先日、生理用ナプキンに関しての不満をまとめた話題がTwitterで盛り上がっていました。私自身は男性なのでユーザーではありませんが、実は「ウィスパー」の開発をしていた時期もあるため生理用ナプキンについては詳しいのです。
1986年に販売を開始したウィスパーは、ドライメッシュ、羽根(プラス)、超薄型(当時はエクセル)と生理用ナプキンにイノベーションを連発し、一時はトップシェアだったことも。その後シェアを落とし、残念ながら2018年3月末に販売終了したのは記憶に新しいところです。
■ナプキンの「乙女なデザイン」に不満の声
twitterの話題に戻りますと、ここでは「乙女なデザインをどうにかしてほしい」など、デザインを中心とした要望が寄せられています。その後の反応を見てみると、以下の考察ができます。
- この意見に賛同する人の一方で乙女派もいる。つまりデザインに関しては概してセグメントによって意見が分かれ、ポラライゼーション(分極化)が起こりがち。
- 生理用ナプキンは「もれない(それを使うそもそもの理由)」「つけ心地がいい」「使いやすい」などが根本的なニーズ。多くのユーザーにとって、それらがある程度満足できる状態になったが故に、よりエモーショナルな「見た目」というニーズが顕在化した。
- 過去、ニッチなデザインニーズに応えた製品化事例もあり、2009年に松嶋尚美(オセロ)がプロデュースした濃い色の下着に合わせる「ウィスパー black」はその好事例。特定のファンはいたと思われるが継続には至らなかった。
生理用ナプキンの場合、月経そのものの個人差に加えて生理が始まってからの日数や、昼・夜などに起因する長さ・薄さ・羽根の有無などブランドあたりのバリエーションが多いのです。例えば、表面材でもバリエーションを持つロリエの場合、パンティーライナーを除いても、合計で34アイテム。これらを効果的に認知してもらいながら、限られたスペースの店頭でデザインのバリエーションを維持していく難しさは、越えなくてはならない大きなハードルです。
■赤ちゃん用のオムツにも同様の課題が…
同様のデザインニーズに着目した試みはオムツでもありました。“男の子用”、“女の子用”です。一時期はパンパース、ムーニーなどが各サイズで男女別のラインナップを持っていましたが、現在はトレーニングパンツ以外はユニセックスが一般的です。購入者側のニーズは明らかに存在しますが、男女別にすると、ただでさえかさばるオムツの売場スペースが倍になってしまいます。
こうした、特に販売にあたって課題がある大量生産の製品に関して、ニッチなデザインニーズにうまく対応している例があります。
■LOHACO(ロハコ)限定商品
ほとんどの日用品はブランド名や訴求ポイントを前面に押し出したパッケージです。店頭で選んでもらうためには必要な要素ですが、同時にそうした商品を好まないセグメントは必ず存在します。アスクルが運営するLOHACOは、個人向け通販という利点を生かしてメーカー限定商品として販売しています。まだカテゴリーは限られていますが、リセッシュやビオレ、ラックス、スコッティなどでブランド主張を抑えた限定デザインがあります。
■無印良品
元々は西友のプライベートブランドとしてスタートし、今や「MUJI」というブランド名でグローバル展開にも成功しています。そのデザインの一貫性は稀有で徹底しており、ブランド理念は「これがいい」ではなく「これでいい」。ブランド自体が「主張しすぎない」ことで、結果、見事に差別化を図ったと言えましょう。前述のTweetでも、無印良品でシンプルなナプキンを出してほしいという意見も見られたのは、多くの人にそれが浸透した結果とも言えます。その声は、彼らのIDEA PARKにも寄せられています。越えるべきハードルはありますが、やるのであれば、似通ったテイストを好む人たちがブランドのファンである無印ではないかと思います。
「ニッチ」は“小さい”、“隙間というイメージですが、同時にロイヤリティが高い、付加価値を認める顧客を獲得する有効な方法でもあります。どちらかというと開発者の視点でお話をしましたが、顧客側が様々な意見を発信することは、開発者としては次の商品へのアイデアにつなげていけるため大変ありがたいことです。当然、全ての人たちの要望を叶えることは容易ではありませんけれど。