都市と地域を「オイシイ」で結ぶ「ニッポンはオイシイプロジェクト」が始まりました。第一弾は、静岡県のお茶と徳島県のにんじんをご紹介。プロジェクトを主宰する農協観光、常務取締役、香川晋二さんに、お話をうかがいました。
全国各地の「オイシイ」を紹介することで、それらがつくられた土地や人を知ってもらい、地域に関心をもってもらうことでファンをつくりたい。そんな思いでスタートした「ニッポンはおいしいプロジェクト」。第一弾は、静岡県のお茶と徳島県のにんじんをご紹介。このプロジェクトの生みの親である農協観光は、観光事業を軸に地域を耕しながら、関係人口づくりに取り組んでいます。
ソトコト(以下S) 日本各地のおいしさを伝える「ニッポンはオイシイプロジェクト」が始まりました。誕生の背景を教えてください。
香川晋二さん(以下香川) JAグループが推進している「国消国産」という取り組みがあります。これは「国内で消費する食べ物をできるだけ国内で生産していきましょう」というもので、2020年から提唱しています。
S ちなみに、日本の食料自給率は現在どのくらいでしょう。
香川 2024年度はカロリーベースで38%です。
これは消費された食料のうち国内で生産されたものが1/3に満たないことを意味しています。ちなみにアメリカ132%、フランス125%、日本は欧米諸国に較べて最低の水準です。お米だけは100%を超えていますが。
S 低い水準が続いています。
香川 「国消国産」の推進は、食料自給率の向上や農業生産力の強化を目的にするとともに、食や農業の力で地域を元気にしていく。そうしたことにもつながる取り組みとして、国産の米や野菜、果物、肉、牛乳、お茶などの消費を推進しています。
S そうした中、農協観光はどのような取り組みをしていますか。
香川 農協観光は旅行代理店として、これまで数多くの団体旅行を企画・提供してきました。コロナ前からはグリーン・ツーリズムや農泊が盛んになり、地域側の受け入れ体制のお手伝いをしてきました。団体旅行が縮小気味になっている現在は、地域共創事業としてグリーン・ツーリズムや農泊での経験などを活かして地域振興を行っています。
農協観光だから実現可能な体験メニューをさらに強化
S そこで目指す姿とはどういうものでしょう?
香川 これまで観光事業などで培ってきたノウハウやネットワークを活かして、地域に対して大きな流動をつくっていきたいと考えています。つまりは関係人口づくりです。これまではどちらかというと地域側に軸足を置いて受け入れ体制を整えながら人材育成をするなど、地域を応援することをしてきました。これからは地域に流入する人たちをキャッチして、都市部で送り出す側の仕掛けをつくるとともに、受け口となる地域側の整備も整えていくことを地域共創事業として位置づけています。
S 農協観光では「関係人口」をどのように定義されていますか。
香川 「旅行人口以上、定住人口未満」としています。例えば、地域に関心をもってその場所を訪れたり、地域の産物を買っていただいたりと、旅行者の延長で地域と関わる人たちをどんどん増やしていけたらと考えています。
S そうしてつながりができることで、畑の手伝いをしたいと思う人もでてきそうです。すでにそうした体験の企画もあるのでしょうか。
香川 体験メニューはすでにたくさんのものがあります。たとえば今回「ニッポンはおいしいプロジェクト」で静岡のお茶を紹介していますが、体験型のゲストハウスに泊まって、お茶摘みなどを体験していただくメニューもあります。基本的には農家や農泊を営んでいる事業者に受け入れをお願いしています。
S それぞれの農家と強い関係性をもっている農協観光だからこそできる企画がたくさんあるのでしょう。そうして地域の中に入って農業の現場を見たり体験したりすることで、お互いの関係性も深まりそうです。
香川 そうして地域や食、あるいは農業に関心をもってもらうことで、単なる旅行者だった人たちが地域に入り込み、2拠点居住や移住、定住などにつながっていくのではないかと考えています。そして、我々もJAグループの一員ですので、さらなる先には地域に入って新規就農する人が出てきてくれればいい。そのために今は体験メニューのブラッシュアップをしているところです。
S どのように変わるのでしょう。
香川 受け入れ先の農家、事業者を増やしながら、さまざまな体験ができるようにしています。そして、全国どこでも、年間をとおして提供できるようにできればと考えています。また体験にとどまらず、援農ボランティアの取組も進めています。産地と援農を希望する法人・学生等を繋ぐ、援農マッチングの取組で、人手不足の農作業を支援していただいています。
「オイシイ」が入口となって産品や土地と関係していく
S 「ニッポンはオイシイプロジェクト」はそうした取り組みの一環として生まれたのですね。
香川 首都圏で暮らす方々に地域の産物を紹介することで興味をもっていただき、その産物や土地のファンになっていただきたい。そして農業の応援団のような存在になっていただき、継続的に国内の畜産物や加工品をご購入いただくことにつながっていけばと考えています。
S 農業の応援団っていい言葉ですね。
香川 応援団となることが、関係人口づくりにもつながっていきますし、地域のものを食べることで、「国消国産」にもつながっていきます。
S 第一弾では静岡と徳島にスポットを当てています。
香川 JA静岡経済連から静岡県産のお茶、JA全農とくしまからにんじんというふたつの産品を紹介しています。静岡のお茶は全国でおよそ5割のシェアを誇り、霧深い山々と澄んだ水が育んだ、香り高く味わい深い産品です。お茶は健康にいいですし、やっぱり飲むと落ち着いて、幸せな気分になりますよね。
S 徳島からは、にんじんです。
香川 徳島の特に「春にんじん」は出荷量が全国ナンバーワンです。徳島で全国的に有名なのは、「なると金時」というさつまいも、あとはれんこんやたまねぎも有名です。気候が温暖で土壌が肥沃なのでおいしい根菜類が育ちやすいのです。
両者とも、生産者の方々が日々の努力と技術を駆使して高品質の農産物を育てておられます。こだわりや思いを込めた様子を知っていただくことで、少しでも興味や関心をもってもらえればうれしいですね。

