ローメンテナンスな庭を作るならおすすめなのが、こぼれ種で毎年花を咲かせてくれる植物たち。
一年草を毎シーズン買うことなく花を楽しめて、ローコストな庭づくりにもなります。また、毎年どこからか芽吹いてくれる姿はとっても愛おしくてたまりません。
今回はそんなローメンテ・ローコストなこぼれ種で咲く植物たちをまとめてみました。初心者でも育てやすく、かつ庭をおしゃれにしてくれる種類たちです。
こぼれ種とは?
こぼれ種とは、人間の手を加えずに種子を自然に落とし、自然と発芽する現象のこと。
園芸種の多くは、種から育てるのに人間の手で環境を整えてあげる必要があります。しかしこぼれ種で増える植物は、弾けるなどして種子を落とし、自然に落ちただけでも発芽しやすい特性を持っています。生育環境が合えば、毎年のように庭のあちこちから芽を出してくれます。
こぼれ種で増えるメリット
こぼれ種の植物を植えるメリットは、やはり ローメンテナンス なところ。
特にこぼれ種で増える一年草は手入れの必要がほとんどありません。多年草は刈り込みなどの作業はありますが、どんどん増えて庭を埋めてくれるのでグランドカバーにも使えます。
またこぼれ種で増える植物は、花が終わってから種が弾けるまでの姿もとてもかわいいものが多いです。運が良ければ弾ける瞬間も見れるかも。種子がパンパンにつまって膨らんだ果実も魅力的です。
こぼれ種で増えるデメリット
デメリットは、 増えすぎた場合の管理が難しい ところです。
開花時期以外は姿が見えなくなる一年草はまだしも、こぼれ種で増える多年草は少し管理が大変かもしれません。環境があえばあらゆるところから発芽するので、増やしたくない場合、芽を見つけては摘んで…の繰り返しです。また、敷地外に出て行かないよう配慮する必要もあります。
そしてこぼれ種で増える植物でも、環境によって全然増えないこともあります。試行錯誤で挑戦してみてくださいね。
こぼれ種で増える植物の魅力
こぼれ種で増える植物は、原産地では道端で自然に咲いているお花たち。そのナチュラルな雰囲気が、ガーデナーを虜にするのかもしれません。またこぼれ種で大きくなった株は環境が合ったからこそ芽吹いたためか、買ってきて植えたポットよりも元気に育ってくれたりします。
今回は、こぼれ種で増える植物の中でも、 ナチュラルガーデンに合うような可憐でかわいらしい植物をピックアップ してみました。どれも生育旺盛で難しい作業も必要なく、手軽に始められるのでおすすめです。ほったらかしなのに種から育っていく様子を見られて、ガーデニング初心者でも庭づくりが楽しくなるきっかけにもなるかも。ぜひ参考にしてみてください。
ジャーマンカモミール
ハーブの定番
ハーブでよく知られるカモミールですが、一年草のジャーマンカモミールと多年草のローマンカモミールがあります。こぼれ種でよく増えるのは一年草のジャーマンカモミールのほう。耐寒性も強く非常に丈夫で、日本では北海道~本州で自然に生えています。3~6月頃、白い花びらと黄色い中心部がかわいい、りんごのような香りのする花を咲かせます。
特徴と育て方
ほとんどメンテナンスフリーで育てられます。
花は中心の黄色い部分がふくらんできた頃に収穫して、ハーブティーなどにして楽しめます。もっとしっかり収穫したい時には、種ができる前にこまめに花を収穫することで花数が増え、開花時期も長くできます。また開花前の3月頃にリン酸を多く含む液肥を与えると花つきがよくなります。
ダウカス
アンティークレースのような花姿がかわいい
小さな花が集まって咲くダウカスは、セリ科の花です。ブラックレースフラワーとも呼ばれ、花束などでも人気です。ワインレッドの絶妙な色合いがシックで雰囲気があります。
春になるとぐんぐん花茎を伸ばし、80~100cmほどの高さで花を咲かせます。繊細なレースのようなお花と葉がゆらゆらと揺れる姿が美しく、バラなどとも相性が抜群です。
特徴と育て方
繊細な感じのする花ですが、意外と強いダウカス。寒さに強く丈夫で、イギリスなどでは道端などにも咲いています。こぼれ種で増え、花後に枯れてしまってもまた翌春に花を楽しめます。日本の高温多湿は苦手で、じめじめとした庭ではなかなか広がりませんが、日当たりのいいカラッとした場所ではよく増えます。
また、同じセリ科の レースフラワーやオルラヤ もこぼれ種でとてもよく増えます。
セリンセマヨール
見れば見るほど不思議な魅力の花
紫紺色の花がうつむき加減に咲く、とても不思議な魅力のある植物です。
