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芙蓉リース Research Memo(8):営業資産の積み上げとROAの向上を目指す(2)


■成長戦略

3. 各戦略分野の方向性
(1) 不動産
最終年度の営業資産残高を5,300億円(前期末は5,552億円)に積み上げ、ROAは2.2%(同2.3%)の水準を維持していく方針である。既に営業資産残高は最終目標に達しているが、引き続きアライアンス先の拡大を図るほか、豊富な不動産情報(年間4,000件)を活用した芙蓉総合リース<8424>主導型案件を推進していく。

(2) 航空機
足元では、コロナ禍の影響を踏まえ慎重な営業姿勢を継続している。同社は、マーケットの回復状況等を踏まえ、再成長に向けて良質案件(エアライン、機種)を取り込み自社保有機の積み上げを図っていく方針である。また、パーツアウトビジネスや航空関連ベンチャーへの出資など周辺事業へのビジネス領域の拡大も進め、リースだけでなく航空機事業全体での収益性の向上を目指していく考えだ。

(3) 海外
最終年度の営業資産残高1,100億円(前期末は974億円)、ROA1.6%(同1.6%)を目指している。これまではインオーガニック(出資、買収、提携等)戦略を中心に事業拡大を進めてきたが、今後はオーガニックな収益拡大を目指す方針であり、同社が強みを持つ分野(不動産、エネルギー・環境、モビリティビジネス等)を中心として、顧客と連携した海外案件を推進していく。特にアジア拠点の拡大等を通じて、海外ネットワークのさらなる拡充にも取り組む。

(4) エネルギー・環境
主力の太陽光発電事業は、最終年度の発電容量を202MW(前期末283MW※1)、営業資産残高を340億円(同330億円※2)に拡大するとともに、ROAも6.0%(同6.0%)と高水準を維持していく方針である。既に発電容量及び営業資産残高は最終目標を達成しているが、今後は「ポストFIT」に向け海外展開(海外における再エネ発電事業やアライアンス先との共同投資)を強化するほか、PPA(電力販売契約)サービスの提供や新たに参画した植物工場の運営などへ展開し、持続可能な社会構築にも貢献していく方針である。

※1 開発中案件を含めると375MW。
※2 エクイティ投資分(開発中案件を除く)を含めると444億円。


(5) 医療・福祉
最終年度の営業資産残高※として1,250億円(前期末は1,154億円)を目指していく。引き続き、専門性の高いプレーヤーとの協業による事業領域拡大やアドバイザリー機能のさらなる展開に取り組む。特に持続的かつ安定的な介護サービスの実現に向け、大手介護事業者との連携による介護事業者向けソリューションを提供するほか、医療機器メーカーやSIerとの協業によるサービス開発などを進めていく。また営業資産残高のうち、アクリーティブによる診療・介護報酬債権ファクタリング(FPSメディカル)については300億円(前期末は203億円)を見込んでおり、地域金融機関及び医療コンサル等との連携をさらに深めていく方針である。

※他事業分野との重複あり。アクリーティブの診療報酬債権ファクタリングを含む。


(6) 新領域(BPOサービス)
新領域は、新規事業やビジネス領域の拡大など「新しい取り組みとなるビジネス」の総称であり、ノンアセットビジネスを中心としたフロンティア拡大を進めている。引き続き幅広いバックオフィスサービスを展開しているNOCとの連携を本格化させ、ウィズコロナに伴ってニーズが拡大しているBPOサービスのさらなる強化(ポジション確立)やグループ外企業との提携による新サービスの提供に取り組む。

(7) その他の取り組み(モビリティビジネス)
2020年4月からヤマトリースの連結化により新たな戦略軸として追加された。ヤマトリースとのシナジー創出やヤマトホールディングスとの連携などを通じて、ポテンシャルの大きな車両・物流業界へのソリューション提供により、足元利益水準(約30億円)を将来的には倍増させ、事業ポートフォリオの一角を担う水準にまで成長させる方針である。

4. 弊社アナリストの注目点
弊社でも引き続きコロナ禍による影響は気になるものの、1)「営業資産残高」についてはすでに目標値を上回っていることや、2)「不動産」「エネルギー・環境」など収益性の高い事業が拡大していること、3)資産効率の高いBPOサービス事業の伸びも期待できることなどを勘案すれば、「ROA」及び「経常利益」も十分に達成可能と判断している。したがって、さらなる業績の上乗せはもちろん、今後の事業拡大に向けた取り組みに目を向けるべきであろう。特に、モビリティビジネスの強化にも見られるように、次の中期経営計画に向けて新たな戦略軸(収益の柱)を育てていくことが重要なテーマと言える。また「エネルギー・環境」分野など、社会的課題の解決に向けた取り組みをいかに特定し、同社自身の持続的な成長に結び付けていくのか、具体的な動きにも注目していきたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


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