File no. 107
《SIERRA DESIGNS/シエラデザインズ》
ファッション以外のどの業界でも同じだけれど、何かのモノやコトが好きになるとそれが存在する理由や背景、歴史が気になりはじめる。
そして最終的にはその終着点にある"元祖"の存在へと辿り着く。
モノやコトの元祖、つまりそれを誕生させたオリジネイターはすごい。
今回は、今では街中からアウトドアまで当たり前に着用されている「マウンテンパーカ」のオリジネイターといわれる《シエラデザインズ》に注目。その歴史や背景に迫ってみる。
1960年代初頭、ヒッピームーブメントに憧れ、バックパッカーだったジョージ・マークスとボブ・スワンソンの二人が落ち着いた先が、たまたまカリフォルニア州バークレーにある『スキーハット』というアウトドアショップだった。
ボブがジョージの担当していた製造部門に新しく入ってくるや、二人はすぐに意気投合。
ショップのオリジナル製品の開発や修理をこなすうちに、自分たちも気付いていなかったクリエイティブな才能と旺盛な探究心から、新しいアイデアが次々とひらめいた。
ところが、いくら革新的な提案をしても、ショップのオーナーが認めてくれない…。
自分たちの夢と可能性を追求するために、彼らは『スキーハット』から独立することを決意。
そして1965年、バークレーの隣町であるリッチモンドに、わずかな資金でロフト付きの倉庫を手に入れると自分たちの工房に改装。
こうして、バックパッキング用品を製造する《シエラデザインズ》が誕生した。
ちなみにブランドの名称は、広大にそびえ立つシエラネバダ山脈に由来する。
ついには、創立から3年後の1968年にオリジナルの60/40クロスを使用した「マウンテンパーカ」を発売。
その製品こそ、今では当たり前となった「マウンテンパーカ」というデザインの元祖であり、今日まで発売され続けるロングセラーモデルの誕生だった。
この60/40クロスとは、横糸に高強度のコットンを60%、縦糸に高密度ナイロンを40%用いた生地のこと。
雨に濡れればコットンが膨張し、ナイロンを圧縮して雨を防ぎ、乾けばコットンのナチュラルな通気性が衣類内を快適な環境に整えるといった効果がある。
まさに、今の時代の透湿撥水素材を先取りする高機能素材だった。
その後も多くの製品を発表し続け、米国内で四度の移転&拡充を経て、現在はコロラド州のブルームフィールドに本拠を構える。
発売から50年以上が経過した元祖「マウンテンパーカ」は、現在もMADE IN USAのまま発売され続けている。