冨士ダイス Research Memo(3):売上高200億円、営業利益20億円、経常利益21億円が目標
1. 中期経営計画の概要
冨士ダイス<6167>の中期経営計画2026(2025年3月期~2027年3月期)は、前中計(2022年3月期〜2024年3月期)の成果と課題を踏まえ、同社が次の成長段階へ移行するための「企業体質の転換」と「成長領域の強化」を両輪に据えたものだ。数値目標としては、売上高200億円、営業利益20億円、経常利益21億円、経常利益率10.5%、親会社株主に帰属する当期純利益15億円、ROE7.0%を掲げる。
本中計の中核は5つの重点施策だ。すなわち、「経営基盤の強化」「生産性向上・業務効率化」「海外事業の飛躍」「脱炭素・循環型社会への貢献」「新規事業の確立」である。これらは単なる施策の羅列ではなく、企業全体の持続的成長を実現するための有機的な体系として設計されている。
2. 重点施策の概要と進捗状況
(1) 経営基盤の強化
「経営基盤の強化」は本計画全体を支える基礎であり、サステナビリティ、品質保証、ブランド戦略、人材育成、コーポレート・ガバナンスといった企業の根幹機能を再構築する取り組みである。規模拡大や海外展開の進展に伴い企業経営の複雑性が増すなか、経営判断の迅速化と精度向上を図ることをねらいとしている。
進捗としては、2025年7月にグループ企業理念を改訂し、「超硬耐摩耗工具メーカー」から「世の中に感動体験を増やす企業」へと、自社の存在意義をより広く再定義した。これは単なるスローガン変更ではなく、海外展開、新技術領域への進出、人材ポートフォリオの再構築など、今後の事業ポートフォリオを方向付けるコンパスとして機能しつつある。
ガバナンスにおいては、監査等委員会設置会社への移行、品質保証本部の設置など、体制整備が着実に進展している。品質保証体制の強化は、アジアや北米、インドなどでの新規顧客開拓において信頼性を担保し、市場拡大とリスク管理の両立に資する施策である。
人的資本についても、研修体系の拡充、福利厚生の充実、社員エンゲージメント向上施策などを通じ、採用力と定着率の向上を見据えた投資が継続している。今後は、海外展開を担うグローバル人材や、研究開発・生産技術をけん引する専門人材の確保・育成が一層重要となる見込みである。
(2) 生産性向上・業務効率化
「生産性向上・業務効率化」は、同社が長年蓄積してきた粉末冶金や超精密加工といったコア技術を、最新の生産技術と融合させ、装置産業的な生産体制へと高度化していく施策である。各工場での自動化投資、加工ラインの最適化、CAD/CAM活用の高度化などを通じて、高精度加工と低コスト化の両立を図り、収益力の底上げを目指す。
自動化投資(1.6億円規模)は全案件が着手段階にあり、熊本製造所ではCAD/CAMによる自動ネスティングが7月より本格稼働し、原材料使用効率の改善に寄与している。また、下期から本格稼働するものとしては、熊本製造所のラップ加工作業用の自動化ロボット(8月からテスト稼働開始)、秦野工場のプラグ製作工程に導入された自動ろう付装置がある。また、岡山製造所では自動床洗浄ロボットを5月に導入している(下期から横展開)。一方、生産工程や焼結条件の見直し、治工具の改善により、需要が高まるバインダーレス合金の生産量は短期間で倍増しており、工程全体の効率化が進展している。
さらに、この下期において、郡山製造所では粉末成形プレス機へのロボットアーム追加や焼結用ケースの充填工程の自動化、さらに熊本製造所における成形加工機への産業用ロボットの導入を実施する予定だ。秦野工場でも研削加工工程に自動化ロボットを導入する計画が進んでおり、各拠点において省力化・省人化の実現に向けた体制強化が進められている。
(3) 海外事業の飛躍
「海外事業の飛躍」は、本中計において最も成長性の高いテーマであり、2027年3月期に海外売上比率25%以上を目指す施策である。アジア地域でのシェア拡大に加え、北米とインドにおける市場開拓も進める。
中国では、ローカル企業向けを中心に光学機器関連の販売が拡大し、売上に寄与しているほか、半導体関連の素材販売も好調に推移している。これを踏まえ、深センでの展示会出展を通じて知名度向上を図り、NEV(New Energy Vehicle:(中国の)新エネルギー車)関連メーカーへの拡販強化を進めている。しかし、現地市場ではデフレ進行により現地メーカーとの価格競争が激化しているほか、地政学リスクもくすぶる。そのため同社は、売上拡大を追求しつつも、過度な設備投資は控えるなど慎重な姿勢で市場深耕を図る方針である。
ASEAN地域では、マレーシアにおいて半導体関連需要が低調であるものの、地域横断で他業種・日系企業以外への販路開拓を推進している。タイ及びインドネシアにおいて輸送機器需要が弱含む一方、非輸送機器分野の製品群が堅調であり、販売拡大に向けた取り組みが続いている。タイは11月、インドネシアは12月に展示会へ出展し、新規顧客獲得の加速を図っているところだ。
インドでは、輸出ベースの出荷額が過去3年間で大きく増加しており、展示会出展を通じた市場調査を進めている。ただし、独特の複雑な商習慣や税制を考慮し、単独での進出ではなく、現地の加工メーカーや商社との協業・提携を模索しながら、2026年中の事業再開を目指す計画である。
北米では、新規市場の獲得を目的とした市場調査を継続しつつ、従来の自前主義からの脱却を掲げ、新たなビジネスモデルの検討に着手している。
前期からの施策の効果で、2026年3月期中間期の海外売上比率は21.7%となった。2025年3月期の19.5%から2.2ポイント上昇しており、目標の25%に向けて着実に同社の海外売上シェアは拡大している。
(4) 脱炭素・循環型社会への貢献
「脱炭素・循環型社会への貢献」は、次世代自動車、次世代エネルギー、次世代光通信といった成長分野に対し、脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を開発し市場投入する施策だ。
2025年10月、同社はレアメタル使用量を大幅に削減した新合金「サステロイ STN30」の販売を開始した。これは、地政学リスクへの対応と、鋼と同程度の軽さと超硬合金並みの耐摩耗性を両立する戦略製品である。また、次世代エネルギー分野では、グリーン水素製造の消費電力を削減する触媒入り電極(Powder Metallurgy Electrode:PME)の顧客評価が進行中であり、2027年の市場投入を目指している。同様に顧客評価中の光通信用コネクター金型(次世代光通信分野)など、複数の新製品開発が進んでいる。
(5) 新規事業の確立
「新規事業の確立」は、新たな収益の柱を育成し100年企業を実現するための施策だ。2024年7月に「新規事業組織」が発足しており、新事業シーズの探索と事業化検討の本格的な体制が整備された。本施策においては、新規事業立ち上げのスピードアップを図るため、同社はM&Aや業務提携の実施も有力な手段として視野に入れている。
具体的な進捗としては、超硬工具・金型のリサイクル事業において、2025年10月よりモデル地域での試験回収を開始している。顧客網を活用し超硬耐摩耗工具・金型の国内循環型リサイクルの実現を目指すもので、昨今のレアメタルの調達難に起因する原料調達リスクの低減を図るねらいである。
以上、中期経営計画における5つの重点施策は、総じて順調に進展していると言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 西村 健)
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