確にしたうえで、それを職場内で共有して改善を繰り返すサイクルを進めている。
「公正な人事制度」については、職能資格に基づく従来の人事制度の弊害を防ぐため、2024年4月から新しい人事制度を導入した。その主なポイントは「ヒト基準」の職能資格制度から「シゴト基準」の役割等級制度(日本版JOB型人事制度)への移行、若手優秀人材の登用や仕事内容と報酬の適正化、機動的な組織変更、総合職群の適用の拡大による一般職群の廃止などである。
「健康経営の推進」は「健康経営」を重視し、すべてのステークホルダーのWell-Beingを達成し、持続可能な社会の実現への貢献を目指すものになる。「健康経営宣言」を掲げ、従業員の健康意識を高めるとともに、健康保険組合と協力して様々な取り組みを展開しているほか、健康経営を推進するにあたり、経営方針・健康経営の推進方針に基づく戦略マップを定めて、従業員の健康課題である「ヘルスリテラシーの向上」を起点に各種の健康施策を行っている。一連の取り組みの結果、同社は2025年3月に「健康経営優良法人2025 ホワイト500(大規模法人)」に認定された(経済産業省・NPO法人 日本健康会議による共同選定)。健康経営優良法人としては6年連続の認定であり、上位500社を対象とした「ホワイト500」には初の選出となった。このほか、2024年5月には日本政策投資銀行より健康格付融資を受け、格付結果は最高ランクの「従業員の健康配慮への取り組みが特に優れている」と評価されるなど、外部から高い評価を受けている。
■株主還元策
安定配当の継続を重視しつつ、2027年3月期は1.0円の増配を計画
同社は株主還元策として配当を実施しており、中長期的な視点から安定的な利益配分を行うことを、剰余金の配当等に関する基本方針としている。また、業績及び財務状況のほか将来的な事業展開を踏まえ安定配当の継続を図り、企業価値向上と株主還元の両立を図ることを目指している。
2026年3月期の1株当たり配当金は14.0円となり、2025年3月期と同額の配当となった。なお、2024年3月期の1株当たり配当金20.0円には創立100周年記念配当10.0円が含まれており、これを除くと2025年3月期には実質的に4.0円の増配を実施したことになる。2027年3月期には、さらに1.0円増配となる1株当たり配当金15.0円を計画している。安定配当を維持しつつ段階的に増配を実施してきており、手堅い株主還元を行っている。また、配当性向30%は平均的な水準に近く、企業価値向上と株主還元の両立を図る姿勢を反映したものと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 古川 聖治)
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