S 香川さんご自身は、つながりが強い地域はあるのでしょうか。
香川 私自身は鳥取県の三朝町が地元なのですが、東京に勤務する前は岡山勤務で中国・四国地方を担当し、各地域を元気にするためのご支援をしておりました。そうやって一度つながりができると、いつまでも応援したいという気持ちになりますよね。
S たしかに。いろいろな人たちの顔が浮かんできます。
香川 余談になりますが、そこにはお酒も必ずセットになっています。それぞれの地域にあるおいしい日本酒の力は計り知れないものがありますね(笑)
S 最後に今後の展望について教えてください。
香川 今後も「ニッポンはオイシイプロジェクト」として定期的に特集を組んで、全国各地の産地や農産物の魅力をご紹介していく予定です。そして興味をもっていただいたかたが産品を手にできるよう、東京メトロのECサイト『アーバンライフメトロ・プレミアムストア』や、弊社が運営するECサイト『JAタウン内「サトクル」』を通じた産品の販売を行っていきます。
東京メトロで目にした「オイシイ」をきっかけに、産品や産地に関心をもってほしい。購入や訪問する人が増え、結果として、地域の活性化に繋がっていくことを願っています。
地域の魅力を感じる、農協観光の体験プログラム

もぎたての農産物のおいしさを味わう収穫体験
お米や野菜など、それぞれの地域で大切に育てられた旬の農産物を育てたり収穫します。体を動かして働いたあとは、地域の食材をつかった手づくり料理を味わいながら、地域の人たちと交流します。

親子での農業体験をつうじて生きる源である「食」を学ぶ
食材は買って消費するだけではなく、感謝していただくもの。産地を訪問し、生産者の話に耳を傾け、農業を体験したり、料理をつくったり。人間の生きる源である「食」について、親子で学べます。

訪日外国人向けプログラムも充実
旬の農産物収穫や地元農家との交流をとおして農村滞在を楽しむ「農泊体験」から、着物、茶道、書道、座禅、寿司など日本の伝統文化に触れられる体験が多数あります。

懐かしさを感じる農山漁村で、日本の魅力を再発見する
地域の人と交流する「農泊体験」では、農家に泊まって地元の人々と交流しながら、暮らしや料理を体験。普通のツアーではできない貴重な経験ができます。

援農ボランティア「JA援農支援隊」
援農では地域貢献の達成感とやりがいを感じられるだけでなく、本物の農業を体験することができます。

JAのおいしさがつまった「サトクル」
産地直送通販サイト「JAタウン」内にある、農協観光が運営するショップ「サトクル」は、全国の生産者などと契約して質の高い食品を厳選して販売。季節に合わせた特集や、テーマや地域ごとの切り口でセレクトされています。
https://www.ja-town.com/shop/c/cG1