生焼けの鶏肉を食べたあとや、生の鶏肉を食べたあとに「食中毒になったらどうしよう」「この症状って食中毒かも?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では「鶏肉によるカンピロバクター食中毒」について、管理栄養士が解説します。
症状の特徴や、潜伏期間、食中毒になったときの対処法を知っておきましょう。
鶏肉によるカンピロバクター食中毒とは
鶏肉によって起こる食中毒は、主にカンピロバクター菌が原因です。
カンピロバクターはニワトリなどが保菌している菌で、体内に入ると腸管内で増殖し、下痢・発熱などの症状を引き起こします。
カンピロバクターは十分な加熱により死滅しますが、鶏肉が生焼けだったり、生で食べたりした場合は食中毒のリスクとなります。
カンピロバクターは近年、食中毒の発生数がワースト1であり、もっとも身近な食中毒です。
症状や潜伏期間など、さらに詳しく解説します。
どんな症状が出る?
カンピロバクター食中毒による主な症状は下痢・腹痛・発熱です。
吐き気やおう吐もありますが、ノロウイルスのように強くはないことが知られています。
ほかにも、頭痛、悪寒、倦怠感などの症状が出る場合もあります。
潜伏期間は何時間後?
カンピロバクターに感染したあと、症状は1~10日(多くは2~5日)の間にあらわれます。
ほかの食中毒菌は食べた直後や数時間後に症状が出るものもありますが、カンピロバクターによる食中毒は、数日経ってから症状があらわれるのが特徴です。
食べてから日数が経過して発症するため、原因となる食べ物がはっきりとわからないこともあります。
症状が出たらどのくらいで治る?
多くの方は、症状が出てから1週間ほどで治癒します。
人によって症状の強さはそれぞれで、軽い症状で済む方もいれば、重い症状に悩む方もいます。
乳幼児・高齢者・妊婦などの抵抗力の低い方は、症状が重くなる可能性もあり、注意が必要です。
病院に行くべき?
食中毒を疑う、下痢やおう吐、発熱などの症状がある場合は、医療機関の受診が必要とされています。
軽い症状だと思っても悪化することもあるため、早めの受診が必要です。
自己判断で下痢止めなどの薬を使ってしまうと、細菌が排出されるのを妨げてしまうため、医薬品の使用についても医師に相談するようにしましょう。
下痢やおう吐が続くと脱水症状が心配であるため、こまめな水分補給を心がけてください。
新鮮な鶏肉では食中毒が起きない?
「新鮮な鶏肉だと食中毒の心配がない」といわれることがありますが、これは誤りです。
カンピロバクターはニワトリが保有する菌であるため、鶏肉の鮮度は関係ありません。
「新鮮だから生で食べられる」わけではないため、生で食べるのは避けましょう。
鶏肉による食中毒が起こる料理や状況
鶏肉によって食中毒が起きるのは、どのような料理や状況のときなのでしょうか。
タタキや刺身を食べた
タタキや刺身として生の鶏肉を食べた場合は要注意です。
市販の鶏肉から20~100%と高い確率でカンピロバクターが見つかっており、生で食べるのはリスクが高いといえます。
飲食店で生の鶏肉が提供される場合がありますが、避けるようにしましょう。
生焼けだった
鶏肉が生焼けだった場合、カンピロバクターが死滅せずに生き残るため、食中毒のリスクとなります。
特に、加熱が不十分になりやすい調理法は下記があります。
・電子レンジ調理…加熱ムラが起きやすい
・余熱調理(鶏ハムなど)…十分に加熱されない
のちほど解説する調理のコツを参考に、しっかりと加熱するようにしましょう。
調理中にほかの食材についた
鶏肉を触った手を洗わなかったり、鶏肉を切ったまな板でほかの食材を切ったりすると、カンピロバクター菌を広げてしまうことがあります。
ほかの食材に付着したカンピロバクター菌を口にしてしまうと、食中毒のリスクとなります。
注意!感染して数週間後に起こる「ギラン・バレー症候群」とは?
カンピロバクター食中毒で怖いのが「ギラン・バレー症候群」という合併症です。
感染後1~2週間ごろから手足のしびれや力の入りにくさなどの神経症状がみられるようになり、手足のまひ、顔面の神経のまひ、呼吸困難などを起こし、まれにまひが残り後遺症の原因となることがあります。
ギラン・バレー症候群の症状がみられた場合は、通常は入院治療が必要とされ、リハビリが必要となる場合もあります。
食中毒になると「お腹を壊すだけではないかもしれない」ということを覚えておき、食中毒予防に努めましょう。
鶏肉による食中毒を起こさない対策
鶏肉による食中毒を起こさないために、下記に気をつけて対策しましょう。
加熱はしっかりと行う
カンピロバクター菌は、中心温度が75度以上で1分間以上の加熱により死滅します。
鶏肉が分厚いと中まで火が通りにくくなるため、開いて薄い状態にして焼くか、弱めの火でじっくりと焼くようにするとよいでしょう。
加熱ムラの起きやすい電子レンジで加熱する場合は、途中で上下を返してムラなく加熱できるよう気をつけます。
また鶏ハムを作る際に、しっとりさせるために余熱調理することがありますが、中心部までしっかりと火が通らないため、あまりおすすめできません。
鶏ハムを作る場合は余熱ではなく加熱をしてしっかり火を通すようにするか、安全に作れる低温調理機を使って調理するようにしましょう。
調理器具を分ける
生の鶏肉を扱う調理器具は「肉・魚専用」のものを使い、ほかの食材を扱う調理器具と分けるようにしましょう。
もし調理器具を分けられない場合は、使ったあとに洗剤を使ってきれいに洗い、熱湯消毒をする方法でもOKです。
または使い捨てのまな板シートを使ってみるのもよいでしょう。
鶏肉を洗うのも注意!
鶏肉を水で洗うのも注意が必要です。
水で流すと、カンピロバクター菌が水しぶきとともにあちこちに飛び散ってしまいます。
鶏肉についた汚れやドリップ(赤い液体)が気になる場合は、キッチンペーパーでやさしくふき取るようにしましょう。
「お店で提供されているから安心」でなはく、生の鶏肉は食べない
たとえ飲食店で提供されるものでも、鶏肉を生で食べるのは避けましょう。
カンピロバクター食中毒の多くは、飲食店での未加熱や加熱不十分な鶏肉が原因だということがわかっています。
最近では、鶏肉を生の状態で使ったチャーシューや、生の鶏肉を載せた寿司などが原因となり、数十名・数百名規模の集団食中毒が起きています。
「お店で提供されているから大丈夫だろう」ではなく、自己判断を行い、生の鶏肉を食べるのは避けましょう。
正しい知識で鶏肉の食中毒を予防しよう
今回の記事では「鶏肉によるカンピロバクター食中毒」について、管理栄養士が解説しました。
鶏肉によるカンピロバクター食中毒は、下痢、発熱、おう吐などの症状を引き起こし、まれに後遺症を引き起こすこともあります。
飲食店での鶏肉の生食や、家庭での調理によって起こりやすいため、正しい知識を持って食中毒を予防し、自身や家族の健康を守るようにしましょう。