花は基部が黄色で、花びらの先にかけて黄色~紫~紺色となるグラデーション。咲き進むにつれて深い色に変化します。葉色もおもしろく、灰色がかった絶妙な緑色に白い模様が入ります。さらに花に近い部分は青緑色に変化し、株全体が不思議なグラデーションになっていて独特の配色です。
特徴と育て方
春から秋までと開花時期も長く、丈夫で手がかかりません。ただ寒さに弱いため、雪の降る地域では藁を敷くなどの防寒対策をするか、花後の種を採取して春にまくのがおすすめです。暖地ではほったらかしでOK。
花が咲いて下葉が黄色くなってきたら肥料をほしがっている証拠です。即効性のある液肥をあげると、たくさん花を咲かせてくれます。
同じムラサキ科の ワスレナグサ も、こぼれ種でよく増えます。
ニゲラ
美しく幻想的な花姿
細かく美しい葉っぱと、独特な花姿が幻想的な装いのニゲラ。切り花でも人気の花です。花後の果実もユニークな形で、ドライフラワーにもされます。美しく可憐で、どこかミステリアスな魅力があります。
またニゲラには、ブラッククミンと呼ばれて種をスパイスにして利用される種類もあります。園芸種で栽培されるニゲラとは種類が違ってスパイスにはできませんが、種からは少し甘い香りがしますよ。
特徴と育て方
開花時期が長く、春から初夏まで楽しめます。日本の高温多湿に弱く、夏には枯れてしまいますが。こぼれ種は秋に発芽し、越冬してまた春に花を咲かせます。確実に咲かせたい場合は採取した種を秋にまきます。
芽が出てからは特に手入れが不要で、肥料もあまり必要ありません。
同じキンポウゲ科の オダマキやクリスマスローズ もこぼれ種で増えます。
カレンデュラ
冬の庭を明るくしてくれる花
カレンデュラとは和名ではキンセンカと呼ばれるキク科の花。ポットマリーゴールドとも呼ばれ、黄色い明るい花が咲きます。園芸品種ではオフィシナリス種という種類が多く、黄色をはじめオレンジや茶色などさまざまな花色が売られています。
日本でお馴染みなのは、ホンキンセンカと言われる種のフユシラズという品種。雪の中でも黄色い花を咲き続けてくれて、冬の庭に重宝します。
特徴と育て方
園芸種のカレンデュラの中にはこぼれ種で増えにくいものもありますが、フユシラズは日本の高温多湿にも耐えてよく増えます。他にもこっくりカラーがかわいいコーヒークリームもこぼれ種でよく増える品種です。
花は終わった後に切り取っていく方が花数は増えますが、こぼれ種にしたいならほったらかしでOK。種はイモムシのような形をしていて、その姿もおもしろいです。
宿根ビオラ ラブラドリカ
シックなカラーリーフとしても
ラブラドリカは黒葉スミレとも呼ばれ、深い黒紫色の葉っぱが魅力。もともとビオラやスミレ類はこぼれ種でよく増えますが、ラブラドリカはカラーリーフのグランドカバーとしても使えておすすめです。
また開花時期もとても長く、秋頃から5月頃まで次々咲きます。花は大きくありませんが、可憐な印象がナチュラルガーデンにぴったり。
特徴と育て方
通常ビオラは花をたくさん楽しむために花後に花がらを摘みますが、種を作りたい場合には摘まずに置いておきます。花も楽しみたい場合は冬~春の間は花がらを摘み、5月頃から花を摘まずにおいておくと良いでしょう。
非常に強健なので、ほったらかしで大丈夫です。暑さにやや弱い性質があり、暖地では夏に汚くなることも。汚くなったら株ごと抜いてしまってもこぼれ種がすでに落ちているので、消えてしまうことはあまりありません。
こぼれ種をうまく取り入れて、ローメンテな庭に!
こぼれ種で増える植物は、自生地から見ればいわば雑草のような存在。たとえば日本でもお馴染みのネコジャラシなども、あのふわふわの穂から種を落として繁殖しています。
雑草というと厄介なイメージですが、それがかわいい花を咲かせるとなると愛おしくなるもの。そして雑草ならではのナチュラルで少し野生味のある生え方が、庭をちょっと垢抜けさせてくれます。
ただ、やはりこぼれ種はそれこそ雑草のように倍々に増えていきますから、 植えすぎには要注意 。苗を購入するときは1~2ポットから始めて、 広がる様子を確認しながら徐々に増やしてみましょう 。
しまうま
余暇プランナー
田舎暮らしの30代フリーライター。イングリッシュガーデンやオージーガーデンが好きな2児の母です。花屋と園芸店で勤務経験があり、今はガーデンデザインの勉強中。最近ついにマイガーデンに着手し、ゆる〜くかつ素敵なお庭を作るべく、日々試行錯誤しています。かっこよくて魅力的なネイティブプランツや、のびのび育つのに繊細なフォルムのハーブや花々が好き。リアルな庭作りの情報をお届けしたいと思います。