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芙蓉リース Research Memo(4):コロナ禍の影響を一部受けたものの、「不動産」や新領域などが伸長(1)


■芙蓉総合リース<8424>の決算動向

各戦略分野における業績や活動実績は以下のとおりである。

(1) 不動産
2021年3月期末の「営業資産残高」は、前期末比24.8%増の5,552億円と順調に拡大し、中期経営計画の増額修正目標(5,300億円)をさらに1年前倒しで達成することができた。アライアンス先との連携をベースに、物流施設※や介護・居住など幅広い用途の物件を対象とした案件が順調に積み上がった。建物用途別内訳を見ても、商業、ホテル、介護・居住、レジャー・サービス、物流、その他などに分散されている。一方、コロナ禍による影響(リース料のリスケ要請等)については限定的であり、ROAについても2.3%(前期は2.2%)と高い水準を維持した。

※伊藤忠商事<8001>と共同開発による物流施設(九州旅客鉄道<9142>が取得・運用予定)など。


(2) 航空機
2021年3月期末の「営業資産残高」は、前期末比10.0%減の1,484億円とコロナ禍の影響により落ち込んだ。コロナ禍が航空業界に大きな影響を及ぼしているなかで、航空機リースの新規取り組みを抑制したことから自社保有機体数は44機(前期比3機増)にとどまり、その他(管理機体数等)も65機(前期比5機減)に減少した。また、一部エアラインの未収リース料に対して貸倒引当金を計上したことがコスト要因となり、ROAも0.2%(前期は2.1%)に大きく低下した。ただ、足元では新たなエアラインからのリスケ要請はなく、状況は沈静化傾向にあり、コロナ禍による機体の返却も発生していないようだ。

(3) 海外
2021年3月期末の「営業資産残高」(海外事業における関連会社への出資額を含む)は、前期末比1.8%減の974億円と、コロナ禍に伴う活動制限等の影響によりわずかに減少した。ただ、北米での事業が堅調に推移したことに加え、持分法投資利益の増加によりROAは1.6%(前期は0.9%)に大きく改善した。また2020年11月には台湾現地法人が営業を開始するとタイ拠点の再編にも着手し、アジア地区は5拠点(上海、香港、シンガポール、台湾、タイ)に拡大した。「エネルギー・環境」「不動産」「モビリティビジネス」など戦略分野での取り組みにより、オーガニックな成長を加速させる方針である。

(4) エネルギー・環境
2021年3月期末の「営業資産残高」(自社グループ再エネ発電事業)は、前期末比26.9%増の330億円と大きく拡大するとともに、エクイティ投資持分についても114億円(前期は23億円)に拡大した。発電容量も合計283MW(自社グループ事業とエクイティ投資持分の合計)となり中期経営計画の目標値(200MW)を上回ったほか、ROAも6.0%(前期は4.8%)に大きく改善している。一方、「ポストFIT」に向けた取り組みとしては、引き続きアライアンス先との共同開発や太陽光セカンダリー案件の取得、海外展開(北米やアジア)※1による事業拡大を進めていく考えである。またアグリビジネスとして取り組んでいる大規模植物工場についても、2020年7月に計画どおり稼働を開始しており、2021年夏のフル稼働を見込んでいる。社会課題の解決に向けた取り組みについては、PPAサービス※2や先端再エネ関連技術の開発※3などで大きな進展があった。

※1 海外における取組実績としては、米国(テキサス州)での大規模太陽光発電事業にENEOS(株)と共同で参画したほか、米国にて日本政策銀行等が設立した再エネファンドへの出資を行った。また、台湾においても太陽光発電ファンドへ出資している。
※2 同社初のグリーン電力購入契約(PPAサービス)を盛岡セイコー工業(株)(セイコーホールディングス<8050>のグループ会社)と締結(2020年12月サービス提供開始)した。PPAサービスに対する社会的ニーズの高まりを受け、案件ストック数も増加しているようだ。
※3 世界初となる「オンサイトアンモニア生産システム」の開発・商業化を進めている、つばめBHB(株)(ベンチャー企業)との資本業務協定を締結した。アンモニアは水素の運搬・貯蔵を容易にする「エネルギーキャリア」として、またエネルギーとして使用するときにCO2を排出しない「CO2フリー燃料」として注目されている。


(5) 医療・福祉
2021年3月期末の「営業資産残高」(他事業分野との重複を含む)は、前期末比17.5%増の1,154億円(そのうち、アクリーティブによる診療報酬債権ファクタリングは203億円)と順調に拡大した。戦略分野との連携による顧客ニーズの捕捉が営業資産残高の伸びに寄与したほか、行政の緊急融資制度等による資金繰り支援を背景として、診療報酬債権ファクタリングの残高も緩やかに増加傾向が続いている。

(6) BPOサービス事業(新領域)
BPOサービス事業が担う中核子会社の経常利益は、インボイスが44億円、アクリーティブが14億円、NOCが5億円と堅調に推移した。コロナ禍に伴って加速されてきた「働き方改革」の推進や「テレワーク」の拡大により顧客からの相談件数が増加傾向にあり、グループ連携やアライアンス先の増加に伴ってインボイスによる成約社数は前期比40%超に拡大している※1。また、顧客ニーズの多様化を踏まえ、グループ外企業との提携による新サービスの提供もスタートしている※2。

※1 2020年12月には東北電力<9506>とインボイスがBPOサービスにおける業務提携契約を締結した。インボイスが提供するBPOサービスを通じて、東北電力の法人顧客向けに人手不足への対応や働き方改革の推進など、経営課題への対応を提案していく方針である。
※2 NTT東日本とNOCとの協働によるAI-OCRサービス「NOC-OCR」(人工知能技術を取り入れた光学文字認識機能)や、ラクス<3923>とインボイスとの提携による「OneVoice明細」(帳票発行の自動化システム)の提供などを開始した。


(7) モビリティビジネス(新領域)
これまでのコア分野として展開してきたオートリース事業を成長性の見込めるモビリティビジネスに再定義。その一環として、2020年4月からはヤマトホールディングスの子会社であるヤマトリースの連結化を開始した。それに伴って、2021年3月期末の「営業資産残高」は前期末比84.2%増の1,798億円に大きく拡大している。市場の大きな自動車カーシェア、運輸、倉庫などをターゲットとし、幅広いソリューション提供により車両・物流業界の課題解決をサポートしていく戦略である。特に、EC市場の急拡大やそれに伴う物流関連施設の増加、働き方改革を背景としたドライバー確保やDXへの対応など、物流業界を取り巻く環境は大きく変化しており、幅広いニーズが期待できる。ヤマトリースは、中古トラックの取扱いや提案型営業、物流業界に特化した約3,000社の顧客基盤などに強みを有しており、同社にとっては新たなマーケットの獲得(裾野の広い中小運送事業者へのアクセス)やBPOサービスなどとのクロスセルによるシナジー創出に大きなメリットが期待できる。なお、ヤマトリースはリース会社初となる自動車運送事業者を対象とする「働きやすい職場認証制度※」の推進機関に認定された。トラック運送事業者に対し、認証取得のサポートを含めた経営支援サービスを提供していく方針であり、コンサル型ビジネスの展開を通して、顧客ニーズの把握とソリューション提案にもつなげていく考えだ。

※運転者の労働条件や労働環境を改善するとともに必要となる運転者を確保・育成するために長時間労働の是正等の働き方改革に取り組む事業者を認証する制度。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


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