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芙蓉リース Research Memo(3):「営業資産」の積み上げなどにより、「差引利益」は増益基調で推移(1)


■決算動向

1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リース<8424>の売上高は、全体の80%超を占めるリース料収入のほか割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。

一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入益を含む)」※などの費用を引いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的であると考えられる。なお、「経常利益」は「営業資産残高」と「ROA(営業資産経常利益率)」の掛け算となるため両方の動きによって影響を受ける。また最近では、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。

※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。


2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産」の積み上げに伴って右肩上がりに推移してきた。また経常利益についても「営業資産」の積み上げとROA向上の両方により増益基調を続けている。特にROAの向上については、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大に加え、最近ではBPOサービスを中心とした新領域のビジネス(ノンアセット収益)の伸びが寄与している。

一方、費用面を見ると、「資金原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。それらの結果、2022年3月期の経常利益は過去最高を更新した。

また有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%の水準は、流動性の高い営業資産を大量に保有するリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。

また資本効率を示すROEについても、利益水準の底上げとともに上昇し、2021年3月期以降は10%を超える水準で推移している。

3. 2023年3月期上期決算の概要
2023年3月期上期の業績は、営業利益が前期比14.9%増の270億円、経常利益が同13.2%増の311億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同12.3%増の203億円と各段階利益で増益となり、過去最高益(上期ベース)を更新した※。

※経常利益は6期連続、四半期純利益は8期連続で過去最高益を更新。


事業本来の業績を示す「差引利益」(資金原価控除前売上総利益)は、「エネルギー環境」や「不動産」「航空機」といった成長ドライバーの伸びに加え、2021年10月に連結化したWorkVision(BPO/ICT)が期初から寄与したことなどにより前年同期比10.6%増の533億円と順調に拡大した。

経常利益についても、「差引利益」の伸びに加え、持分法投資利益※の増加などにより同13.2%増に拡大した。事業分野別で見ると、「不動産」や「航空機」のほか、「モビリティ」「エネルギー環境」「BPO/ICT」がそれぞれ伸びており、各領域でバランスの取れた利益成長を実現したと言える。

※特に、カナダの持分法関連会社(ピックアップトラックのリース・レンタル)や、横河電機との合弁による横河レンタ・リース(PC・計測器のレンタル)が好調であったもようだ。


一方、費用面を見ると、「資金原価」はほぼ横ばいで推移した。今後、海外市場金利の上昇に伴う調達コストの増加が懸念されるものの、調達全体に占める外貨建て有利子負債残高の比率は大きくなく、影響は限定的と考えられる。また、WorkVisionの連結化などにより「人物件費」が増加したが、OHRは良好な水準を維持している。保有する債権の貸倒リスク自体も低く抑えられている。

「契約実行高」についても前年同期比9.0%増の7,016億円に増加した。「エネルギー環境」でのエクイティ投資(再エネ事業への参画)や不動産ファイナンスが大きく拡大した。一方、リースについては、「モビリティ」における新車納期の長期化などの影響を受け伸び悩んだものの、通期では前期並みの水準を確保する見通しのようだ。また、「営業資産残高」についても、「不動産」における大型案件のEXIT(契約終了)があったものの、「エネルギー環境」や「不動産」の伸びでカバーし、前期末比1.4%増の2兆6,015億円と伸ばすことができた。

これらの結果、ROA※については2.41%(前年同期は2.15%)に大きく改善した。収益性の高いポートフォリオへの転換や事業領域の拡大を進めたことでROAは順調に良化している。

※経常利益(年換算)÷営業資産残高(平残)。


財政状態については、総資産は前期末比1.4%増の2兆9,913億円とほぼ横ばいで推移した一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同7.4%増の3,574億円に増加したことから、自己資本比率は11.9%(前期末は11.3%)に改善した。また、有利子負債(リース債務を除く)は前期末比1.1%増の2兆3,911億円とわずかに増加※1したが、長期有利子負債比率※2は43.1%(前期末は43.2%)とほぼ同水準となった。

※1 特にESGファイナンスの取り組みを積極的に進め、リース会社としては初となるシンジケーション方式によるポジティブ・インパクト・ファイナンスを活用した資金調達を実施した。
※2 有利子負債に占める、長期有利子負債(社債+長期借入金+債権流動化に伴う長期支払債務)の比率。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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