丸山製 Research Memo(5):「刈り取り」フェーズに移行
■中長期の成長戦略
1. 長期ビジョン
丸山製作所<6316>は創業130周年を機に、持続的な価値向上を目指す「2030年長期経営ビジョン」を策定している。このビジョンでは、「食・水・環境分野の社会課題解決」を中核に据え、ESG経営の強化と社会貢献型企業としての成長市場への進出を掲げている。また、ブランドステートメント「次の100年を創る -All for the Future-」のもと、長年培ったポンプとエンジンのコア技術をさらに進化させることで、自然と調和し、人と地球が笑顔あふれる世界の実現に寄与することを使命としている。
長期ビジョンの具体策となる「第8次中期経営計画」は、2023年9月期を初年度とする5ヶ年計画である。最終年度の2027年9月期に、売上高48,000百万円、営業利益2,800百万円(営業利益率5.8%)、ROE7.5%以上の達成を目指す。計画の前半3年間は将来の飛躍に向けた「種まき」のフェーズと位置付け、新製品開発や生産体制の整備に注力した。残り2年間では、これらの投資成果を確実に利益へとつなげる「刈り取り」のフェーズへと移行する方針である。
2. 重点施策
(1)収益力強化
収益力の強化に向けて、工業用機械における洗浄機の防音・温水タイプへのラインナップ拡充と全営業所への専門員配置を通じて、高収益な産業用市場での販売体制を整備する。洗浄の自動化にも取り組み、洗浄機市場の販路拡大を目論む。商品別の売上構成比の改善を通じた収益性の向上を図るとともに、適切な価格改定の実施と組み合わせることで、利益率の構造的な引き上げを目指す。
また、製造コスト低減構造改革を推進する。原材料高騰への対策として2024年に新設した「バイヤーチーム」がグローバルな調達先の見直しを主導し、直材コストの抑制と適時適切な製品価格の改定を並行して実施する。生産体制においては、2サイクルエンジンのタイ工場への集約や、国内外の生産拠点における省人化・無人化・自動化を推進し、製造原価の抜本的な改善を図る。
(2)新規事業の確立
次世代の成長軸として、スマート農業分野を戦略的に育成する。ドローン・自動操舵システム・DXアプリ「丸山コネクト」を組み合わせ、農業従事者の高齢化に伴う省力化ニーズに対応した次世代農業ソリューションを展開していく。研究開発体制の強化に向けては、2025年10月に「技術本部」を新設し、国内外の製品開発をグローバルな視点で統括する。さらに2027年1月には千葉工場内にR&Dセンターの開設を予定している。従来は事業部ごとに分散していたエンジン・ポンプ・電気などの技術者を一か所に集約することで部門横断的な連携を強化し、社会課題の解決に寄与する新製品の市場投入を加速させる考えである。
(3)海外事業の成長
現 中期経営計画では、海外売上比率を35%超へと引き上げることを重点目標に掲げ、主要市場での事業基盤の構築を加速させる。大型防除機では、世界最大のトラクター市場であるインドで自社工場の建設に着手し、「自社調達・生産・販売」の一貫体制を確立することで価格競争力と供給安定性を高め、同国での販売拡大を図る。北米カリフォルニア州では現地仕様に適合した新製品をリリースし、ブランド地位の確立を急いでいる。アジアでは、タイのエコエンジン生産拠点を強化してタイ国内及び周辺国への供給を加速させるとともに、新たに販売・製造拠点を開設したベトナムをグループのコストダウン拠点として活用しながら新流通の開拓を進める。中南米では2025年1月にコロンビアへ現地法人を設立し、農業大国である同国のニーズに即した製品展開と直接的なカスタマーサポートを提供することで、周辺国への展開も見据えた本格参入を果たした。工業用機械分野では、北米におけるシェールオイル採掘やインフラ整備向けの大型ポンプという新用途市場への参入を進め、高収益カテゴリでの海外事業拡大を図る。
(4)既存事業のさらなる成長
MUFB製品については、家庭用アダプタを活用したBtoC市場の深耕に加え、パートナー企業を通じた外食・交通インフラといった新流通への導入を加速させることで、既存製品の市場浸透と収益貢献の拡大を図る。農業機械のアフターマーケットでは、従来の修理対応から定期点検・整備主体のメンテナンスへとサービスモデルを転換する。需要期における農機の安定稼働を支えることで、顧客との長期的な関係構築と継続的な収益基盤の確保を目指す。
(5)財務体質・人材育成・リスク管理の強化
財務体質の強化に向け、製品及び部品の管理方法を大幅に見直す在庫削減活動を推進し、キャッシュ・フローの改善と財務基盤の安定化を図る。IT戦略専門会社であるM-Innovationsを中心に、AIやDX技術を活用して経営視点での業務プロセスの刷新を進める。基幹システムの次世代化とデジタル技術による業務時間削減を通じ、グループ全体の生産性向上と業務リスクの低減を同時に実現していく。技術本部の設立とR&Dセンターへの技術者集約は、専門人材の育成・活用という観点からも重要な施策と位置付けられる。部門を超えた技術者の協働を促すことで組織全体の技術力を底上げし、次世代の製品開発を担う人材基盤を強化していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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