
兵庫県の斎藤元彦知事のパワーハラスメント疑惑などを調査した県の公益通報担当部署が是正措置として斎藤氏らに求めたハラスメント防止研修が、措置公表後4カ月経っても実施されていない。県は公務の都合と説明し、斎藤氏は「日程が決まり次第受ける」と強調している。
ハラスメント防止の研修を巡っては、県人事委員会も2024年10月に受講を提案。他に公益通報者保護法や個人情報保護法についても学ぶことも促したが、こちらも実現していない。
是正措置は、元県西播磨県民局長(24年7月に死亡)が24年4月にパワハラなどの疑惑を県の公益通報窓口に通報したことを受け、同年12月11日に担当の県政改革課が公表した。県公益通報委員会の弁護士らが事実関係を調査。「パワハラがあったとの確証までは得られなかった」としつつ、斎藤氏に強く叱責されたと感じる職員がいたと指摘。知事らにパワハラ防止を含む研修受講を求めた。
斎藤氏は12月の定例記者会見で「ハラスメントのない組織づくりは大事」と強調。自身も含めた次長級以上の幹部職員へのハラスメント防止研修の実施や、昇任時の研修を必須とする対応策を発表した。研修の実施時期については年度内で調整中としつつ、予算編成や県議会の審議を理由に4月以降になる可能性も示唆。ただ、その後の会見でも「研修をしっかり受ける」と何度も語っていた。
3月19日には斎藤氏らの疑惑を調査するため、県が設置した第三者委員会が報告書を公表。斎藤氏による職員への10件のパワーハラスメントを認定し、内部告発者を探索したことなどが公益通報者保護法違反にあたると判断した。斎藤氏はパワハラを初めて認めて謝罪し、「反省すべきは反省する」「真摯(しんし)に受け止めたい」と述べていた。
パワハラ研修について、県人事課は「年度末にかかる時期だったことと、知事の公務や講師の日程調整の関係でできなかった」と釈明。「できるだけ早く実施しようと調整している」とした。
県人事委員会が提案する公益通報に関する研修について、担当する県政改革課に取材すると「幹部研修の中で公益通報者保護法を項目にする準備をしている」と説明。知事が受講するかは決まっておらず、今国会で罰則を付ける改正案が議論されていることもあり、改正後の実施も含めて検討しているという。個人情報保護法の研修については、県法務文書課は「時期や内容も含めて調整中」としている。【栗田亨】