1stコーポ Research Memo(6):1都3県の市場開拓余地はまだまだ大きい
ファーストコーポレーション<1430>が事業エリアとしている1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の分譲マンション建設市場は、杭施工問題発覚後の供給抑制の影響もあって、2016年の供給戸数は前年より減少し、デベロッパーにとって苦しい状況となった。しかしながら、着工件数は6年連続で6万戸以上をキープし、ゼネコンにとっては好調な市況が維持されている。
当面の事業環境について展望すると、大手ゼネコンは、大型都市再開発事業や2020年の東京オリンピック関連工事などで手持ち工事が豊富となっており、マンション建設請負に消極的な状況だ。一般的に建設業界においては、全体的に工事量が減少すると、大手といえども中小規模の案件に手を伸ばすほか、採算を度外視するような形で受注を獲得する業者も出現するなど収益環境は一気に悪化する。そうした意味で、工事量が多い現在は、そうした厳しい状況を心配する必要がない。
同社にとっては、マンション事業における競争が大幅緩和されているほか、2017年5月期時点での施工実績814戸は市場シェア2.28%に過ぎず、市場シェアの拡大余地が大きい。少なくとも開発ラッシュが見込める2020年までは、高い成長が期待できる状況だ。
今後のポイントになるのは、より収益力を高めるための大型案件の受注となるだろう。そのため、同社は今後、超高層マンションに力を注ぐ考えだ。同社が事業エリアとする1都3県では、まだまだマンション建設の開拓余地があるとみられ、超高層マンションを意識する形で、用地取得も駅前の好立地を狙っていく。
他方、リスク要因もある。一時期、建設業界を苦しめた資材費の高騰は、このところ落ち着きをみせているものの、開発ラッシュや復興需要からくる慢性的な人手不足は一向に解消する気配がなく、状況によっては、営業費用の増加につながる要因として、人件費の高騰が収益を圧迫する可能性もある。
同社は、その解消策として、ゼネコン、デベロッパーなどとのM&Aを念頭に置く。人材育成には時間を要するため、現状では規模に応じた受注を心掛けているものの、必要に応じM&Aによる陣容増強に踏み切る。M&Aについてはコストパフォーマンスに留意し、慎重に行っていくとしている。
M&Aについては、先行き事業エリアを拡大する際のツールとすることが考えられる。基本的に、市場開拓余地がある1都3県で事業を進めていくが、1都3県以外の地域についても、魅力のある案件がある場合は検討を行っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
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