セレコーポレーション Research Memo(9):長期経営ビジョンを策定。中長期的な企業価値の向上を目指す(2)
5. 人的資本経営
セレコーポレーション<5078>は人的資本を企業価値創造の根幹と位置付けており、「人財の活性化」「人財育成」「人財獲得」「待遇・制度整備」を通じて、持続的な企業価値向上を実現する方針である。「ビジョン2030」と連動した人財戦略の策定・実行により、組織と個人の成長を一体的に推進している点が特徴である。人財の活性化においては、役職定年制の導入や従業員エンゲージメントの向上、柔軟な働き方の推進により、組織の新陳代謝と生産性向上を図る。人財育成では、セレアカデミーの設立やキャリアパスの明確化、次世代経営者の育成、リスキリングの推進により、専門性の高い人財の育成を進める。人財獲得においては、多様で専門性の高い人財の採用を強化するとともに、若手人財の確保やジョブ型雇用の促進により組織の競争力向上を図る。さらに、待遇・制度整備では平均年収900万円水準の設定やベースアップ、業績配分の見直し、週休3日制の導入などにより、優秀な人財の確保と定着を狙う。
また、業務プロセスや統制の自動化・外注化を進めることで、より専門性の高い人財配置へとシフトし、高付加価値創造型の組織への転換を図る。これは、人的資本の質的高度化を通じて収益力強化を実現する戦略と位置付けられる。
人的資本経営の具体的取り組みとして、2024年3月よりジョブ型人事制度を導入している。当期においてはその実効性向上を目的として、役割の明確化、公正な評価制度の確立、人財育成機能の強化に向けてジョブディスクリプションの改訂を進めている。この取り組みにより、各社員の役割と責任を明確化し、個々の能力発揮を最大化する体制の構築を目指す。制度運用においては、設計(Plan)、運用(Do)、検証(Check)、改善(Action)のサイクルを明確にし、継続的な改善を図る。具体的には、職務内容と評価の整合性や公平性の検証、男女間の評価差異の有無の確認などを通じて課題抽出を行い、必要に応じて制度改訂を実施する。これにより、公正性と納得性の高い人事制度の確立を目指す。
従業員の物心両面の「しあわせ」の実現に向けた具体的施策として、職場環境と福利厚生の充実を積極的に進めている。千葉工場においては複数の休憩室を設置し、空調及び給水設備を完備することで、休憩時間の質向上と心身のリフレッシュを促進している。これにより、働きやすさと生産性の両立を図る職場環境の整備を進めている。また、育児や介護による休業を組織全体で支える仕組みとして、休業者が所属する部署に対するフォロー手当を新設した。これにより、休業者本人のみならず、業務を担う側の従業員も含めた相互支援体制が構築され、安心して働き続けられる環境の実現を目指している。さらに、万一の疾病リスクに備えた医療保険制度を導入し、入院費や先進医療費を補償する体制を整備している。これにより、従業員が安心して治療に専念できる環境を提供し、長期的な就業継続を支援している。治療と仕事の両立を可能とする制度設計は、人的資本の維持・活用という観点からも重要な取り組みである。
同社の「ビジョン2030」は単なる定量目標にとどまらず、人財投資や健康経営、ガバナンス強化、商品開発といった多面的な施策を通じて、着実にその実現へ向けた歩みを進めていると分析できる。人的資本に対する積極的な投資姿勢と、その運用におけるPDCAサイクルの構築が極めて評価に値すると弊社では考える。また、労働環境改善やダイバーシティ推進、内部統制の強化といった非財務的指標の充実が、今後の財務的成果に寄与する可能性が高いと見ており、ビジョン実現に向けた推進体制は中長期的な企業価値向上において有効であると判断する。
6. 経営体制の強化
同社は改革推進の実効性とスピードを両立させるため、従来の委員会方式から課題ごとに専担組織を配置する体制へ移行している。この組織再編により、専門性を生かした迅速かつ実効性の高い意思決定と施策実行が可能となり、改革の推進力が大幅に向上している。また、「守り」の高度化に向けた取り組みとして、第2線及び全社横断機能の強化を実施している。具体的には、従来の内部監査室(第3線)に加え、リスクマネジメント室及び内部統制室(第2線)を新設し、3線ディフェンス体制の強化を図った。これにより、現業部門(第1線)におけるリスク管理及び内部統制の実効性が一層高まる構造となっている。さらに、建設業界における職人不足という構造的課題に対応するため、100%出資の施工会社を設立する方針を打ち出している。この取り組みでは、同社グループとして職人を直接採用し、協力業者と連携した育成を行うことで技能承継と人財確保の安定化を図る。2027年3月開始予定の本施策は、中長期的な供給体制の強化に資する重要な戦略と位置付けられる。
加えて、同社では「企業価値の極大化と物心両面の『しあわせ』の実現」に向け、その実践を支える経営基盤の高度化を重要課題と位置付けている。特にコーポレートガバナンスの強化を軸に、多面的な取り組みを推進している点が特徴である。まず、ボードサクセッションプランの立案においては、取締役会の将来像を明確にしたうえで、10年先を見据えた計画策定を行っている。これにより、経営の継続性と中長期的な意思決定の質向上を図る体制を整備している。また、取締役会実効性評価については、単なる評価にとどまらず、改善プラン及び具体的なアクションを伴う運用を実施しており、ガバナンスの実効性向上に向けたPDCAサイクルが機能している。
リスクマネジメントの分野では、リスクマッピングの見直しと対応策の再構築を進め、外部環境の変化に対応可能な管理体制の高度化を図っている。また、事業組織・体制の強化として設計カンパニーの設立や営業関連部門の格上げ、改革部門の組織化を実施しており、機能別の専門性向上と組織機動力の強化を両立している。さらに、専門性の高い社外役員の登用により、外部視点を取り入れた経営監督機能の強化も図っている。2026年5月28日開催の第35回定時株主総会後の役員体制では、社外取締役を3名から4名へ増員し、取締役10名体制へ移行する予定である。加えて、社外取締役2名及び社外監査役1名の新任選任、常勤取締役の世代交代、女性役員の増員(2名から3名)など、ガバナンス強化と多様性確保の両面で体制の高度化を図る。これらの動きは、持続的成長を支える経営基盤強化の一環として評価できる。企業理念の浸透についても重視されており、「セレフィロソフィ」の書写や輪読を含む研修を各階層に対して実施することで、組織全体の価値観統一と行動規範の徹底を図っている。これにより、理念と実務の一体化を推進し、持続的な企業価値創造を支える文化醸成が進められている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)
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