アーバネット Research Memo(8):中期経営計画では中核事業・ケーナイン拡大、ソリューション事業強化を推進
アーバネットコーポレーション<3242>は、2025年5月13日付で中期経営計画「CHALLENGE 2028 価値ある空間創造」を策定・公表した。この計画は、将来に向けたビジョンと「株価と資本コストを意識した経営」を社内外に伝えることを目的としている。ここ数年で「持続的な成長」と「企業価値の向上」を最重要項目に掲げ、M&Aや資本の充実、サステナビリティへの取り組み、人的資本への投資などを進めてきた。その結果、売上高や社員数も拡大し、次の成長フェーズへの準備が整ったことが、今回の計画策定の背景にある。
1. 事業環境の認識と3大テーマ
同社は、国内人口が減少する一方、都心集中の加速、快適な居住空間へのニーズの高まり、富裕層ニーズへの対応、インバウンドの増加、シルバー層市場の拡大など、事業環境の変化を見据えている。「外国人投資家による不動産投資の拡大」「都心部での空間開発ニーズの多様化」「国内外の富裕層向け空間開発ニーズの増加」を中期経営計画にて対応すべき課題(3大テーマ)に掲げた。そのうえで、今後の成長をけん引するドライバーを、1) 都市型賃貸マンション開発事業、2) ケーナインによるBtoC事業等、3) ソリューション事業等の3つの事業に定義し、それぞれに事業の方向性と売上高目標を設定した。
2. 各事業の方向性
(1) 都市型賃貸マンション開発事業
引き続き用地購入や設計要員の増強によって、好立地プロジェクトを拡大する方針だ。また、外国人投資家やファンド投資家への売却を強化することで、総資産回転率の向上を目指す。特に、立地やコンセプトに応じて部屋の広さやグレードを高めたハイグレードブランドに挑戦する一方、小型プロジェクトの開発にも柔軟に対応していく。さらに、独自の防災プログラムやZEHマンションの開発等を通じて、防災機能や環境性能を強化し、持続可能な街づくりに貢献する方針である。
(2) ケーナインによるBtoC事業等
多様化する都心居住ニーズに対応するため、戸建・テラスハウス分譲事業、アパート開発事業、建築事業を展開し、グループシナジーの最大化を追求する方針である。なかでも軸となるテラスハウスについては、都心・駅近人気エリアでの小型開発を推進する一方、テラスハウスそのものの認知拡大にも取り組む。
(3) ソリューション事業等
中期経営計画において、最も成長性が期待される新領域を中心に構成される。具体的には、土地の最適な活用の提案、ホテル開発の継続、シルバー層・富裕層向け事業、賃貸管理、権利調整ビジネスの拡大などがメインとなる。前期に取り組んだ介護付き有料老人ホームやアパートメントホテルの開発、リゾート地での富裕層向け空間開発などは、その一環である。今後は、一定の賃貸資産ストック化を図るとともに、他社との提携やソリューションビジネスの強化にもつなげていく。また、不動産小口化商品提供への参入も検討している。
3. 数値目標
最終年度(2028年6月期)の目標(連結)として、売上高50,000百万円、営業利益4,590百万円、ROE12%以上等を掲げている。売上高50,000百万円の事業別内訳は、都心型賃貸マンション開発事業で32,000百万円、ケーナインによるBtoC事業等で9,000百万円、ソリューション事業等で9,000百万円を想定している。中核事業を伸ばしつつ、ケーナインとソリューション事業の成長により業績拡大を目指す想定である。
4. 資本コスト経営の考え方
同社のROEは10%以上で推移しており、資本コスト8%(同社推定値)を上回っている。足元のPBRは1倍以上を確保しているが、さらなる改善に向けてROEの向上と資本コストの引き下げによるエクイティスプレッドの拡大を図る考えだ。特に、中期経営計画に基づく利益成長に加え、ソリューション事業を通じた新たな収益構造の実現(資本効率の向上)やD/Eレシオのコントロールによる財務健全性の確保、株主還元とIRの充実により、資本市場から評価される会社として時価総額の拡大を目指す。
5. 中長期的な注目点
弊社では、東京都心における都市型賃貸マンションは、景気変動を繰り返しながらも、周辺エリアへの波及を含めて持続的な成長が可能な市場だと見ている。特に、国際都市として発展を続ける東京の居住環境の改善及び進化には大きな可能性が残されている。また、外国人投資家をはじめ、ファンドやリート、クラウドファンディングなど、投資対象(金融商品)としての不動産(特に、安定したキャッシュ・フローを生み出す賃貸収益物件)に注目が集まるなかで、優良物件の開発に定評のある同社の役割はますます重要になるだろう。一方で、新たな軸の育成による事業ポートフォリオの拡充と収益源の分散は、同社にとって重要な中長期的テーマである。したがって、今回の中期経営計画で掲げた方向性は、説得力があると評価できる。
今回が初の公表となる中期経営計画からは、不確実性が高まる市場環境の下で、持続可能な成長を目指す同社の決意がうかがえる。事業拡大のカギを握るのは、同社の「ものづくり」における強みと、様々な分野でノウハウを持つ他社との連携である。特に、新たな成長の軸として期待される新領域のソリューション事業は注目される。ヘルスケアアセットの開発やリゾート地での複合的な空間開発などは、日本が抱える高齢化社会及び地方創生といった課題解決にもつながる分野であり、事業としてのポテンシャルも大きい。今後の成否は、事業リスクを抑え、収益源を分散しながら最大化を図り、国内外の富裕層やファンド投資家などとのネットワークを構築することにかかっていると分析される。そういった視点から今後の動向をフォローする必要がある。
■株主還元
配当性向40%を基準に2026年6月期も1株当たり22.0円配当を予定
同社は、基本的な配当方針として、配当性向40%(税効果会計による影響を除く)を基準としている。
2025年6月期の年間配当は、好調な業績と株主への利益還元を重視する観点から、前期比1円増配となる1株当たり22.0円(中間配当10.0円、期末配当12.0円、配当性向39.1%)に決定した。2026年6月期の年間配当についても1株当たり22.0円(中間配当11.0円、期末配当11.0円、配当性向40.5%)を予定している。同社の中期経営計画の実現を前提にすれば、今後も利益成長に伴う増配の余地は十分に期待できる。
また、投資魅力を一段と高めるために毎年12月末及び6月末を基準日とする株主優待を導入している※。
※ 基準日(12月末及び6月末)現在の株主名簿に記載・記録された株主に対してQUOカードを贈呈する(500株以上を保有する株主に対して2,500円分、1,000株以上は5,000円分)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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