ケイファーマ Research Memo(1):iPS細胞を活用したALS治療薬、脊髄損傷治療の開発が進む
ケイファーマは、2016年に設立された慶應義塾大学発のバイオベンチャーで、iPS細胞を活用した創薬と再生医療の研究開発を行っています。同社は主にALS(筋萎縮性側索硬化症)や脊髄損傷に対する治療薬を開発しています。ALS治療薬「ロピニロール塩酸塩」は、順調に進めば2028〜2029年の上市が見込まれており、日本国内の開発だけでなく海外ライセンス活動も積極的に行っています。一方、再生医療事業では、脊髄損傷や脳梗塞患者にiPS細胞から分化した神経前駆細胞を移植する治療技術を開発し、2030年ころを目標に上市を目指しています。
ケイファーマ<4896>は、2016年に慶應義塾大学発のバイオベンチャーとして設立された。iPS細胞を活用した創薬及び再生医療事業を展開しており、脳・神経領域におけるアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象に研究開発を行っている。iPS創薬事業で6本、再生医療事業で5本のパイプラインを走らせている。導出実績としては、ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬候補品である「KP2011」の日本を対象としたライセンス契約を2023年にアルフレッサ ファーマ(株)と締結している。
1. iPS創薬事業の有望パイプライン
iPS創薬とは、患者から採取した細胞を用いて疾患特異的iPS細胞を作製する技術である。この技術により、1,200種類以上の既存治療薬ライブラリを活用したスクリーニングが可能となり、薬効の高い候補化合物を効率的に発見できる。さらに、ドラッグリポジショニング(既存薬開発)の手法を活用した創薬事業として展開している。現在、最も開発ステージが進んでいるパイプラインはALS治療薬であるロピニロール塩酸塩(以下、ロピニロール)で、医師主導の第1/2a相臨床研究で良好な結果を得たことを受け、導出先のアルフレッサ ファーマにて第3相臨床試験の準備を進めている段階にある。順調に進めば2028〜2029年にも上市が見込まれている。国内の市場規模は250億円程度だが、全世界では1.3兆円を上回る規模となるため、海外でもライセンス活動を積極化しており、今後の導出が期待される。また、2025年内にFTD(前頭側頭型認知症)やHD(ハンチントン病)を適応疾患とした第1/2相臨床試験を開始すべく準備を進めている。
2. 再生医療事業の有望パイプライン
再生医療事業では、iPS細胞から分化誘導した神経前駆細胞を脊髄損傷や脳梗塞の患者に移植することで疾患部の神経再生を促し、四肢機能の回復を目指す医療技術の開発を進めている。神経領域は再生が難しい分野とされてきたが、長年の基礎研究や同社独自の研究開発力をもとに神経再生技術の実用化を目指している。最も進んでいるパイプラインは亜急性期脊髄損傷を対象とした「KP8011」で、医師主導臨床研究の結果が、2025年3月の再生医療学会で発表された。細胞移植後1年の経過観察を経て4症例中すべての症例で安全性が確認され、有効性についても2例で運動機能の改善(1例は歩行練習、1例は食事ができるまでに回復)が見られた。同社は同結果をもとに企業治験を行うべくPMDAとの協議を進め、条件付き承認申請制度を活用することで2030年前後の上市を目指す。また、同時並行で国内外のライセンス活動も進める予定だ。国内だけで市場規模は750億円と推計されており、今後の動向が注目される。
3. 業績動向
2024年12月期の業績は売上高の計上がなく、営業損失836百万円(前期は366百万円の利益)であった。前期はアルフレッサ ファーマからのライセンス契約一時金1,000百万円を計上していたため、営業利益を計上したが、現在は開発段階にあり、契約一時金などの収入がなければ損失が継続する状況となっている。2025年12月期の業績も、売上高の計上は見込まず営業損失1,368百万円を計画している。臨床試験を2本開始するなど研究開発費の増加を見込んでいるほか、人員の新規採用による人件費増を見込んでいる。なお、現在進めているライセンス契約交渉がまとまれば、契約一時金を売上高として計上することになる。2024年12月期末の現金及び預金は2,268百万円となっている。同社としては2年分程度の事業活動資金は確保しておきたい考えで、時期を見て資金調達を行う意向だ。なお、同社は複数の銀行と当座貸越枠の設定(合計12億円)を行っており、迅速に資金調達が行える体制を確保している。
■Key Points
・iPS細胞を活用して創薬・再生医療の研究開発を進める慶應義塾大学発のバイオベンチャー
・ALS治療薬は2028~2029年頃の上市を見込み、市場規模の大きい難聴治療薬にも注目
・脊髄損傷を対象とした開発プロジェクトは医師主導治験の結果を受け、企業治験に進む予定
・2025年12月期は企業治験の開始などもあって研究開発費の増加を見込む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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