ダイナパック Research Memo(6):M&A戦略や海外事業を成長エンジンとして収益拡大を目指す
2. 成長戦略
中期経営計画では、「現在の深化と未来の創造」をテーマに「既存事業の強化」と「成長分野の取り込みと創出」の2つを成長戦略として取り組んでいる。
(1)既存事業の強化
主力事業である段ボール事業では収益力強化を図るべく、以下の4点を重点施策として各拠点で四半期ごとに改善提案も行いながら収益力の強化に取り組んでいる。
a)適正生産量で利益最大化を実現する商品・顧客ポートフォリオへの組替え
人手不足や残業時間が制限されるなかで、生産性をいかに向上し、時間当たり収益を最大化できるかを、各事業所にて議論を進めている。同社グループの事業所では、段ボールシートと段ボールケースの2つの製品形態で状況に応じて生産・出荷している。粗利率は段ボールケースよりも段ボールシートが低くなるため、段ボールケースの構成比を高めていくことが最善ではあるが、貼合工程の稼働率維持を考えると一定割合は段ボールシートも生産する必要がある。このため、この比率を最適化していくことで粗利率の改善に取り組んでいる。
次のステップとして顧客ポートフォリオの見直しを計画している。大量ロットを発注する顧客に対しては1ケース当たりの粗利額が低くても、数量増効果により生産性が向上し、利益額としては大きくなる。一方で、小ロットのユーザーについては1ケース当たり高い粗利額が取れるものの、生産性という面では低くなるため、これらのバランスの最適化や適正価格での販売に取り組み、利益の最大化を目指す。
b)原価分析から弱点を明確にし、原価率低減に直結する改善活動
売上原価に占める費用としては材料費が最も高いが、量産時に製造ラインが止まることでロスが発生するケースがあり、これを改善していくことで原価率の低減を図る。設備機械の老朽化や電気系統のトラブルのほか、段ボール原紙の質の変化によってもラインが停止してしまうことがある。ラインが停止すれば投入中の原材料がすべて廃棄処分となるほか、稼働を再開するために必要となる人員のコストもかかるため、トラブル発生等による一時停止の発生頻度を少なくすることで原価率や労務費率の改善につなげていく。また、設備トラブル以外でも注文ロット数が少ないと、印刷工程などで機械設備を止める回数が増え生産性が低下する要因となるため、これらの改善を進めていく。こうした取り組みにより製造ライン当たりの人員数を最適化することで、自然減による人員補充も不要となる。
c)物流クライシス2024への対応
物流の2024年問題によって物流コストが上昇しており、物流効率の向上を図ることも重要課題となっている。物流コストの増加分については、顧客にも値上げ交渉を進めることで対応し、売上比率で6%程度の水準にとどめているが、さらなる効率化を図るため複数の取り組みを進めている。
具体的には、トラックの積載効率を高めるための配送頻度の見直し(毎日配送から隔日配送)や、納品時間の変更(朝一番とする顧客が多いが、待ち時間短縮のため昼間の時間などに分散してもらう)などの交渉を顧客と行っている。そのほか、危険作業(リフトで2階まで運搬する作業)の排除や、原材料の配送に帰り便のトラックを活用するなど配送ルートを工夫することでコスト低減に取り組んでいる。
現在、こうした取り組みは各事業拠点で担当者を配置し管理してきたが、属人的になりがちで拠点間で取り組み状況にバラつきが生じていた。こうした課題を解消すべく2025年4月に物流部を新設し、グループ全体の物流を一元管理することで効率アップを図ることにした。同年秋には新物流システムを導入し、本格運用もスタートしている。同システムの稼動によって各事業拠点の物流状況の一元管理が可能となり、トラックの積載効率や待ち時間、回転率など各種指標を可視化し、改善することでグループ全体の物流効率向上に取り組んでいく。
d)サステナビリティ経営の推進
温室効果ガスの削減など環境に配慮した事業運営を行うとともに、働きやすい職場環境づくりに取り組むことで社員のエンゲージメントを高め、生産性向上につなげていく。
(2)成長分野の取り込みと創出
自社が保有しない経営資源をM&Aなどで取り込むことで成長を加速していく。M&Aの対象として、国内では段ボール業界における中小企業の淘汰が続くことから、シナジーが期待できる案件を中心に精査してグループ化を進めながらシェア拡大を図っていく方針だ。
一方、海外では経済成長率の高い東南アジアで拠点を拡大すべく、ローカル企業も含めてM&Aを引き続き検討していく。特にベトナムに関してはGDP成長率予測が2026年以降も5%台とほかのアセアン5ヶ国が4%台で推移するなか高い成長率が見込まれており、M&Aだけでなく既存子会社の能力増強も含めて積極的に事業展開し、今後の成長エンジンとしていく戦略だ。Hoang Haiの段ボール製造工場については、同社の国内工場と比べて生産性がまだ低く、工場のオペレーションノウハウを移植することで生産性を高め、さらなる収益拡大を目指していく。
新規事業としては、デジタル印刷による段ボールを使ったSP(セールスプロモーション)事業を育成するほか、既存事業を補完する新規事業の立ち上げについても2027年12月期からスタートする新中期経営計画で推進していくものと考えられる。
(3)その他の施策
2つの成長戦略を支える項目として、開発設計力の強化、人的資本の充実、業務革新&生産革新にも取り組んでいる。
a)開発設計力の強化
開発設計力の強化に向けて、人員体制の拡充を進めている。環境対策として3R(リデュース・リユース・リサイクル)+C(コンポスト※)や、脱プラスチックを促進するサステナブル包装の開発を強化しているほか、社会構造の変化(高齢化、労働人口減少等)に対応して、高齢者にも使いやすいような包装設計や、包装工数の減少によって包装作業の人員削減に資する包装設計にも注力している。そのほか、デジタル印刷技術を用いて顧客の商品価値を高める包装・デザインを強化することで、顧客価値の創造や新規需要の創造に取り組んでいる。
※ 有機物を分解して肥料にするためのプロセス。
b)人的資本の充実
社員のやる気と成長が会社発展の礎になるとの考えのもと、働き方改革やエンゲージメントの向上、安全で快適な職場環境の整備、ダイバーシティ&インクルージョンを推進している。
c)業務革新&生産革新
「設備効率化活動」「2SX活動」「標準化」の3本柱で業務革新と生産革新に今後も継続的に取り組むほか、基幹システムの刷新や生産のDX推進、並びにデジタル印刷機を活用した生産革新により、「見える・繋がる・止まらない」「省人化・無人化」を推進し、収益力のさらなる強化を図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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